本稿には、2021年に実施された統計検定1級『医薬生物学』 問2の自作解答案を掲載しています。なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。
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- この答案は、あくまでも筆者が自作したものであり、公式なものではありません。正式な答案については、公式問題集をご参照ください。
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〔1〕検定法の導出
〔1-1〕母平均の信頼区間(母分散が未知のとき)
母分散が未知のとき、$\mu$ の両側 $100 \left(1-\alpha\right)\%$ 信頼区間は、以下で与えられる。
\begin{align}
\bar{X}-\frac{s}{\sqrt n}t_{0.5\alpha} \left(n-1\right) \le \mu \le \bar{X}+\frac{s}{\sqrt n}t_{0.5\alpha} \left(n-1\right)
\end{align}
〔1-2〕検定の導出
(仮説1)
ネイマン・ピアソンの基本定理と単調尤度比の原理により、ある統計量を $T \left(\boldsymbol{X}\right)$ とすると、次の棄却域と検定関数 $\varphi \left(\theta;\boldsymbol{x}\right)$ をもつ検定が漸近的に有意水準を $\alpha$ とする一様最強力検定となる。
\begin{align}
\varphi \left(\theta;\boldsymbol{x}\right)= \left\{\begin{matrix}T \left(\boldsymbol{X}\right) \lt a&\mathrm{0:Hold\ }H_0\\a \le T \left(\boldsymbol{X}\right)&\mathrm{1:Reject\ }H_0\\\end{matrix}\right.
\end{align}
正規分布の標本平均は、帰無仮説のもとで、
$\bar{X} \sim N \left(-\Delta,\frac{\sigma^2}{n}\right)$
標本平均 $\bar{X}$ を標本不偏分散で標準化した値を
\begin{align}
t=\frac{\sqrt n \left(\bar{X}+\Delta\right)}{s}
\end{align}
とすると、
\begin{align}
t \sim \mathrm{t} \left(n-1\right)
\end{align}
自由度 $n$ の $\mathrm{t}$ 分布の上側 $100\alpha\%$ 点を $t_\alpha \left(n\right)$ とするとき、上側 $100\alpha\%$ 点の定義より、
\begin{align}
P \left\{t_\alpha \left(n-1\right) \le t\right\}=\alpha
\end{align}
したがって、検定統計量と棄却域は、以下のようになる。
\begin{align}
\varphi \left(\theta;\boldsymbol{x}\right)= \left\{\begin{matrix}\ \frac{\sqrt n \left(\bar{X}+\Delta\right)}{s} \lt t_\alpha \left(n-1\right)&\mathrm{0:Hold\ }H_0\\t_\alpha \left(n-1\right) \le \frac{\sqrt n \left(\bar{X}+\Delta\right)}{s}&\mathrm{1:Reject\ }H_0\\\end{matrix}\right.
\end{align}
(仮説2)
仮説1と同様に、次の棄却域と検定関数 $\varphi \left(\theta;\boldsymbol{x}\right)$ をもつ検定が漸近的に有意水準を $\alpha$ とする一様最強力検定となる。
\begin{align}
\varphi \left(\theta;\boldsymbol{x}\right)= \left\{\begin{matrix}b \lt T \left(\boldsymbol{X}\right)&\mathrm{0:Hold\ }H_0\\T \left(\boldsymbol{X}\right) \le b&\mathrm{1:Reject\ }H_0\\\end{matrix}\right.
\end{align}
正規分布の標本平均は、帰無仮説のもとで、
\begin{align}
\bar{X} \sim N \left(\Delta,\frac{\sigma^2}{n}\right)
\end{align}
標本平均 $\bar{X}$ を標本不偏分散で標準化した値を
\begin{align}
t=\frac{\sqrt n \left(\bar{X}-\Delta\right)}{s}
\end{align}
とすると、
\begin{align}
t \sim \mathrm{t} \left(n-1\right)
\end{align}
仮説1と同様に、
\begin{align}
P \left\{t \le -t_\alpha \left(n-1\right)\right\}=\alpha
\end{align}
したがって、検定統計量と棄却域は、以下のようになる。
\begin{align}
\varphi \left(\theta;\boldsymbol{x}\right)= \left\{\begin{matrix}\ -t_\alpha \left(n-1\right) \lt \frac{\sqrt n \left(\bar{X}-\Delta\right)}{s}&\mathrm{0:Hold\ }H_0\\\frac{\sqrt n \left(\bar{X}-\Delta\right)}{s} \le -t_\alpha \left(n-1\right)&\mathrm{1:Reject\ }H_0\\\end{matrix}\right.
\end{align}
〔1-3〕検定のサイズ
帰無仮説 $H_{01}$ を棄却するという事象を $R_{01}$、帰無仮説 $H_{02}$ を棄却するという事象を $R_{02}$ とすると、帰無仮説 $H_0$ を棄却する確率は、$R_{01}$ と $R_{02}$ の積集合(共通部分) $P \left(R_{01}\cap R_{02}\right)$ である。これは、以下のベン図に示すように、
$R_{01}$ と $R_{02}$ が互いに排反な事象であるときに $0$
$R_{01}$ と $R_{02}$ が一致する場合に $\alpha$
となる。
したがって、第1種の過誤確率(帰無仮説のもとで帰無仮説を棄却する事象が起こる確率)は最大で $\alpha$ となる。
$\blacksquare$
〔2〕導出した検定の実施
[2-1]$Y$ の中央値を $m$ とすると、中央値の定義より、
\begin{gather}
P \left(Y \le m\right)=0.5\\
P \left(\log{Y} \le \log{m}\right)=0.5\\
P \left(X \le \log{m}\right)=0.5
\end{gather}
正規分布の中央値は $\mu$ なので、
\begin{gather}
\log{m}=\mu\\
m=e^\mu
\end{gather}
AUCの中央値の比の対数を $\log{R}$ とすると、
\begin{align}
\log{R}&=\log{ \left(\frac{e^{\mu_T}}{e^{\mu_S}}\right)}\\
&=\log{e^{\mu_T}}-\log{e^{\mu_S}}\\
&=\mu_T-\mu_S
\end{align}
[2-2]仮説1の検定統計量の値を計算すると、
\begin{align}
t=\frac{\sqrt n \left(\bar{X}+\Delta\right)}{s}=\frac{\sqrt{20} \left(-0.1+0.223\right)}{0.26}=2.116
\end{align}
$t_{0.05} \left(19\right)=1.729 \lt t$ より、帰無仮説 $H_{01}$ を棄却する。
仮説2の検定統計量の値を計算すると、
\begin{align}
t=\frac{\sqrt n \left(\bar{X}-\Delta\right)}{s}=\frac{\sqrt{20} \left(-0.1-0.223\right)}{0.26}=-5.556
\end{align}
$t \lt -t_{0.05} \left(19\right)=-1.729$ より、帰無仮説 $H_{02}$ を棄却する。
したがって、両方の帰無仮説が棄却されたので、帰無仮説 $H_{01}$ を棄却し、
\begin{align}
H_A:-0.233 \lt \mu \lt 0.233
\end{align}
すなわち、生物学的同等性が成り立つと判断する。
$\blacksquare$
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