条件付き分散の定義と基本性質の証明

公開日:

【2023年3月3週】 【B000】数理統計学 【B020】確率変数と確率分布

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本稿では、条件付き分散の定義を紹介し、その基本性質を証明しています。分散の公式を条件付きに拡張したものといわゆる「全分散の法則」の証明です。

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条件付き分散

確率変数 X,Y に対し、Y=y を与えたときの X の分散 V( X | y )=E[{XE( X | y )}2|y] Y=y を与えたときの X条件付き分散 conditional variance という。

【公式】条件付き分散の公式

【公式】
条件付き分散の公式
Conditional Variance Formula

確率変数 X,Y に対し、Y=y を与えたときの X の条件付き分散について、 V(X|y)=E(X2|y){E(X|y)}2 が成り立つ。

導出

導出

条件付き分散の定義式を変形すると、 V(X|y)=E[X22XE(X|y)+{E(X|y)}2|y]=E[X2|y]2E(X|y)E(X|y)+E[{E(X|y)}2|y]=E[X2|y]2{E(X|y)}2+{E(X|y)}2=E[X2|y]{E(X| y )}2

【定理】条件付き分散の基本性質(全分散の法則)

【定理】
条件付き分散の基本性質(全分散の法則)
Basic Property of Conditional Variance (Law of total variance)

確率変数 X,Y について、「確率変数 X の分散」は、 Y=y を与えたときの X の条件付き分散の期待値」 Y=y を与えたときの X の条件付き期待値の分散」 の和に等しい、 すなわち、 V(X)=E[V(X|y)]+V[E(X|y)] が成り立つ。

証明

証明

(i)Y=y を与えたときの X の条件付き分散の期待値
条件付き分散の公式 V(X|y)=E(X2|y){E(X| y )}2 より、 E[V(X|y)]=E[E(X2|y){E(X|y)}2]=E[E(X2|y)]E[{E(X|y)}2] 期待値の繰り返し公式 E[m(X,Y)]=E[E{m(X,y)|y}] より、m(X,Y)=X2 とすると、 E[V(X|y)]=E[E(X2|y){E(X|y)}2](1)=E[X2]E[{E(X|y)}2]

(ii)Y=y を与えたときの X の条件付き期待値の分散
分散の公式 V{g(Y)}=E[{g(Y)}2][E{g(Y)}]2 より、g(Y)=E(X|y) とすると、 V[E(X|y)]=E[{E(X|y)}2]{E[E(X|y)]}2 期待値の繰り返し公式 E(X)=E[E(X|y)] より、 (2)V[E(X|y)]=E[{E(X|y)}2]{E(X)}2(1),(2) の和を求めると、 E[V(X|y)]+V[E(X|y)]=E[X2]{E(X)}2 分散の公式より、 V(X)=E[V(X|y)]+V[E(X|y)]

参考文献

  • 野田 一雄, 宮岡 悦良 著. 入門・演習数理統計. 共立出版, 1990, p.92-93
  • 竹村 彰通 著. 現代数理統計学. 創文社, 1991, p.52-53
  • 久保川 達也 著, 新井 仁之, 小林 俊行, 斎藤 毅, 吉田 朋広 編. 現代数理統計学の基礎. 共立出版, 2017, p.66
  • 黒木 学 著. 数理統計学:統計的推論の基礎. 共立出版, 2020, p.64-65

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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