本稿には、2021年に実施された統計検定1級『医薬生物学』 問5の自作解答案を掲載しています。なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。
- 著作権の関係上、問題文は、掲載することができません。申し訳ありませんが、閲覧者のみなさまでご用意いただければ幸いです。
- この答案は、あくまでも筆者が自作したものであり、公式なものではありません。正式な答案については、公式問題集をご参照ください。
- 計算ミスや誤字・脱字などがありましたら、コメントなどでご指摘いただければ大変助かります。
- スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。
〔1〕感度・特異度の算出
定義式より、各数値を代入すると、感度は \begin{align} P \left(+\middle| T\right)&=P \left(8 \lt X_T\right)\\ &=P \left(\frac{8-10}{2} \lt \frac{X_T-10}{2}\right)\\ &=P \left(-1.000 \lt Z\right)\\ &=1-0.159\\ &=0.841 \end{align} 同様に特異度は、 \begin{align} P \left(-\middle| F\right)&=P \left(X_C \lt 8\right)\\ &=P \left(\frac{X_T-5}{2} \lt \frac{8-5}{2}\right)\\ &=P \left(Z \lt 1.500\right)\\ &=0.933 \end{align} $\blacksquare$
〔2〕陽性的中率・陰性的中率の算出
〔1〕と同様に考えると、感染している人が陰性になる確率は、
\begin{align}
P \left(-\middle| T\right)&=P \left(X_T \lt 8\right)\\
&=P \left(\frac{X_T-10}{2} \lt \frac{8-10}{2}\right)\\
&=P \left(Z \lt -1.000\right)\\
&=0.159
\end{align}
感染していない人が陽性になる確率は、
\begin{align}
P \left(+\middle| F\right)&=P \left(8 \lt X_C\right)\\
&=P \left(\frac{8-5}{2} \lt \frac{X_T-5}{2}\right)\\
&=P \left(1.500 \lt Z\right)\\
&=0.067
\end{align}
母集団における疾病の感染率が $p=0.01$ であることから、
ベイズの定理により、陽性的中度は、
\begin{align}
P \left(T\middle|+\right)=\frac{0.01\times0.841}{0.01\times0.841+0.99\times0.067}=0.113
\end{align}
同様に、陰性的中度は、
\begin{align}
P \left(F\middle|-\right)=\frac{0.99\times0.933}{0.01\times0.159+0.99\times0.933}=0.998
\end{align}
$\blacksquare$
陽性 陰性 合計
感染者 $0.01\times0.841$ $0.01\times0.159$ $0.01$
非感染者 $0.99\times0.067$ $0.99\times0.933$ $0.99$
合計 $0.075$ $0.925$ $1$
〔3〕感度を特定の値にするためのしきい値の設計
定義式より、感度が0.95のとき、 \begin{align} P \left(+\middle| T\right)=P \left(c \lt X_T\right)=P \left(\frac{c-10}{2} \lt \frac{X_T-10}{2}\right)=P \left(\frac{c-10}{2} \lt Z\right)=0.95 \end{align} よって、 \begin{gather} \frac{c-10}{2}=-Z_{0.05}\\ c=10-1.645\times2\\ c=6.71 \end{gather} このときの特異度は、 \begin{align} P \left(-\middle| F\right)&=P \left(X_C \lt 6.71\right)\\ &=P \left(\frac{X_T-5}{2} \lt \frac{6.71-5}{2}\right)\\ &=P \left(Z \lt 0.855\right)\\ &=1-0.196\\ &=0.804 \end{align} $\blacksquare$
〔4〕感度・特異度を特定の値にするためのしきい値と標準偏差の設計
定義式より、感度が0.95のとき、 \begin{align} P \left(+\middle| T\right)=P \left(c \lt X_T\right)=P \left(\frac{c-10}{\sigma} \lt \frac{X_T-10}{\sigma}\right)=P \left(\frac{c-10}{\sigma} \lt Z\right)=0.95 \end{align} したがって、 \begin{align} \frac{c-10}{\sigma}=-1.64 \left(=Z_{0.95}\right)\tag{1} \end{align} 同様に、特異度が0.95のとき、 \begin{align} P \left(-\middle| F\right)=P \left(X_C \lt c\right)=P \left(\frac{X_T-5}{\sigma} \lt \frac{c-5}{\sigma}\right)=P \left(Z \lt \frac{c-5}{\sigma}\right)=0.95 \end{align} したがって、 \begin{align} \frac{c-5}{\sigma}=1.64 \left(=Z_{0.05}\right)\tag{2} \end{align} 式1と式2の連立方程式を解くと、 \begin{align} c=\frac{15}{2}=7.5 \quad \sigma=1.52 \end{align} $\blacksquare$
〔5〕検査精度に関する分析
問題文の状況を表で表すと以下のようになる。
このとき、確かに感度と陰性的中度は、
\begin{gather}
P \left(+\middle| T\right)=\frac{a}{a}=1\\
P \left(F\middle|-\right)=\frac{d}{d}=1
\end{gather}
となるが、
偽陽性の数(非感染者で陽性となった人数) $c$ が不明なため、偽陽性率が分からない。もし、偽陽性率 $P \left(+\middle|F\right)=\frac{c}{c+d}$ が小さければこの検査法は有効であるが、大きければ、有効とは言えない。
$\blacksquare$
陽性 陰性 合計
感染者 $a$ $0$ $a$
非感染者 $c$ $d$ $c+d$
合計 $a+c$ $d$ $N$
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