統計検定 1級 2024年 統計数理 問1 最尤推定量・検定の検出力

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【B000】数理統計学 【D000】統計検定 過去問

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本稿には、2024年に実施された統計検定1級『統計数理』 問1の自作解答案を掲載しています。なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。

  • 統計検定の問題の使用に関する規約により禁止されているため、問題文は掲載することができません。公式サイトで公開されているものなどをご参照ください。
  • この答案は、あくまでも筆者が自作したものであり、公式なものではありません。正式な答案については、公式問題集をご参照ください。
  • 計算ミスや誤字・脱字などがありましたら、コメントなどでご指摘いただければ大変助かります。
  • スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。

〔1〕対数尤度関数の導出

正規分布の性質より、 YiL(βxi,σ2) したがって、確率変数 Yi の確率密度関数は、 f(yi)=12πσexp[(yiβxi)22σ2] 尤度関数 L(θ) を求めると、 L(β)=i=1n12πσexp[(yiβxi)22σ2]=(12πσ2)nexp[12σ2i=1n(yiβxi)2]=(12πσ2)n2exp[12σ2i=1n(yiβxi)2] 対数尤度関数 l(θ)=logL(θ) を求めると、 l(β)=log[(12πσ2)n2exp{12σ2i=1n(yiβxi)2}]=n2log(2πσ2)12σ2i=1n(yiβxi)2

〔2〕最尤推定量の導出と不偏性の証明

パラメータ β に関するスコア関数 S(θ)=μlogL(θ) を求めると、 S(β)=12σ2(2i=1nxiyi+2βi=1nxi2) 尤度方程式 S(θ)=0 を解くと、 0=12σ2(2i=1nxiyi+2β^MLi=1nxi2)2i=1nxiyi+2β^MLi=1nxi2=0β^MLi=1nxi2=i=1nxiyiβ^ML=i=1nxiyii=1nxi2 両辺の期待値を取ると、期待値の性質より、 E(β^ML)=E(i=1nxiyii=1nxi2)=1i=1nxi2E(i=1nxiyi)=1i=1nxi2i=1n{xiE(yi)}=1i=1nxi2i=1n(xiβxi)=βi=1nxi2i=1nxi2=β したがって、不偏推定量の定義を満たすことから、求めた最尤推定量は不偏推定量である。

〔3〕フィッシャー情報量とクラメール・ラオの下限

フィッシャー情報量の定義式 In(θ)=E[d2dθ2l(θ)] より、 In(β)=E(12σ22i=1nxi2)=1σ2i=1nxi2 クラメール・ラオの不等式 1In(θ)V(θ^) より、 1In(β)=σ2i=1nxi2V(β^)

〔4〕推定量の期待値と分散

与えられた推定量の期待値を求めると、 E(β~)=E(i=1nYii=1nxi)=1i=1nxiE[i=1n(βxi+εi)]=1i=1nxi{(i=1nβxi)+nE(εi)} 問題文の仮定 E(εi)=0 より、 E(β~)=βi=1nxii=1nxi=β 同様に分散を求めると、εi が互いに独立であるとの仮定と分散の加法性より、 V(β~)=V(i=1nYii=1nxi)=1(i=1nxi)2V[i=1n(βxi+εi)]=1(i=1nxi)2nV(εi)=nσ2(i=1nxi)2

〔5〕検定の検出力の大小比較

問題文で与えられた検定問題は、 H0:β=0H1:β=β1(>0) と書き換えられる。

最尤推定量の分散を求めると、 V(β^ML)=V(i=1nxiyii=1nxi2)=1(i=1nxi2)2V(i=1nxiyi)=1(i=1nxi2)2i=1n{xi2V(yi)}=1(i=1nxi2)2i=1n(xi2σ2)=σ2i=1nxi2(i=1nxi2)2=σ2i=1nxi2 これは、〔3〕で求めたクラメール・ラオの下限に一致するので、最尤推定量の分散がすべての推定量の中で最小の分散となる。

上で求めた値と〔4〕の結果より、 V(β^ML)=s12V(β~)=s22 とおくと、 正規分布の再生性から、 β^MLN(β,s12)β~N(β,s22)

問題文で与えられた検定に対する検定統計量は、帰無仮説のもとで、 Z10=β^ML0s1Z20=β~0s2Z10N(0,1)Z20N(0,1) 対立仮説のもとで、 Z11=β^MLβ1s1Z21=β~β1s2Z11N(β1,1)Z21N(β1,1)

最尤推定量を用いた検定問題の棄却域を cML<β^ML とすると、有意水準が α であるとき、帰無仮説のもとで、 P( cML<β^ML | β=0 )=P(cML0s1<β^ML0s1)=P(cMLs1<Z10)=α したがって、標準正規分布の上側 α 点を zα とすると、 cMLs1=zα このとき、検出力の定義より、対立仮説のもとで、検定統計量が棄却域に入る確率は、標準正規分布の累積分布関数を Φ として、 P( cML<β^ML | β=β1 )=P(cMLβ1s1<β^MLβ1s1)=P(cMLs1β1s1<Z11)=Φ(zαβ1s1<Z) 〔4〕で与えられた推定量についても同様に考えると、 P( c~<β~ | β=β1 )=P(c~β1s2<β~β1s2)=P(c~s2β1s2<Z21)=Φ(zαβ1s2<Z) ここで、 s12s22s1s2β1s2β1s1β1s1β1s2zαβ1s1zαβ1s2Φ(zαβ1s2)Φ(zαβ1s1)P( c~<β~ | β=β1 )P( cML<β^ML | β=β1 ) したがって、最尤推定量を用いた検定の検出力は〔4〕の推定量を用いたときの検出力以上となる。

「検出力の違いのイメージ」のイメージ図
図1 検出力の違いのイメージ

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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