本稿には、2024年に実施された統計検定1級『統計数理』 問5の自作解答案を掲載しています。なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。
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- この答案は、あくまでも筆者が自作したものであり、公式なものではありません。正式な答案については、公式問題集をご参照ください。
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〔1〕順序統計量の分布
まず、確率変数 の確率密度関数と累積分布関数は、
順序統計量の確率密度関数の公式
を用いると、
それぞれの期待値は、積分範囲が原点対称であることから、奇関数の積分の性質(積分値が0になる)を用いると、
別解
順序統計量の確率密度関数の公式を知らない場合(クリックで表示)
最大値の分布
最大値が 以下となるとき、すべての が 以下となるので、
確率変数 は互いに独立であるため、この確率は、
累積分布関数と確率密度関数の関係 より、
2番目に大きい値の分布
2番目の値が 以下となるのは、
のうち2つが 以下、かつ、1つが 以上
もしくは、
のすべてが 以下
のときであるから、
(a)2つが 以下となる確率は、
(b)3つが 以下となる確率は、先の結果より、
したがって、
累積分布関数と確率密度関数の関係 より、
最小値の分布
最小値が 以下となるとき、少なくとも1つの が 以下となる。これは、「すべての が 以上となる事象」の余事象であるから、
確率変数 は互いに独立であるため、この確率は、
確率の基本性質 より、
累積分布関数と確率密度関数の関係 より、
〔2〕同時確率密度関数
順序統計量 の同時分布関数
について考えると、
これは、
最小値が 以下の値、2番目が 以下の値、最大値が 以下の値
を取る同時確率と言い換えることができる。
このような状況となるためには、
の条件下において、
3つのうち1つが
残り2つのうち1つが
残りの1つが
という値を取ればよい。
この確率は、最小値の取り方が3通り、2番目の値の取り方が2通り、最大値の取り方は残りの1通りなので、
同時分布関数と同時確率密度関数の関係より、
したがって、
〔3〕不偏推定量
確率変数 の期待値は、〔1〕の結果と期待値の性質より、
与えられた推定量の期待値は、
したがって、 は の値によらず、不偏推定量である。
〔4〕十分統計量
確率変数 は、 を だけ平行移動しただけなので、〔2〕の結果より、
観測値 が得られる尤度関数は、定義域を を中心に書き換えると、
これは、条件を満たす場合は 、それ以外の場合は を取る指示関数 を用いて、
と表すことができる。
これは、 のみの関数なので、フィッシャー・ネイマンの因子分解定理より、確率変数の組 は、 の十分統計量である。
〔5〕ラオ・ブラックウェルの定理
確率変数 の確率密度関数と累積分布関数は、
順序統計量 の同時確率密度関数の公式
を用いると、
順序統計量 の同時確率密度関数は、〔2〕と同様に考えて、
条件付き確率密度関数の定義より、
これは、区間 の連続一様分布の確率密度関数なので、連続一様分布の期待値の公式より、
ここで、〔3〕において定義された不偏推定量 について、十分統計量 で条件づけた条件付き期待値は、
ラオ・ブラックウェルの定理を用いて、 を元に改良した推定量 の導出を試みると、
とすれば、分散を最小にすることができる。
したがって、
これを満たすのは、
であり、
〔3〕の結果より、 を元に改良した推定量は、 の値によらず、不偏推定量である。
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