統計検定 1級 2024年 医薬生物学 問2 治療効果の推定量の比較

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【A000】生物統計学 【D000】統計検定 過去問

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本稿には、2024年に実施された統計検定1級『医薬生物学』 問2の自作解答案を掲載しています。なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。

  • 統計検定の問題の使用に関する規約により禁止されているため、問題文は掲載することができません。公式サイトで公開されているものなどをご参照ください。
  • この答案は、あくまでも筆者が自作したものであり、公式なものではありません。正式な答案については、公式問題集をご参照ください。
  • 計算ミスや誤字・脱字などがありましたら、コメントなどでご指摘いただければ大変助かります。
  • スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。

〔1〕治療効果の推定量の分散①

問題文の条件より、 E(XTi)=μTX,E(YTi)=μTY,E(XCi)=μCX,E(YCi)=μCYV(XTi)=V(YTi)=V(XCi)=V(YCi)=σ2Cov(XTi,YTi)=Cov(XCi,YCi)=σ2ρ 被験者間のデータは互いに独立なので、 Cov(XTi,XCi)=Cov(XTi,YCi)=Cov(YTi,XCi)=Cov(YTi,YCi)=0 標本平均の期待値と分散の公式より、 V(X¯T)=V(Y¯T)=V(X¯C)=V(Y¯C)=σ2n

標本平均どうしの共分散について、共分散の性質より、 Cov(X¯,Y¯)=Cov(1ni=0nXi,1ni=0nYi)=1n1nCov(i=0nXi,i=0nYi)=1n2Cov(i=0nXi,i=0nYi) ここで、共分散には分配法則のようなものが成り立つことから、 Cov(X¯,Y¯)=1n2Cov{(X1+X2+Xn),(Y1+Y2+Yn)}=1n2{i=0nCov(Xi,Yi)+i=1njiCov(Xi,Yj)}=1n2{nCov(Xi,Yi)+0}=σ2ρn これと同様に考え方から、 Cov(X¯T,Y¯T)=Cov(X¯C,Y¯C)=σ2ρnCov(X¯T,X¯C)=Cov(X¯T,Y¯C)=Cov(Y¯T,X¯C)=Cov(Y¯T,Y¯C)=0

治療効果の推定量 δ^d の分散は、和の分散の一般公式より、 V(δ^d)=V(Y¯TY¯C)=V(Y¯T)+V(Y¯C)2Cov(Y¯T,Y¯C)=σ2n+σ2n0=2σ2n

〔2〕治療効果の推定量の分散②

治療効果の推定量 δ^c の分散は、和の分散の一般公式より、0 になるものの記載を省略すると、 V(δ^c)=V(Y¯TX¯TY¯C+X¯C)=V(Y¯T)+V(X¯T)+V(Y¯C)+V(X¯C)2Cov(Y¯T,X¯T)2Cov(Y¯C,X¯C)=σ2n×42σ2ρn×2=4σ2(1ρ)n

〔3〕回帰モデル

〔3-1〕最小二乗法によるパラメータの推定

まず、標本平均の定義式の変形より、 i=0nXTi=nX¯T,i=0nYTi=nY¯Ti=0nXCi=nX¯T,i=0nYCi=nY¯T

試験治療群における誤差項は、 εTi=YTi(α+δa+ρXTi)inεTi2=in{YTi(α+δa+ρXTi)}2 対照治療群における誤差項は、 εCi=YCi(α+ρXCi)inεCi2=in{YCi(α+ρXCi)}2 したがって、二乗誤差の総和は、 E=in{YTi(α+δa+ρXTi)}2+in{YCi(α+ρXCi)}2 最小二乗法による推定を行うため、E をパラメータ α で偏微分したものを 0 として計算すると、 Eα=in2{YTi(α+δa+ρXTi)}(1)+in2{YCi(α+ρXCi)}(1)0=2[in{YTi(α+δa+ρXTi)}+in{YCi(α+ρXCi)}]=in(YTiρXTi)n(α+δa)+in(YCiρXCi)nα=inYTiρinXTi+inYCiρinXCi2nαnδa=n(Y¯TρX¯T+Y¯CρX¯C2αδa) したがって、 (1)2α+δa=Y¯TρX¯T+Y¯CρX¯C パラメータ δa についても同様に、 Eδa=in2{YTi(α+δa+ρXTi)}0=2[in(YTiρXTi)n(α+δa)]=2n{Y¯TρX¯T(α+δa)}=Y¯TρX¯T(α+δa) したがって、 (2)α+δa=Y¯TρX¯T 2×(2)(1) より、 δ^a=2Y¯T2ρX¯T(Y¯TρX¯T+Y¯CρX¯C)=Y¯TY¯CρX¯T+ρX¯C したがって、係数比較すると、 c1=1,c2=1,c3=ρ,c4=ρ

〔3-2〕治療効果の推定量の分散③

〔3-1〕の結果と和の分散の一般公式より、0 になる項の記載を省略すると、 V(δ^a)=V(Y¯TY¯CρX¯T+ρX¯C)=V(Y¯T)+V(Y¯C)+ρ2V(X¯T)+ρ2V(X¯C)+2Cov(Y¯T,ρX¯T)+2Cov(Y¯C,ρX¯C)=σ2n×2+σ2ρ2n×22ρσ2ρn×2=2σ22σ2ρ2n=2σ2(1ρ2)n

〔4〕治療効果の推定量の期待値

標本平均の期待値の公式より、 E(Y¯T)=μTYE(X¯T)=μTXE(Y¯C)=μCYE(X¯C)=μCX それぞれの推定量の期待値を求めると、 E(δ^d)=E(Y¯TY¯C)=E(Y¯T)E(Y¯C)=μTYμCY E(δ^c)=E(Y¯TX¯TY¯C+X¯C)=E(Y¯T)E(X¯T){E(Y¯C)E(X¯C)}=(μTYμCY)(μTXμCX) E(δ^a)=E(Y¯TY¯CρX¯T+ρX¯C)=E(Y¯T)E(Y¯C)ρE(X¯T)+ρE(X¯C)=(μTYμCY)ρ(μTXμCX) したがって、E(δ^d)=E(δ^c)=E(δ^a) となるための条件は、 μTXμCX=0

〔5〕推定量の相対効率

これまでの結果から、 V(δ^c)V(δ^d)=4σ2(1ρ)nn2σ2=2(1ρ) V(δ^a)V(δ^d)=2σ2(1ρ2)nn2σ2=1ρ2

これをグラフにすると、以下のようになる。

「推定量の相対分散と相関係数の関係」のグラフ
図1 推定量の相対分散と相関係数の関係

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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