本稿には、2019年に実施された統計検定1級『統計数理』 問3の自作解答案を掲載しています。なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。
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〔1〕十分統計量であることの証明
本問において、確率変数 $X$ は \begin{gather} X \sim \mathrm{U} \left(0,\theta\right)\\ f \left(x\right)= \left\{\begin{matrix}\frac{1}{\theta}&0 \le x \le \theta\\0&\mathrm{other}\\\end{matrix}\right.\\ \end{gather} 同時確率密度関数 $f_n \left(\boldsymbol{x}\right)$ を求めると、 \begin{align} f_n \left(\boldsymbol{x}\right)&=\prod_{i=1}^{n}\frac{1}{\theta}\\ &=\frac{1}{\theta^n} \end{align} ここで、この同時確率密度関数は、$0 \lt \theta$ において単調減少な関数であり、論理的に、 \begin{align} 0 \lt Y \le \theta \end{align} という制約があるため、 実際には、 \begin{align} f_n \left(\boldsymbol{x}\right)= \left\{\begin{matrix}0&\theta \lt y\\\frac{1}{\theta^n}&y \le \theta\\\end{matrix}\right. \end{align} フィッシャー・ネイマンの因子分解定理 \begin{align} \begin{matrix}f_n \left(\boldsymbol{x};\theta\right)=g \left(t;\theta\right) \cdot h \left(x\right)&g \left(t;\theta\right) \geq 0 \quad h \left(x\right) \geq 0\\\end{matrix} \end{align} において、以下のように考えると、 \begin{align} g \left(t;\theta\right)= \left\{\begin{matrix}\frac{1}{\theta^n}&y \le \theta\\0&\theta \lt y\\\end{matrix}\right. \quad h \left(x\right)=1 \end{align} フィッシャー・ネイマンの因子分解定理によって、$Y$ はパラメータ $\theta$ に関する十分統計量である。 $\blacksquare$
〔2〕連続一様分布の最大値の分布
連続一様分布 $\mathrm{U} \left(0,\theta\right)$ の累積分布関数は、 \begin{gather} F \left(x\right)= \left\{\begin{matrix}0&x \lt 0\\\frac{x}{\theta}&0 \le x \le \theta\\1&\theta \lt x\\\end{matrix}\right. \end{gather} 最大値が $y$ 以下となるとき、すべての $X_i$ が $y$ 以下となるので、最大値の分布関数は、 \begin{align} G \left(y\right)=P \left(X_1 \le y,X_2 \le y, \cdots ,X_n \le y\right) \end{align} すべての確率変数は互いに独立であるため、この確率は、 \begin{align} G \left(y\right)&=P \left(X_1 \le y\right) \cdot P \left(X_2 \le y\right) \cdots P \left(X_n \le y\right)\\ &=F \left(y\right) \cdot F \left(y\right) \cdot F \left(y\right)\\ &=\frac{y^n}{\theta^n} \end{align} 累積分布関数と確率密度関数の関係 $g \left(y\right)=\frac{d}{dy}G \left(y\right)$ より、 \begin{align} g \left(y\right)=\frac{n}{\theta^n}y^{n-1} \end{align} $\blacksquare$
〔3〕最大値が与えられたときの条件付き同時分布
例えば、$X_n$ が最大値を取るとすると、$Y=y$ が与えられたときの条件付き同時確率密度関数は、 \begin{align} f \left(x_1,x_2, \cdots ,x_{n-1},y\right)=\frac{1}{\theta^n} \end{align} 最大値を取る確率変数の選び方が $n$ 通りなので、条件付き確率の定義式より、 \begin{align} f \left(\boldsymbol{x}\middle| y\right)&=\frac{f \left(\boldsymbol{x}\right)}{g \left(y\right)}\\ &=\frac{n \cdot \frac{1}{\theta^n}}{\frac{n}{\theta^n}y^{n-1}}\\ &=\frac{1}{y^{n-1}} \end{align} $\blacksquare$
〔4〕最大値の期待値と不偏推定量
期待値の定義式 $E \left(Y\right)=\int_{-\infty}^{\infty}{y \cdot g \left(y\right)dy}$ より、 \begin{align} E \left(Y\right)&=\int_{0}^{\theta}{y \cdot \frac{n}{\theta^n}y^{n-1}dy}\\ &=\frac{n}{\theta^n}\int_{0}^{\theta}{y^ndy}\\ &=\frac{n}{\theta^n} \left[\frac{1}{n+1}y^{n+1}\right]_0^\theta\\ &=\frac{n}{\theta^n} \cdot \frac{\theta^{n+1}}{n+1}\\ &=\frac{n}{n+1}\theta \end{align} 不偏推定量を $\widetilde{\theta}=aY$ として、両辺の期待値を取ると、 \begin{gather} E \left(\widetilde{\theta}\right)=\theta\\ E \left(aY\right)=\theta\\ aE \left(Y\right)=\theta\\ a \cdot \frac{n}{n+1}\theta=\theta\\ a=\frac{n+1}{n} \end{gather} したがって、 \begin{align} \widetilde{\theta}=\frac{n+1}{n}Y \end{align} $\blacksquare$
〔5〕完備十分統計量の定義①
期待値の定義式 $E \left[u \left(Y\right)\right]=\int_{-\infty}^{\infty}{u \left(y\right) \cdot g \left(y\right)dy}$ より、 \begin{gather} E \left[u \left(y\right)\right]=\int_{0}^{\theta}{u \left(y\right) \cdot \frac{n}{\theta^n}y^{n-1}dy}=0\\ \int_{0}^{\theta}{u \left(y\right) \cdot y^{n-1}dy}=0 \end{gather} この積分値を $\theta$ の関数 $h \left(\theta\right)$ とみると、 \begin{align} h \left(0\right)=0 \end{align} 1階微分を求めると、 \begin{align} h^\prime \left(\theta\right)=u \left(y\right) \cdot y^{n-1} \end{align} すべての $\theta$ において、$h \left(\theta\right)=0$ となるためには、$h \left(\theta\right)$ は定数関数である必要がある。すなわち、 \begin{align} h^\prime \left(\theta\right)=u \left(y\right) \cdot y^{n-1}=0 \end{align} ここで、$0 \lt y\Rightarrow0 \lt y^{n-1}$ であるから、 \begin{align} u \left(y\right)=0 \end{align} $\blacksquare$
〔6〕完備十分統計量の定義②
〔4〕以外の不偏推定量を $T \left(Y\right)$ とすると、 \begin{align} E \left[T \left(Y\right)-\widetilde{\theta}\right]=E \left[T \left(Y\right)-\frac{n+1}{n}Y\right] \end{align} ここで、$T \left(Y\right),\widetilde{\theta}$ はどちらも不偏推定量なので、 \begin{align} E \left[T \left(Y\right)-\frac{n+1}{n}Y\right]=\theta-\theta=0 \end{align} ここで、以下のように2つの不偏推定量を $Y$ の関数と考えると、 \begin{align} u \left(Y\right)=T \left(Y\right)-\frac{n+1}{n}Y \end{align} 〔5〕の結果より、恒等的に $u \left(Y\right)=0$ であるので、 \begin{align} T \left(Y\right)=\frac{n+1}{n}Y \end{align} したがって、$Y$ の関数である $\theta$ の不偏推定量としては、$\widetilde{\theta}$ は唯一の不偏推定量である。 $\blacksquare$
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