本稿では、関数の定義と性質を紹介しています。
なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。
- スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。
関数、定義域・値域
$S$ を実数のある集合とするとき、$S$ に属するおのおのの数 $x$ にそれぞれ1つずつ数を対応づける規則のことをSで定義された関数 function といい、 \begin{gather} f,g \quad F,G \end{gather} のような文字で表す。
関数 $f$ が $S$ で定義された関数であるとき、$S$ を $f$ の定義域 domain という。そして、$f$ によって、$S$ の要素 $x$ に対応づけられる数を \begin{gather} f \left(x\right) \end{gather} で表し、これを $x$ における関数 $f$ の値と呼ぶ。
たとえば、$f$ が各実数 $x$ に $x^2$ を対応づける関数ならば、 \begin{gather} f \left(x\right)=x^2 \end{gather} また、$f$ が負でないすべての実数 $x$ に $\sqrt x$ を対応づける関数ならば、 \begin{gather} f \left(x\right)=\sqrt x \end{gather}
このように、$x$ を定義域の要素を一般的に表す文字とし、$x$ における関数 $f$ の値 $f \left(x\right)$ を $y$ と書けば、 \begin{gather} y=f \left(x\right) \end{gather} このとき、$x$ を独立変数 independent variable、$y$ を従属変数 dependent variable という。
関数 $y=f \left(x\right)$ において、独立変数 $x$ が定義域全体を動くとき、従属変数 $y$ の動く値の範囲をこの関数の値域 range という。
特別な場合として、関数 $f$ の値域がただ1つの数 $c$ のみからなる場合もある。それは/が、定義域に属するすべての $x$ を常に $c$ に対応させている場合である。そのようなとき、 \begin{gather} f \left(x\right)=c \end{gather} と書き、$f$ は値 $c$ をとる定数関数 constant function であるという。
区間
2つの任意の実数 $a \lt b$ に対し、不等式 \begin{gather} a \lt x \lt b\\ a \le x \le b\\ a \le x \lt b\\ a \lt x \le b \end{gather} のいずれかを満足する実数 $x$ 全体の集合を区間 interval と呼ぶ。 通常、これらの区間を、上から順に、それぞれ記号 \begin{gather} \left(a,b\right) \quad \left[a,b\right] \quad \left[a\right., \left.b\right) \quad \left(a\right., \left.b\right] \end{gather} で表す。
特に、$ \left(a,b\right)$ は開区間 open interval と呼ばれ、$ \left[a,b\right]$ は閉区間 closed interval と呼ばれる。集合の記法を用いて書けば、 \begin{gather} \left(a,b\right)= \left\{x\middle| a \lt x \lt b\right\}\\ \left[a,b\right]= \left\{x\middle| a \le x \le b\right\} \end{gather} また、区間 $ \left[a\right., \left.b\right)$ や $ \left(a\right., \left.b\right]$ は半閉区間 semi-closed interval、または半開区間 semi-open interval と呼ばれる。
さらに、不等式 \begin{gather} a \lt x \quad a \le x \quad x \lt b \quad x \le b \end{gather} を満たす実数 $x$ 全体の集合も、やはり区間とよばれ、 それぞれ記号 \begin{gather} \left(a,\infty\right) \quad \left[a\right., \left.\infty\right) \quad \left(-\infty,b\right) \quad \left(-\infty\right., \left.b\right] \end{gather} によって表される。
くわえて、実数全体の集合も1つの区間と考え、これを \begin{gather} \left(-\infty,\infty\right) \end{gather} で表す。
単調関数
$I$ を1つの区間とし、$y=f \left(x\right)$ は区間 $I$ を定義域とする関数、あるいはもっと一般に、定義域が区間 $I$ を含んでいるような関数とする。このとき、$I$ に属する任意の2つの数 $x_1,x_2$ に対して、 \begin{gather} x_1 \lt x_2\Rightarrow f \left(x_1\right) \lt f \left(x_2\right) \end{gather} が成り立つとき、 $f \left(x\right)$ は区間 $I$ において、強い意味で単調に増加する、または、$I$ における狭義単調増加関数 monotonically increasing function であるという。
また、 \begin{gather} x_1 \lt x_2\Rightarrow f \left(x_1\right) \le f \left(x_2\right) \end{gather} が成り立つとき、 $f \left(x\right)$ は区間 $I$ において、弱い意味で単調に増加する、または、$I$ における広義単調増加関数であるという。なお、「単調」という言葉を省いて、単に「$f \left(x\right)$ は区間 $I$ において増加する」、または、「$I$ における増加関数である」と言うこともある。
同様に $I$ に属する任意の2つの数 $x_1,x_2$ に対して、 \begin{gather} x_1 \lt x_2\Rightarrow f \left(x_1\right) \gt f \left(x_2\right) \end{gather} が成り立つとき、 $f \left(x\right)$ は区間 $I$ において、強い意味で単調に減少する、または、$I$ における狭義単調減少関数 monotonically decreasing function であるといい、 \begin{gather} x_1 \lt x_2\Rightarrow f \left(x_1\right) \geq f \left(x_2\right) \end{gather} が成り立つとき、 $f \left(x\right)$ は区間 $I$ において、弱い意味で単調に減少する、または、$I$ における広義単調減少関数であるという。
さらに、単調増加関数と単調減少関数を合わせて単調関数 monotonic function という。
逆関数
ある関数 \begin{gather} y=f \left(x\right)\tag{1} \end{gather} の 定義域を $A$、値域を $B$ とし、$A$ の各要素 $x$ に対して $B$ の要素 $f \left(x\right)$ がただ1つに定まるとき、$B$ の各要素 $y$ に対しても対応する $x$ がただ1つに定まる。この関数を \begin{gather} x=g \left(y\right)\tag{2} \end{gather} とする。 すなわち、$y$ に $x$ を対応させる規則を $g$ で表す。このとき、関数 $(2)$ を関数 $(1)$ の逆関数 inverse function という。関数 $(2)$ においては、$y$ が独立変数、$x$ が従属変数となっている。
逆関数はしばしば、 \begin{gather} y=f^{-1} \left(x\right) \end{gather} と表される。
逆関数と元の関数では、定義域と値域が入れ替わり、逆関数の定義域は $B$、値域は $A$ となる。また、元の関数が連続で単調関数である場合、逆関数もまた連続で単調な関数となり、逆関数と元の関数は直線 \begin{gather} y=x \end{gather} に関して線対称なグラフになる。
偶関数と奇関数
ある関数 \begin{gather} y=f \left(x\right) \end{gather} について、 \begin{gather} f \left(-x\right)=f \left(x\right) \end{gather} が成り立つとき、偶関数 even function \begin{gather} f \left(-x\right)=-f \left(x\right) \end{gather} が成り立つとき、奇関数 odd function と呼ばれる。 偶関数のグラフは、$y$ 軸に関して対称、奇関数のグラフは、原点に関して対称である。
参考文献
- 松坂 和夫 著. 数学読本 2. 新装版, 岩波書店, 2019, p.246-251
- 松坂 和夫 著. 数学読本 4. 新装版, 岩波書店, 2019, p.793-799
- 開区間,閉区間の意味と関連する話題. 高校数学の美しい物語. 2022-01-15. https://manabitimes.jp/math/1183.
- 単調増加・単調減少の意味と覚えておくべき性質. 高校数学の美しい物語. 2022-05-26. https://manabitimes.jp/math/1289.
- 逆関数の3つの定義と使い分け. 高校数学の美しい物語. 2021-03-07. https://manabitimes.jp/math/784.
- 偶関数と奇関数の意味,性質などまとめ. 高校数学の美しい物語. 2021-03-07. https://manabitimes.jp/math/1052.
0 件のコメント:
コメントを投稿