連続一様分布の期待値・分散の導出

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【2023年3月4週】 【B000】数理統計学 【B040】連続型の確率分布

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本稿では、①定義に沿った方法、②モーメント母関数を用いる方法の2通りの方法で、連続一様分布の期待値と分散を導出しています。②の方法は、ロピタルの定理を必要とし、計算も非常に煩雑なため、実用的ではありませんが、計算練習としてはかなり骨のある問題です。

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【公式】連続一様分布の期待値・分散

【公式】
連続一様分布の期待値・分散
Expected Value and Variance of Continuous Uniform Distribution

連続一様分布 U(a,b) の期待値 E(X) と分散 V(X) は、 E(X)=a+b2V(X)=(ba)212 で与えられる。

導出法①:定義に沿った方法

導出

(i)期待値
期待値の定義式 E(X)=xf(x)dx より、 E(X)=1baabxdx=1ba[12x2]ab=1ba(b22a22)=1ba(b+a)(ba)2=a+b2

(ii)分散
2乗の期待値の定義式 E(X2)=x2f(x)dx より、 E(X2)=1baabx2dx=1ba[13x3]ab=1ba(b33a33)=1ba(ba)(b2+ab+a2)3=a2+ab+b23 分散の公式 V(X)=E(X2){E(X)}2 より、 V(X)=a2+ab+b23(a+b2)2=a2+ab+b23a2+2ab+b24=a22ab+b212=(ba)212

導出法②:モーメント母関数を用いる方法

導出

(i)期待値
連続一様分布のモーメント母関数の公式より、 MX(θ)=eθbeθaθ(ba) モーメント母関数の1階微分を求めると、商の微分公式合成関数の微分法より、 MX(1)(θ)=eθbeθabaddθ(1θ)+1θ(ba)ddθ(eθbeθa)=eθbeθaθ2(ba)+beθbaeθaθ(ba)=eθbeθaθ2(ba)+bθeθbeθbaθeθa+eθaθ2(ba)=eθb(bθ1)eθa(aθ1)θ2(ba) 1次モーメントとモーメント母関数の関係 MX(1)(0)=E(X) より、 E(X)=e0(01)e0(01)02(ba)=1+102(ba)=00 ここで、 f(θ)=θ2(ba)g(θ)=g1(θ)g2(θ)g1(θ)=eθb(bθ1)g2(θ)=eθa(aθ1) とすると、 f(θ)=2θ(ba)f(θ)=2(ba) g1(θ)=(bθ1)ddθeθb+eθbddθ(bθ1)=beθb(bθ1)+beθb=beθb(bθ1+1)=b2θeθb g1(θ)=b2θddθeθb+b2eθbdθdθ=b2θbeθb+b2eθb=b2eθb(bθ+1) 同様に、 g1(θ)=a2eθa(aθ+1) したがって、 g(θ)=b2eθb(bθ+1)a2eθa(aθ+1) f(θ),g(θ)θ0 のときの極限を取ると、 limθ0f(θ)=2(ba)limθ0g(θ)=b2e0(0+1)a2e0(0+1)=b2a2 したがって、 limθ0f(θ)0limθ0g(θ)f(θ)=00 よって適用条件を満たすので、ロピタルの定理により、 E(X)=limθ0g(θ)f(θ)=limθ0g(θ)f(θ)=b2a22(ba)=(b+a)(ba)2(ba)=b+a2

(ii)分散
MX(1)(θ)=eθb(bθ1)θ2(ba)eθa(aθ1)θ2(ba) ここで、 h1(θ)=eθb(bθ1)θ2(ba)h2(θ)=eθa(aθ1)θ2(ba) として微分すると、 h1(θ)=eθb(bθ1)baddθ(1θ2)+1θ2(ba)ddθ{eθb(bθ1)}=2eθb(bθ1)θ3(ba)+1θ2(ba){eθbddθ(bθ1)+(bθ1)ddθeθb}=2eθb(bθ1)θ3(ba)+b2θeθbθ2(ba)=b2θ2eθb2eθb(bθ1)θ3(ba)=(b2θ22bθ+2)eθbθ3(ba) 同様に、 h2(θ)=(a2θ22aθ+2)eθaθ3(ba) したがって、モーメント母関数の2階微分は、 MX(2)(θ)=(b2θ22bθ+2)eθb(a2θ22aθ+2)eθaθ3(ba) 2次モーメントとモーメント母関数の関係 MX(2)(0)=E(X2) より、 E(X2)=(b2022b0+2)e0(a2022a0+2)e003(ba)=2203(ba)=00 ここで、 f(θ)=θ3(ba)g(θ)=g1(θ)g2(θ)g1(θ)=(b2θ22bθ+2)eθbg2(θ)=(a2θ22aθ+2)eθa とすると、 f(θ)=3θ2(ba)f(θ)=6θ(ba)f(θ)=6(ba) g1(θ)=eθbddθ(b2θ22bθ+2)+(b2θ22bθ+2)ddθeθb=(2b2θ2b)eθb+(b3θ22b2θ+2b)eθb=b3θ2eθb g1(θ)=b3θ2ddθeθb+b3eθbddθθ2=b4θ2eθb+2b3θeθb=b3(bθ2+2θ)eθb g1(θ)=b3(bθ2+2θ)ddθeθb+b3eθbddθ(bθ2+2θ)=b4(bθ2+2θ)eθb+b3eθb(2bθ+2)=b3(b2θ2+4bθ+2)eθb 同様に、 g2(θ)=a3(a2θ2+4aθ+2)eθa したがって、 g(θ)=b3(b2θ2+4bθ+2)eθba3(a2θ2+4aθ+2)eθa f(θ),g(θ)θ0 のときの極限を取ると、 limθ0f(θ)=6(ba) limθ0g(θ)=b3(b202+4b0+2)e0a3(a202+4a0+2)e0=2(b3a3) したがって、 limθ0f(θ)0limθ0g(θ)f(θ)=00 よって適用条件を満たすので、ロピタルの定理により、 E(X)=limθ0g(θ)f(θ)=limθ0g(θ)f(θ)=2(b3a3)6(ba)=(b2+ab+a2)(ba)3(ba)=b2+ab+a23 分散の公式 V(X)=E(X2){E(X)}2 より、 V(X)=a2+ab+b23(a+b2)2=a2+ab+b23a2+2ab+b24=a22ab+b212=(ba)212

参考文献

  • 久保川 達也 著, 新井 仁之, 小林 俊行, 斎藤 毅, 吉田 朋広 編. 現代数理統計学の基礎. 共立出版, 2017, p.39
  • 黒木 学 著. 数理統計学:統計的推論の基礎. 共立出版, 2020, p.97-98

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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