本稿には、2017年に実施された統計検定1級『医薬生物学』 問3の自作解答案を掲載しています。なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。
- 著作権の関係上、問題文は、掲載することができません。申し訳ありませんが、閲覧者のみなさまでご用意いただければ幸いです。
- この答案は、あくまでも筆者が自作したものであり、公式なものではありません。正式な答案については、公式問題集をご参照ください。
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〔1〕二項確率
ステージ1の $n_1$ 名の患者のうち、有効と判定される患者数 $X_1$ は、 \begin{align} X_1 \sim \mathrm{B} \left\{n_1\pi_0,n_1\pi_0 \left(1-\pi_0\right)\right\} \end{align} このとき、$X_1 \le r_1$ となる確率は、二項分布の定義式より、 \begin{align} P \left(X_1 \le r_1\middle|\pi=\pi_0\right)=\sum_{k=0}^{r_1}{{}_{n_1}C_k \cdot \pi_0^k \left(1-\pi_0\right)^{n_1-k}} \end{align} $\blacksquare$
〔2〕第2種の過誤の確率
ステージ2に参加する $n_2$ 名の患者のうち、有効と判定される患者数を表す確率変数を $X_2$ とすると、最終的に有効と判定される患者数は、
\begin{align}
X=X_1+X_2
\end{align}
このとき、$\pi=\pi_1$ のもとで治療法 $T$ が無効と判定される事象は、
ステージ1で無効と判定される
または
ステージ1をクリアし、ステージ2で無効と判定される
すなわち、第2種の過誤の確率は、
\begin{align}
\beta&=P \left(X_1 \le r_1\right)+P \left(r_1+1 \le X_1\right) \cdot P \left(X \le r\right)\\
&=P \left(X_1 \le r_1\right)+P \left(r_1+1 \le X_1\right) \cdot P \left(X_2 \le r-x_1\right)
\end{align}
問題の定義より、例えば、ステージ1で $X_1=x_1$ となる確率は、
\begin{align}
P \left(X_1=x_1\right)=b \left(x_1:\pi_1,n_1\right)
\end{align}
したがって、二項分布の累積確率の考え方により、
(i)$\pi=\pi_1$ のもとで、ステージ1で無効となる確率
\begin{align}
P_1&=P \left(X_1 \le r_1\middle|\pi=\pi_1\right)\\
&=\sum_{x_1=0}^{r_1}b \left(x_1:\pi_1,n_1\right)
\end{align}
(ii)$\pi=\pi_1$ のもとで、ステージ2で無効となる確率
\begin{align}
P_2&=P \left(r_1+1 \le X_1\middle|\pi=\pi_1\right) \cdot P \left(X_2 \le r-x_1\middle|\pi=\pi_1\right)\\
&=\sum_{x_1=r_1+1}^{n_1} \left\{b \left(x_1:\pi_1,n_1\right)\sum_{x_2=0}^{r-x_1}b \left(x_2:\pi_1,n_2\right)\right\}
\end{align}
したがって、求める第2種の過誤の確率は、
\begin{align}
\beta=\sum_{x_1=0}^{r_1}b \left(x_1:\pi_1,n_1\right)+\sum_{x_1=r_1+1}^{n_1} \left\{b \left(x_1:\pi_1,n_1\right)\sum_{x_2=0}^{r-x_1}b \left(x_2:\pi_1,n_2\right)\right\}
\end{align}
$\blacksquare$
〔3〕第1種の過誤の確率
このとき、$\pi=\pi_0$ のもとで治療法 $T$ が有効と判定される事象は、
ステージ1をクリア
かつ
ステージ2をクリア
すなわち、第1種の過誤の確率は、
\begin{align}
\alpha&=P \left(r_1+1 \le X_1\right) \cdot P \left(r+1 \le X\right)\\
&=P \left(r_1+1 \le X_1\right) \cdot P \left(r+1-x_1 \le X_2\right)
\end{align}
(i)$\pi=\pi_0$ のもとでステージ1をクリアする確率
\begin{align}
P_1&=P \left(X_1 \le r_1\middle|\pi=\pi_0\right)\\
&=\sum_{x_1=r_1+1}^{n_1}b \left(x_1:\pi_0,n_1\right)
\end{align}
(ii)$\pi=\pi_0$ のもとでステージ2をクリアする確率
\begin{align}
P_2&=P \left(r+1-x_1 \le X_2\middle|\pi=\pi_0\right)\\
&=1-P \left(X_2 \le r-x_1\middle|\pi=\pi_0\right)\\
&=1-\sum_{x_2=0}^{r-x_1}b \left(x_2:\pi_0,n_2\right)
\end{align}
したがって、求める第1種の過誤の確率は、
\begin{align}
\alpha=\sum_{x_1=r_1+1}^{n_1} \left[b \left(x_1:\pi_0,n_1\right) \left\{1-\sum_{x_2=0}^{r-x_1}b \left(x_2:\pi_0,n_2\right)\right\}\right]
\end{align}
$\blacksquare$
〔4〕具体的な状況での過誤確率
〔2〕〔3〕の結果より、与えられた状況下での第1種・第2種の過誤の確率はそれぞれ以下のようになる。
(i)第1種の過誤の確率
第1種の過誤が起こるパターンを数え上げると、
\begin{align}
\left(X_1,X_2\right)= \left(1,3 \sim 7\right) \left(2,2 \sim 7\right) \left(3,1 \sim 7\right) \left(4,0 \sim 7\right) \left(5,0 \sim 7\right)
\end{align}
よって、
\begin{align}
\alpha=&\ b \left(1:0.1,5\right)\times\sum_{x_2=3}^{7}b \left(x_2:0.1,7\right)\\
&+b \left(2:0.1,5\right)\times\sum_{x_2=2}^{7}b \left(x_2:0.1,7\right)\\
&+b \left(3:0.1,5\right)\times\sum_{x_2=1}^{7}b \left(x_2:0.1,7\right)\\
&+b \left(4:0.1,5\right)+b \left(5:0.1,5\right)\\
=&\ 0.3281\times \left\{1- \left(0.4783+0.3720+0.1240\right)\right\}\\
&+0.0729\times \left\{1- \left(0.4783+0.3720\right)\right\}\\
&+0.0081\times \left(1-0.4783\right)\\
&+0.0005\times1+0.0000\times1\\
=&\ 0.0241
\end{align}
(ii)第2種の過誤の確率
第2種の過誤が起こるパターンを数え上げると、
\begin{align}
\left(X_1,X_2\right)= \left(0\right) \left(1,0\right) \left(1,1\right) \left(1,2\right) \left(2,0\right) \left(2,1\right) \left(3,0\right)
\end{align}
よって、
\begin{align}
\beta=&\ b \left(0:0.5,5\right)\\
&+b \left(1:0.5,5\right)\times \left\{b \left(0:0.5,7\right)+b \left(1:0.5,7\right)+b \left(2:0.5,7\right)\right\}\\
&+b \left(2:0.5,5\right)\times \left\{b \left(0:0.5,7\right)+b \left(1:0.5,7\right)\right\}\\
&+b \left(2:0.5,5\right)\times b \left(0:0.5,7\right)\\
=&\ 0.0313\\
&+0.1563\times \left(0.0078+0.0547+0.1641\right)\\
&+0.3125\times \left(0.0078+0.0547\right)\\
&+0.3125\times0.0078\\
=&\ 0.0887
\end{align}
*なお、第1種の過誤の確率については、治療法 $T$ が無効な場合($\pi=\pi_0$)に、正しく無効と判断する確率を求め、1から引くことでも求めることができる。この場合、正しく無効と判断するパターンを数え上げると、
\begin{align}
\left(X_1,X_2\right)= \left(0,x\right) \left(1,0\right) \left(1,1\right) \left(1,2\right) \left(2,0\right) \left(2,1\right) \left(3,0\right)
\end{align}
となる。
この確率を求め、1から引くと同様の結果が得られる。
$\blacksquare$
〔5〕試験参加者の期待値
まず、ステージ1は必ず実施されるので、ステージ1に参加する患者の期待値は、
\begin{align}
E \left(N_1\right)=5\times1=5
\end{align}
ステージ2について、
ステージ2が実施される場合は、$n_2=7$ 人が参加する
ステージ2が実施されない場合は、$n_2=0$ 人が参加する
治療法 $T$ が無効な場合($\pi=\pi_0$)にステージ2が実施される確率(=ステージ1をクリアする確率)は、
\begin{align}
P \left(0+1 \le X_1\middle|\pi=\pi_0\right)&=1-P \left(X_1=0\middle|\pi=\pi_0\right)\\
&=1-0.5905\\
&=0.4095
\end{align}
試験に参加する患者数 $N$ の期待値は、期待値の定義より、
\begin{align}
E \left(N\right)&=5+ \left(0\times0.5905+7\times0.4095\right)\\
&=7.8665
\end{align}
$\blacksquare$
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