本稿には、2013年に実施された統計検定1級『統計数理』 問4の自作解答案を掲載しています。なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。
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- この答案は、あくまでも筆者が自作したものであり、公式なものではありません。正式な答案については、公式問題集をご参照ください。
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〔1〕最低限必要なサンプルサイズ
中央値の定義より、帰無仮説 $H_0:\theta=0$ の下で、各 $z_i$ が正の値をとる確率は、 \begin{align} P \left(0 \lt z_i\right)=\frac{1}{2} \end{align} $n$ 個すべての値が正の値を取る確率は、 \begin{align} P= \left(\frac{1}{2}\right)^n \end{align} 帰無仮説が有意水準5%で棄却されるためには、この確率が0.05よりも小さな値になれなければならないので、 \begin{gather} \left(\frac{1}{2}\right)^4=0.0625 \gt 0.05\\ \left(\frac{1}{2}\right)^5=0.03125 \lt 0.05 \end{gather} したがって、サンプルサイズは、最低でも \begin{align} 5 \le n \end{align} でなければならない。 $\blacksquare$
〔2〕棄却限界値の導出
まず、$z_i$ の正負の組み合わせは、全部で $2^7$ 通り存在し、帰無仮説の下で、どのパターンも同様に確からしい。
帰無仮説を棄却する場合の数の総数を $a$ 通りとすると、
\begin{gather}
\frac{1}{2^7} \cdot a \le 0.05\\
a \le 128 \cdot 0.05=6.4
\end{gather}
検定統計量 $T$ の値の最大値は、すべてが正の値の場合であるとき
\begin{align}
T=1+2+ \cdots +7=28
\end{align}
検定統計量 $T$ の値を数え上げていくと、
$T=28$ は、$ \left\{1,2,3,4,5,6,7\right\}$ の1通り
$T=27$ は、$ \left\{2,3,4,5,6,7\right\}$ の1通り
$T=26$ は、$ \left\{1,3,4,5,6,7\right\}$ の1通り
$T=25$ は、$ \left\{1,2,4,5,6,7\right\}, \left\{3,4,5,6,7\right\}$ の2通り
$T=24$ は、$ \left\{1,2,3,5,6,7\right\}, \left\{2,4,5,6,7\right\}$ の2通り
したがって、
\begin{gather}
P \left(24 \le T\middle| H_0\right)=\frac{7}{2^7}\cong0.055\\
P \left(25 \le T\middle| H_0\right)=\frac{5}{2^7}\cong0.039
\end{gather}
したがって、棄却限界値と有意確率は、それぞれ、
\begin{gather}
c=25\\
p=0.039
\end{gather}
$\blacksquare$
〔3〕検定統計量の期待値と分散
$z_i$ が正の値を取るか否かを以下のようなベルヌーイ試行と考え、
\begin{gather}
\delta_i= \left\{\begin{matrix}0&z_i \lt 0\\1&0 \lt z_i\\\end{matrix}\right.\\
P \left(\delta_i=0\right)=P \left(\delta_i=1\right)=\frac{1}{2}
\end{gather}
$i$ を $z_i$ の絶対値の順位とすると、検定統計量を以下のように定義することもできる。
\begin{gather}
R_i=i \cdot \delta_i\\
T=\sum_{i=1}^{n}R_i
\end{gather}
(i)期待値
確率変数 $R_i$ について、期待値の定義式 $E \left(X\right)=\sum_{x=-\infty}^{\infty}{x \cdot f \left(x\right)}$ より、
\begin{align}
E \left(R_i\right)&=i \left\{0 \cdot P \left(\delta_i=0\right)+1 \cdot P \left(\delta_i=1\right)\right\}\\
&=\frac{i}{2}
\end{align}
検定統計量 $T$ の期待値は、期待値の性質 $E \left(\sum_{i=1}^{n}X_i\right)=\sum_{i=1}^{n}E \left(X_i\right)$ より、
\begin{align}
E \left(T\right)&=\sum_{i=1}^{n}E \left(R_i\right)\\
&=\frac{1}{2}\sum_{i=1}^{n}i
\end{align}
自然数の和の公式 $\sum_{k=1}^{n}k=\frac{n \left(n+1\right)}{2}$ より、
\begin{align}
E \left(T\right)&=\frac{1}{2} \cdot \frac{n \left(n+1\right)}{2}\\
&=\frac{n \left(n+1\right)}{4}
\end{align}
(ii)分散
2乗の期待値の定義式 $E \left(X\right)=\sum_{x=-\infty}^{\infty}{x^2 \cdot f \left(x\right)}$ より、
\begin{align}
E \left(R_i^2\right)&=i \left\{0^2 \cdot P \left(\delta_i=0\right)+1^2 \cdot P \left(\delta_i=1\right)\right\}\\
&=\frac{i^2}{2}
\end{align}
分散の公式 $V \left(R_i\right)=E \left(R_i^2\right)- \left\{E \left(R_i\right)\right\}^2$ より、
\begin{align}
V \left(R_i\right)&=\frac{i^2}{2}-\frac{i^2}{4}\\
&=\frac{i^2}{4}
\end{align}
確率変数が互いに独立なとき、分散の性質 $V \left(\sum_{i=1}^{n}X_i\right)=\sum_{i=1}^{n}V \left(X_i\right)$ より、
\begin{align}
V \left(T\right)&=\sum_{i=1}^{n}\frac{i^2}{4}\\
&=\frac{1}{4}\sum_{i=1}^{n}i^2
\end{align}
自然数の2乗和の公式 $\sum_{k=1}^{n}k^2=\frac{n \left(n+1\right) \left(2n+1\right)}{6}$ より、
\begin{align}
V \left(T\right)&=\frac{1}{4} \cdot \frac{n \left(n+1\right) \left(2n+1\right)}{6}\\
&=\frac{n \left(n+1\right) \left(2n+1\right)}{24}
\end{align}
$\blacksquare$
〔4〕検定統計量の正規近似
検定統計量 $T$ は漸近的に、 \begin{align} T \sim \mathrm{N} \left[\frac{n \left(n+1\right)}{4},\frac{n \left(n+1\right) \left(2n+1\right)}{24}\right] \end{align} $n=7$ のときは、 \begin{align} T \sim \mathrm{N} \left(14,35\right) \end{align} 標準化した値を \begin{align} Z=\frac{T-14}{\sqrt{35}} \end{align} とすると、 \begin{align} Z \sim \mathrm{N} \left(0,1\right) \end{align} 棄却限界値を求めると、 \begin{gather} P \left(c \le T\right)=0.05\\ P \left(\frac{c-14}{\sqrt{35}} \le \frac{T-14}{\sqrt{35}}\right)=0.05\\ P \left(\frac{c-14}{\sqrt{35}} \le Z\right)=0.05\\ \frac{c-14}{\sqrt{35}}=z_{0.05} \end{gather} 標準正規分布表より、$z_{0.05}=1.64$ なので、 \begin{gather} \frac{c-14}{\sqrt{35}}=1.64\\ c=14+1.64 \cdot \sqrt{35}\\ c\cong23.70 \end{gather} $c$ は整数値なので、 \begin{gather} c \geq 24 \end{gather} $\blacksquare$
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