統計検定 1級 2016年 統計数理 問1 正規分布の最尤推定

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【2023年5月5週】 【B000】数理統計学 【D000】統計検定 過去問

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本稿には、2016年に実施された統計検定1級『統計数理』 問1の自作解答案を掲載しています。なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。

  • 著作権の関係上、問題文は、掲載することができません。申し訳ありませんが、閲覧者のみなさまでご用意いただければ幸いです。
  • この答案は、あくまでも筆者が自作したものであり、公式なものではありません。正式な答案については、公式問題集をご参照ください。
  • 計算ミスや誤字・脱字などがありましたら、コメントなどでご指摘いただければ大変助かります。
  • スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。

〔1〕最尤推定量の導出

尤度関数 L(θ) を求めると、 L(μ)=i=1n12πe(xiμ)22=(12π)nexp{12i=1n(xiμ)2} 対数尤度関数 l(θ)=logL(θ) を求めると、 l(μ,σ2)=log[(12π)nexp{12i=1n(xiμ)2}]=n2log2π12i=1n(xiμ)2 パラメータ μ に関するスコア関数 S(θ)=μlogL(θ) を求めると、 S(μ)=12{i=1n2(xiμ)ddμ(μ)}=i=1n(xiμ)=i=1nxinμ 尤度方程式 S(θ)=0 を解くと、 0=i=1nxinμ^nμ^=i=1nxiμ^=1ni=1nxiμ^=X¯ 最尤推定量の不偏性により、 θ^=eμ^=eX¯

〔2〕最尤推定量バイアス

正規分布 N(μ,1) のモーメント母関数は、 MX(t)=exp(μt+t22) 正規分布の標本平均 X¯ の従う分布とモーメント母関数は、 X¯N(μ,1n)MX¯(t)=E(etX¯)=exp(μt+t22n) 最尤推定量 θ^ の期待値は、 E(θ^)=E(eX¯) 標本平均のモーメント母関数に t=1 を代入すると、 E(θ^)=exp(μ+12n) したがって、バイアス B=E(θ^)θ は、 B=eμ+12neμ=eμ(e12n1) ここで、0<12n であり、単調増加関数である指数関数は、 0<x1<ex したがって、 B=eμ(e12n1)>0 つまり、バイアスの符号は正となる。

また、θ~ の期待値を求めると、 E(θ~)=E(eX¯12n)=e12nE(eX¯)=e12neμ+12n=eμ=θ したがって、θ~θ の不偏推定量である。

〔3〕最尤推定量の平均二乗誤差

定義に沿って、平均二乗誤差を求めると、 MSE(θ^)=E[(θ^θ)2]=E(θ^22θθ^+θ2)=E(θ^2)2E(θθ^)+E(θ2)=E(e2X¯)2E(eX¯eμ)+E(e2μ)=E(e2X¯)2eμE(eX¯)+e2μ 〔2〕の結果から、 MSE(θ^)=E(e2X¯)2e2μ+12n+e2μ ここで、標本平均のモーメント母関数に t=2 を代入すると、 E(e2x¯)=exp(2μ+2n) よって、最尤推定量 θ^ の平均二乗誤差は、 MSE(θ^)=e2μ+2n2e2μ+12n+e2μ=e2μ(e2n2e12n+1) したがって、n のときの極限を取ると、 limnMSE(θ^)=e2μ(e02e0+1)=e2μ(12+1)=0

〔4〕フィッシャー情報量

〔1〕の結果から、フィッシャー情報量の定義式 In(θ)=E[{S(θ)}2] より、 In(θ)=E[{nθ(X¯logθ)}2]=E[n2θ2{X¯22X¯logθ+(logθ)2}]=n2θ2{E(X¯2)2logθE(X¯)+(logθ)2} ここで、分散の公式の変形 E(X¯2)=V(X¯)+{E(X¯)}2 より、 E(X¯2)=μ2+1n したがって、 In(θ)=n2θ2(μ2+1n2μ2+μ2)=n2θ21n=nθ2 次に、θ~ の分散について、分散の公式より、 V(θ~)=E(θ~2){E(θ~)}2 ここで、 θ~2=exp[2(X¯12n)]=exp(2X¯1n) 両辺の期待値を取ると、 E(θ~2)=e1nE(e2X¯) ここで、標本平均のモーメント母関数に t=2 を代入すると、 E(e2X¯)=e2μ+2n よって、 E(θ~2)=e2μ+2ne1n=e2μ+1n 〔2〕の結果 E(θ~)=eμ より、 V(θ~)=e2μ+1ne2μ=e2μ(e1n1)=θ2(e1n1) ここで、0<x において、次の関数を考えると、 f(x)=ex1xf(0)=e010=0f(x)=ex1>0 よって、f(x) は、0<x において、単調増加関数なので、 ex1>x したがって、x=1n と考えると、 V(θ~)=θ2(e1n1)>θ2n=1In(θ) すなわち、θ~ の分散はクラメール・ラオの下限と一致しない(クラメール・ラオの下限よりも大きい)。

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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