生存時間分布のパラメトリックモデル④:対数ロジスティック分布モデル

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【2022年12月1週】 【A000】生物統計学 【A051】コホート研究 【A100】生存時間分析 【A101】生存関数の推定

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本稿では、生存時間分布のパラメトリックモデルのひとつである対数ロジスティック分布モデルについて重要事項をまとめています。

なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。

  • スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。
  • 曝露(発症)状況を表す右下の添え字は、「0」である場合(n0,π0 など)や「2」である場合(n2,π2 など)がありますが、どちらも「非曝露群(コントロール群)」を表しています。
  • 漸近的な性質を用いる際は、①中心極限定理が成り立つ、②漸近分散を推定する際に、母数をその一致推定量で置き換えることができるということが成り立つと仮定しています。

生存時間分布の対数ロジスティック分布モデル

ハザード関数が、率パラメータ μ、形状パラメータ γ、時間 t の関数 λ(t)=μγtγ11+μtγ0<μ0<γ となるモデルを対数ロジスティック分布モデル Log-Logistic Distribution Models と呼ぶ。 累積ハザード関数、生存関数、イベント分布関数、イベント密度関数は、 Λ(t)=log(1+μtγ)S(t)=11+μtγF(t)=μtγ1+μtγf(t)=μγtγ1(1+μtγ)2 で与えられる。 なお、率パラメータを共変量ベクトルの関数 μ=exp(α+xTβ) とすることもある。

証明:生存関数①

証明

累積ハザード関数 Λ(t)=0tλ(u)du は、 Λ(t)=0tμγuγ11+μuγdu=[log(1+μuγ)]0t=log(1+μtγ) 累積ハザード関数と生存関数の関係 S(t)=exp{Λ(t)} より、 S(t)=exp{log(1+μtγ)}=11+μtγ イベント累積分布関数の定義 F(t)=1S(t) より、 F(t)=111+μtγ=μtγ1+μtγ イベント発生の確率密度関数、ハザード関数、生存関数の関係より、 f(t)=λ(t)S(t)=μγtγ11+μtγ11+μtγ=μγtγ1(1+μtγ)2

【定理】死亡・生存オッズ比

【定理】
死亡・生存オッズ比
Odds Ratios

同じ形状パラメータ γ をもち、異なる率パラメータ μ1μ2 をもつ2群の生存分布は、比例死亡オッズと比例生存オッズをもち、それらは、以下で与えられる。 ORD=μ1μ2ORS=μ2μ1

証明:死亡・生存オッズ比

証明

オッズの定義より、各群の時点 t におけるイベント発生オッズは、π=Fi(t),i=1,2 として、 Od1=F1(t)1F1(t)=μ1tγ1+μ1tγ(1+μ1tγ)=μ1tγOd2=F2(t)1F2(t)=μ2tγ1+μ2tγ(1+μ2tγ)=μ2tγ したがって、オッズ比の定義より、イベント発生オッズ比は、 ORD=μ1tγμ2tγ=μ1μ2 同様に、生存オッズ比は、 Od1=S1(t)1S1(t)=1+μ1tγμ1tγ11+μ1tγ=1μ1tγOd2=S2(t)1S2(t)=1+μ2tγμ2tγ11+μ2tγ=1μ2tγ ORS=1μ1tγ1μ2tγ=μ2μ1

【定義】対数ロジスティック・モデル:率パラメータが共変量の関数であるとき

【定義】
対数ロジスティック・モデル:率パラメータが共変量の関数であるとき
Log-Logistic Regression Models: When Scale Parameter Depends on Covariates

対数ロジスティック比例オッズモデルを共変量ベクトル x の関数として一般化し、 μ=exp(α+xTβ) であるとする。 このとき、共変量ベクトル x をもつ被験者のハザード関数、イベント密度関数、生存関数は、 λ(t|x)=exp(α+xTβ)γtγ11+exp(α+xTβ)tγf(t|x)=exp(α+xTβ)γtγ1{1+exp(α+xTβ)tγ}2S(t|x)=11+exp(α+xTβ)tγ

証明:生存関数②

証明

ハザード関数、イベント密度関数、生存関数の式に、μ=exp(α+xTβ) を代入すると、 λ(t|x)=exp(α+xTβ)γtγ11+exp(α+xTβ)tγf(t|x)=exp(α+xTβ)γtγ1{1+exp(α+xTβ)tγ}2S(t|x)=11+exp(α+xTβ)tγ

【命題】偏回帰係数とオッズ比の関係

【命題】
偏回帰係数とオッズ比の関係
Relationship between Partial Regression Coefficients and Odds Ratios

係数 eβi は、i 番目の共変量 xi の1単位増加に対する死亡オッズ比と等しく、また、eβi は生存オッズ比と等しい。

証明:偏回帰係数とオッズ比の関係

証明

オッズ比の式に、μ=exp(α+xTβ) を代入すると、 ORD=eαex1β1e(xi+1)βiexkβkeαex1β1exiβiexkβk=eβiORS=eαex1β1exiβiexkβkeαex1β1e(xi+1)βiexkβk=eβi

【定理】対数時間のイベント密度関数・生存関数

【定理】
対数時間のイベント密度関数・生存関数
Event density function and Survival Function of Log-time

Y=logT と変数変換した後のハザード関数、イベント密度関数、生存関数は、 λ(y)=γμeyγ1+μeyγf(y)=γμeyγ(1+μeyγ)2S(y)=11+μeyγ

証明:対数時間のイベント密度関数・生存関数

証明

対数変換の公式 Y=logXg(y)=f(ey)ey より、 f(y)=μγey(γ1)(1+μeyγ)2ey=γμeyγ(1+μeyγ)2 同様に、ハザード関数は、 λ(y)=μγey(γ1)1+μeyγey=γμeyγ1+μeyγ イベント密度関数、ハザード関数、生存関数の関係より、 S(y)=f(y)λ(y)=γμeyγ(1+μeyγ)21+μeyγγμeyγ=11+μeyγ

【定理】対数時間の共変量条件付き分布

【定理】
対数時間の共変量条件付き分布
Conditional Distributions of Log-time

比例オッズモデルパラメータを μ=exp(α~+xTβ~σ)γ=1σ とするとき、 共変量ベクトル x をもつ被験者のハザード関数、イベント密度関数、生存関数は、 λ(y|x)=1σexp{y(α~+xTβ~)σ}1+exp{y(α~+xTβ~)σ}f(y|x)=1σexp{y(α~+xTβ~)σ}[1+exp{y(α~+xTβ~)σ}]2S(y|x)=11+exp{y(α~+xTβ~)σ} また、変数変換した確率変数 ε=y(α~+xTβ~)σ の確率密度関数は、 以下のロジスティック分布となる。 f(ε)=eε(1+eε)2

証明:条件付きイベント密度関数

証明

イベント発生の確率密度関数の式に、μ=exp(α+xTβ) を代入すると、 f(t|x)=exp(α~+xTβ~σ)γtγ1{1+exp(α~+xTβ~σ)tγ}2=1σexp(α~+xTβ~σ)exp{(1σ1)logt}[1+exp(α~+xTβ~σ)exp{1σlogt}]2=1σexp{logt(α~+xTβ~)σ}[1+exp{logt(α~+xTβ~)σ}]2exp(logt) 対数変換の公式 Y=logXg(y)=f(ey)ey より、 f(y|x)=1σexp{y(α~+xTβ~)σ}[1+exp{y(α~+xTβ~)σ}]2exp(y)exp(y)=1σexp{y(α~+xTβ~)σ}[1+exp{y(α~+xTβ~)σ}]2 同様に、ハザード関数は、 λ(y|x)=1σexp{y(α~+xTβ~)σ}1+exp{y(α~+xTβ~)σ}exp(y)exp(y)=1σexp{y(α~+xTβ~)σ}1+exp{y(α~+xTβ~)σ}

証明:条件付き生存関数

証明

イベント密度関数、ハザード関数、生存関数の関係より、 S(y|x)=f(y|x)λ(y|x)=1σexp{y(α~+xTβ~)σ}[1+exp{y(α~+xTβ~)σ}]2σ1+exp{y(α~+xTβ~)σ}exp{y(α~+xTβ~)σ}=11+exp{y(α~+xTβ~)σ} *このことから、比例死亡オッズモデルないしは比例生存オッズモデルのパラメータは、加速死亡時間モデルから得ることができる。

証明:残差の確率密度関数

証明

線形変換の公式 Y=aX+bg(y)=f(yba)1a より、ε の確率密度関数は、 f(ε)=1σexp(ε)[1+exp(ε)]2σ=eε(1+eε)2 *このことから、対数線形モデルの誤差はロジスティック分布に従い、ハザード関数は対数ロジスティック密度に一致する。

参考文献

  • ジョン・ラチン 著, 宮岡 悦良 監訳, 遠藤 輝, 黒沢 健, 下川 朝有, 寒水 孝司 訳. 医薬データのための統計解析. 共立出版, 2020, p.560-562

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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