ジョン・ラチン(2020)『医薬データのための統計解析』 問題9.10 解答例

公開日:

【2022年12月3週】 【A000】生物統計学 【A100】生存時間分析 【A102】ログランク検定

この記事をシェアする
  • B!
サムネイル画像

本稿は、ジョン・ラチン(2020)『医薬データのための統計解析』の「問題9.10」の自作解答例です。比例オッズモデルに対する重み付けマンテル・ヘンツェル検定に関する問題です。

なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。

  • スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。
  • 曝露(発症)状況を表す右下の添え字は、「0」である場合(n0,π0 など)や「2」である場合(n2,π2 など)がありますが、どちらも「非曝露群(コントロール群)」を表しています。
  • 漸近的な性質を用いる際は、①中心極限定理が成り立つ、②漸近分散を推定する際に、母数をその一致推定量で置き換えることができるということが成り立つと仮定しています。
  • 著作権の関係上、問題文は、掲載しておりません。上述の参考書をお持ちの方は、お手元にご用意してご覧ください。
  • この解答例は、筆者が自作したものであり、公式なものではありません。あくまでも参考としてご覧いただければ幸いです。

問題9.10.1:比例オッズ性

λ(t,x)=α0(t)+xTβ とすると、 1S(t|x)=111+eλ(t,x)=eλ(t,x)1+eλ(t,x) このとき、生存オッズは、 OS=S(t|x)1S(t|x)=11+eλ(t,x)1+eλ(t,x)eλ(t,x)=eλ(t,x) 共変量の値 x1,x2 をもった2名の被験者に対する生存オッズ比は、 ORS=OS1OS2=eλ(t,x1)eλ(t,x2)=eα0(t)ex1Tβeα0(t)ex2Tβ=ex1Tβex2Tβ ex1Tβ,ex2Tβ はともに定数なので、 ORS=c すなわち、生存オッズは、時聞経過を通じて比例している。

問題9.10.2:イベント時間の分布関数

F(t|x)=1S(t|x)=eλ(t,x)1+eλ(t,x) これは、 x=α0(t)+xTβ としたロジスティック関数である。

問題9.10.3:ハザード比

累積ハザード関数と生存関数の関係 Λ(t)=logS(t) より、 Λ(t)=log{1+eα0(t)+xTβ} 累積ハザード関数とハザード関数の関係 λ(t)=ddtΛ(t) より、 λ(t)=eα0(t)+xTβα0(t)1+eα0(t)+xTβ よって、共変量の値 x1,x2 をもった2名の被験者に対するハザード比は、 λ(t|x2)λ(t|x1)=eα0(t)+x2Tβα0(t)1+eα0(t)+x2Tβ1+eα0(t)+x1Tβeα0(t)+x1Tβα0(t)=eα0(t)+x2Tβ1+eα0(t)+x2Tβ1+eα0(t)+x1Tβeα0(t)+x1Tβ いっぽう、イベントの累積分布関数の比は、 F(t|x2)F(t|x1)=eα0(t)+x2Tβ1+eα0(t)+x2Tβ1+eα0(t)+x1Tβeα0(t)+x1Tβ よって、 λ(t|x2)λ(t|x1)=F(t|x2)F(t|x1)

問題9.10.4:帰無仮説の下での対数ハザード比

帰無仮説の下で、 H(β0)=log11=0 帰無値 β0 の周りでテイラー展開 f(x)=f(a)+f(a)(xa)+f(a)2!(xa)2+ すると、 H(β)H(β0)+H(β0)(ββ0)H(β0)(ββ0)

問題9.10.5:帰無仮説の下での対数ハザード比

いっぽう、λ(t|x2)λ(t|x1)=F(t|x2)F(t|x1) より、 H(β)=logF(t|x=1)F(t|x=0)=logF(t|x=1)logF(t|x=0)=log{eα0(t)+β1+eα0(t)+β}log{eα0(t)1+eα0(t)}=α0(t)+βlog{1+eα0(t)+β}α0(t)+log{1+eα0(t)}=βlog{1+eα0(t)+β}+log{1+eα0(t)} この関数の1階微分 H(β)=ddβH(β) を求めると、 H(β)=1eα0(t)+β1+eα0(t)+β=1F(t|x=1) ここに、帰無仮説における値 β=β0 を代入すると、 H(β0)=1F0(t) したがって、テイラー展開の結果と合わせて考えると、 H(β)=logλ(t|x=1)λ(t|x=0)=(ββ0){1F0(t)}=g[F0(t)]

問題9.10.6:Peto-Peto-Prenticeウィルコクソン検定

得られた結果を任意の時点 t における重みとみなし、 w(t)=g[F^(t)]=1F^(t)=S^(t) として、 マンテル・ヘンツェル検定統計量の公式 χWMH2=[j=1Jw(t){ajE(aj|H0)}]2j=1J[w(t)]2Ve(aj|H0) に代入すると、 Peto-Peto-Prenticeの一般化ウィルコクソン検定の検定統計量が得られる。

参考文献

  • ジョン・ラチン 著, 宮岡 悦良 監訳, 遠藤 輝, 黒沢 健, 下川 朝有, 寒水 孝司 訳. 医薬データのための統計解析. 共立出版, 2020, p.566-567

関連記事

自己紹介

自分の写真

yama

大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

このブログを検索

ブログ アーカイブ

QooQ