算術平均、幾何平均、調和平均の関係

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【2022年12月2週】 【C000】数学 【C010】方程式と関数

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本稿では、算術平均、幾何平均、調和平均の関係を証明しています。

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【命題】算術平均、幾何平均、調和平均の関係

【命題】
算術平均、幾何平均、調和平均の関係
Relationship among Means

正の値のみをとる $n$ 個の実数 $X_1,X_2, \cdots ,X_n$ に対して、算術平均、幾何平均、調和平均の間に \begin{gather} \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}X_i \geq \sqrt[n]{X_1 \cdot X_2 \cdots X_n} \geq \frac{n}{\sum_{i=1}^{n}\frac{1}{X_i}} \end{gather} が成り立つ。

等号は、 \begin{gather} X_1=X_2= \cdots =X_n \end{gather} のときのみに成り立つ。

証明

証明

[1]算術平均と幾何平均の関係
題意が成り立つことを任意の正の整数 $n$ に関する数学的帰納法によって示す。

[1-a]$n=1$ のとき \begin{gather} X_1=X_1 \end{gather} なので、与式は成立する。

[1-b]$n=k$ のときに与式が成り立つと仮定したとき、すなわち、 \begin{gather} \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}X_i \geq \sqrt[n]{X_1 \cdot X_2 \cdots X_n} \end{gather} としたときに、$n=k+1$ のときについて考える。

$X_1,X_2, \cdots ,X_n$ の対称性により、$X_1 \le X_2 \le \cdots \le X_{k+1}$ としても一般性を失わない。ここで、 \begin{gather} f \left(x\right)= \left(\frac{X_1+X_2+ \cdots +X_k+x}{k+1}\right)^{k+1}-X_1 \cdot X_2 \cdots X_kx \end{gather} とおき、$x$ で微分すると、 \begin{align} f^\prime \left(x\right)&= \left(k+1\right) \left(\frac{X_1+X_2+ \cdots +X_k+x}{k+1}\right)^k\frac{1}{k+1}-X_1 \cdot X_2 \cdots X_k\\ &= \left(\frac{X_1+X_2+ \cdots +X_k+x}{k+1}\right)^k-X_1 \cdot X_2 \cdots X_k \end{align} さらに微分すると、 \begin{align} f^{\prime\prime} \left(x\right)=\frac{k}{k+1} \left(\frac{X_1+X_2+ \cdots +X_k+x}{k+1}\right)^{k-1} \end{align} この式は、$1 \le k=1$ のとき、$0 \le x$ ならば、 \begin{gather} 0 \lt X_1+X_2+ \cdots +X_k+x \end{gather} なので、 \begin{gather} 0 \lt f^{\prime\prime} \left(x\right) \end{gather} となる。 よって、$f^\prime \left(x\right)$ は、区間 \begin{gather} 0 \le x \end{gather} において単調増加である。

また、$Y_k=\frac{X_1+X_2+ \cdots +X_k}{k}$ とすると、 \begin{gather} \frac{X_1+X_2+ \cdots +X_k+Y_k}{k+1}=\frac{kY_k+Y_k}{k+1}=Y_k \end{gather} これと、帰納法の仮定 $Y_k \geq \sqrt[k]{X_1 \cdot X_2 \cdot \cdots \cdot X_k}$ から、 \begin{gather} f^\prime \left(Y_k\right)=Y_k^k-X_1 \cdot X_2 \cdot \cdots \cdot X_k \geq 0 \end{gather} $0 \lt Y_k$ であり、区間 $0 \le x$ において $f^\prime \left(x\right)$ は単調増加であるから、区間 \begin{gather} Y_k \le x \end{gather} において \begin{gather} 0 \le f^\prime \left(x\right) \end{gather} が成り立つ。 また、 \begin{gather} f \left(Y_k\right)=Y_k^{k+1}-X_1 \cdot X_2 \cdots X_k \cdot Y_k=f^\prime \left(Y_k\right) \cdot Y_k \geq 0 \end{gather} したがって、$Y_k \le x$ となるすべての実数 $x$ について、 \begin{gather} 0 \le f \left(x\right) \end{gather} が成り立つ。 ここで、冒頭の仮定 $X_1 \le X_2 \le \cdots \le X_{k+1}$ より、 \begin{gather} X_{k+1}=\frac{k}{k}X_{k+1} \geq \frac{X_1+X_2+ \cdots +X_k}{k}=Y_k \end{gather} したがって、 \begin{gather} 0 \le f \left(X_{k+1}\right) \end{gather} が成り立つ。 $f \left(X_{k+1}\right)=0$ が成り立つとすると、区間 $Y_k \lt x$ において、 \begin{gather} 0 \lt f^\prime \left(x\right) \quad 0 \lt f \left(x\right) \end{gather} だから、 \begin{gather} X_{k+1}=Y_k \quad f \left(Y_k\right)=0 \end{gather} でなければならない。 よって、 \begin{gather} f \left(Y_k\right)=0 \quad f \left(Y_k\right)=f^\prime \left(Y_k\right) \cdot Y_k \quad 0 \lt Y_k\\ \Leftrightarrow f^\prime \left(Y_k\right)=0 \end{gather} これと \begin{gather} f^\prime \left(Y_k\right)=Y_k^k-X_1 \cdot X_2 \cdots X_k \end{gather} と帰納法の仮定 \begin{gather} Y_k \geq \sqrt[k]{X_1 \cdot X_2 \cdots X_k} \end{gather} から、 \begin{gather} X_1=X_2= \cdots =X_k \end{gather} が成り立つ。 さらに、$X_{k+1}=Y_k$ より、 \begin{gather} X_1=X_2= \cdots =X_k=X_{k+1} \end{gather} となる。 逆に、この条件が成り立つとき、 \begin{gather} f \left(X_{k+1}\right)=0 \end{gather} となる。

以上より、数学的帰納法により、すべての正の整数 $n$ について \begin{gather} \sqrt[n]{X_1 \cdot X_2 \cdot \cdots \cdot X_k} \le \frac{X_1+X_2+ \cdots +X_n}{n} \end{gather} が成り立つ。

[2]幾何平均と調和平均の関係
$X_1,X_2, \cdots ,X_n$ に対して、[1]の結果を適用すると、 \begin{gather} \frac{1}{n} \left(\frac{1}{X_1}+\frac{1}{X_2}+ \cdots +\frac{1}{X_n}\right) \geq \sqrt[n]{\frac{1}{X_1} \cdot \frac{1}{X_2} \cdots \frac{1}{X_n}}=\frac{1}{\sqrt[n]{X_1 \cdot X_2 \cdots X_n}} \end{gather} $0 \lt X_1,X_2, \cdots ,X_n$ なので、 \begin{gather} 0 \lt \frac{1}{n} \left(\frac{1}{X_1}+\frac{1}{X_2}+ \cdots +\frac{1}{X_n}\right) \quad 0 \lt \frac{1}{\sqrt[n]{X_1 \cdot X_2 \cdot \cdots \cdot X_n}} \end{gather} したがって、逆数を取ると、 \begin{gather} \sqrt[n]{X_1 \cdot X_2 \cdots X_n} \geq \frac{1}{\frac{1}{n} \left(\frac{1}{X_1}+\frac{1}{X_2}+ \cdots +\frac{1}{X_n}\right)} \end{gather} が成り立つ。 また、[1]より、等号が成立するのは、 \begin{gather} \frac{1}{X_1}=\frac{1}{X_2}= \cdots =\frac{1}{X_n}\Leftrightarrow X_1=X_2= \cdots =X_n \end{gather} のときに限る。

[1]、[2]より、 算術平均、幾何平均、調和平均の間には、 \begin{gather} \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}X_i \geq \sqrt[n]{X_1 \cdot X_2 \cdot \cdots \cdot X_n} \geq \frac{n}{\sum_{i=1}^{n}\frac{1}{X_i}} \end{gather} が成り立つ。 $\blacksquare$

参考文献

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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