本稿では、関数の増減の判定を紹介しています。
なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。
- スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。
導関数の符号と関数の増減
【定理】
導関数の符号と関数の増減
Sign of Derivative and Increase and Decrease of Functions
関数 $f$ は区間 $I$ で連続、$I$ の内部で微分可能であるとき、$I$ の内部で常に
①
\begin{gather}
0 \lt f^\prime \left(x\right)
\end{gather}
ならば、$f$ は区間 $I$ で増加する。
②
\begin{gather}
f^\prime \left(x\right) \lt 0
\end{gather}
ならば、$f$ は区間 $I$ で減少する。
③
\begin{gather}
f^\prime \left(x\right)=0
\end{gather}
ならば、$f$ は区間 $I$ で定数である。
証明
区間 $I$ の内部に $x_1 \lt x_2$ をみたす任意の $x_1,x_2$ をとると、平均値の定理より \begin{gather} \frac{f \left(x_2\right)-f \left(x_1\right)}{x_2-x_1}=f^\prime \left(c\right) \quad x_1 \lt c \lt x_2 \end{gather} をみたす $c$ が存在する。 したがって、 \begin{gather} f \left(x_2\right)-f \left(x_1\right)=f^\prime \left(c\right) \left(x_2-x_1\right)\tag{1} \end{gather}
[I]単調増加
仮定より
\begin{gather}
x_2-x_1 \gt 0\\
f^\prime \left(c\right) \gt 0
\end{gather}
したがって、式 $(1)$ より、
\begin{gather}
f \left(x_2\right)-f \left(x_1\right)=f^\prime \left(c\right) \left(x_2-x_1\right) \gt 0\\
f \left(x_2\right) \gt f \left(x_1\right)
\end{gather}
したがって、与えられた仮定が満たされるとき、$f \left(x\right)$ は区間 $I$ で単調に増加する。
$\blacksquare$
[II]単調減少
仮定より
\begin{gather}
x_2-x_1 \gt 0\\
f^\prime \left(c\right) \lt 0
\end{gather}
したがって、式 $(1)$ より、
\begin{gather}
f \left(x_2\right)-f \left(x_1\right)=f^\prime \left(c\right) \left(x_2-x_1\right) \lt 0\\
f \left(x_2\right) \lt f \left(x_1\right)
\end{gather}
したがって、与えられた仮定が満たされるとき、$f \left(x\right)$ は区間 $I$ で単調に減少する。
$\blacksquare$
[III]定数
仮定より
\begin{gather}
x_2-x_1 \gt 0\\
f^\prime \left(c\right)=0
\end{gather}
したがって、式 $(1)$ より、
\begin{gather}
f \left(x_2\right)-f \left(x_1\right)=f^\prime \left(c\right) \left(x_2-x_1\right)=0\\
f \left(x_2\right)=f \left(x_1\right)
\end{gather}
したがって、与えられた仮定が満たされるとき、$f \left(x\right)$ は区間 $I$ で定数である。
$\blacksquare$
定理の系
定理の系
ある区間 $I$ で2つの関数 $F,G$ が微分可能で、$I$ のすべての点 $x$ に対し、 \begin{gather} F^\prime \left(x\right)=G^\prime \left(x\right) \end{gather} が成り立つとする。 このとき、$I$ のすべての点 $x$ に対し、 \begin{gather} G \left(x\right)=F \left(x\right)+C \end{gather} を満たす定数 $C$ が存在する。
証明
仮定より、$F^\prime \left(x\right)=G^\prime \left(x\right)$ なので、差の導関数は、 \begin{gather} \left\{G \left(x\right)-F \left(x\right)\right\}^\prime=G^\prime \left(x\right)-F^\prime \left(x\right)=0 \end{gather} したがって、差 \begin{gather} G \left(x\right)-F \left(x\right) \end{gather} は区間 $I$ で定数である。 その定数を $C$ とすると \begin{gather} G \left(x\right)-F \left(x\right)=C\\ G \left(x\right)=F \left(x\right)+C \end{gather} $\blacksquare$
増減表
例えば、
\begin{gather}
f \left(x\right)=x^3-3x+1
\end{gather}
について
1階微分を求めると
\begin{gather}
f^\prime \left(x\right)=3x^2-3=3 \left(x+1\right) \left(x-1\right)
\end{gather}
したがって、
区間$ \quad x \lt -1 \quad $では、$f^\prime \left(x\right) \gt 0$
区間$ \quad -1 \lt x \lt 1 \quad $では、$f^\prime \left(x\right) \lt 0$
区間$ \quad 1 \lt x \quad $では、$f^\prime \left(x\right) \gt 0$
これを表にまとめると以下のようになる。
\begin{array}{c|ccccc}
x & \cdots & -1 & \cdots & 1 & \cdots \\ \hline
f^\prime \left(x\right) & + & 0 & - & 0 & + \\ \hline
f \left(x\right) & \nearrow & 3 & \searrow & -1 & \nearrow \\
\end{array}
このような表のことを増減表 derivative sign chart という。表の中の $\nearrow$ は増加を、$\searrow$ は減少を表している。一般に関数の増減について調べるときは、増減表を作ると便利である。
極大点・極小点との関係
関数 $f$ が微分可能である区間内の1点 $c$ において \begin{gather} f^\prime \left(c\right)=0 \end{gather} で、$x$ が増加しながら $c$ を通過するとき、 $f^\prime \left(x\right)$ の値が正から負に変わるならば、 $x=c$ は $f$ の極大点 である。 $f^\prime \left(x\right)$ の値が負から正に変わるならば、 $x=c$ は $f$ の極小点 である。 実際上、これが関数の極値を求めるための基本的な判定法となっている。なお、$f^\prime \left(c\right)=0$ であっても、$x=c$ の前後で $f^\prime \left(x\right)$ の符号が変わらなければ、$f^\prime \left(c\right)$ は極値ではない。
参考文献
- 松坂 和夫 著. 数学読本 5. 新装版, 岩波書店, 2019, p.908-912
0 件のコメント:
コメントを投稿