行列式

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【2022年12月3週】 【C000】数学 【C080】線形代数

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本稿では、行列式を紹介しています。

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順列

1 から n までの自然数 1,2,,n を適当な順番で横一列に並べた (p1p2pn) を長さ n順列という。

順列の転倒数

1 から n までの自然数を左から小さい順に並べた長さ n の順列 (12n) では、その中のどの2つの数字を取り出しても必ず右の数字の方が大きい。

一般に、長さ n の順列において、2つの数字を取り出したとき、右の数字の方が小さいならばその2つの数字のペアは転倒しているという。すなわち、左から i 番目と j 番目にある2つの数字 pipj を取り出すとき i<jであるのに、pi>pj であるならば、 pipj は転倒している。 長さ n の順列の中にある転倒しているペアの総数をその順列の転倒数 inversion number という。

順列の符号

転倒数が r の順列に対して (1)r を順列の符号sign of a permutation といい、 ε(p1p2pn) で表す。

2つの数字を入れ替えた順列の符号

【命題】
2つの数字を入れ替えた順列の符号

2つの数字 pipj を入れ替えると。順列の符号が変わる、すなわち ε(pipj)=ε(pjpi)

行列式の定義

n 次正方行列 A=(aij) から定まる数 sgn(12np1p2pn)a1p1a2p2anpn(p1,,pn)ε(p1p2pn)a1p1a2p2anpn A の行列式 determinant といい、 D(A)det(A)det A|A||a11a12a1na21a22a2nan1an2ann| などの記号で表す。

ここで、 (p1,,pn)ε(p1p2pn) は長さ n のすべての順列についての和を表す。

1次の行列式

1次の正方行列 A=a1 の行列式は数 a1 自身である。

2次の行列式

2次正方行列 A=(a11a12a21a22) の行列式は |a11a12a21a22|=ε(12)a11a22+ε(21)a12a21=a11a22a12a21

3次の行列式

3次正方行列 A=(a11a12a13a21a22a23a31a32a33) の行列式は |a11a12a13a21a22a23a31a32a33|=ε(123)a11a22a33+ε(132)a11a23a32+ε(213)a12a21a33+ε(231)a12a23a31+ε(312)a13a21a32+ε(321)a13a22a31=a11a22a33+a12a23a31+a13a21a32a13a22a31a12a21a33a11a23a32

行列式の基本性質

以下、n 次正方行列 A=(aij) の行ベクトル分割と列ベクトル分割を A=(a1a2an)A=(a1a2an) とし、行列式の性質を調べる。

多重線形性

【定理】
多重線形性
Multicollinearity

① 1つの行、あるいは列成分を2数の和で表す(例えば、ai=bi+ci)ならば |bi1+ci1bin+cin|=|bi1bin|+|ci1cin||bi+ci|=|bi|+|ci| ② 1つの行、あるいは列から共通の数をくくり出せる、例えば、ai=cbi ならば |cbi1cbin|=c|bi1bin||cbi|=c|bi|

交代性

【定理】
交代性
Alternativity

2つの行、あるいは列を入れ替えると、行列式の値は符号が変わる、すなわち、 |ai1ainaj1ajn|=|aj1ajnai1ain||aiaj|=|ajai|

値が0になる行列式

【定理】
値が0になる行列式
Alternativity

① 1つの行、あるいは成分がすべて0ならば、行列式の値は0である、すなわち ai=0|A|=0 ② 2つの行、あるいはが等しいならば、行列式の値は0である、すなわち ai=aj(ij)|A|=0 ③ 2つの行、あるいはが比例していれば、行列式の値は0である、すなわち ai=caj(ij)|A|=0

転置と積の行列式

積の行列式

【定理】
積の行列式
Determinant of Matrix Product

A,B を同じ次数の正方行列とするとき |AB|=|A||B|

行列式による正則性の判定

【定理】
行列式による正則性の判定
Regularity of a Matrix and Determinant

正方行列 A が正則であるための必要十分条件は |A|0 である。 また、このとき |A1|=1|A|

転置の行列式

【定理】
転置の行列式
Determinant of Transpose

任意の正方行列 A に対して |AT|=|A|

行列式の展開

余因子

2次以上の n 次正方行列 A=(aij) の第 i 行と第 j 列を取り除いてできる n1 次正方行列の行列式を (1)i+j 倍した数 a~ij=(1)i+j|a11×a1ja1n×aj1×aij×ainan1×anjann| A(i,j) 余因子という。

余因子展開

【定理】
余因子展開
Cofactor Expansion

n 次正方行列 A=(aij) に対して
① 第 i 行に関する展開 |A|=ai1a~i1+ai2a~i2++aina~in ② 第 j 行に関する展開 |A|=a1ja~1j+a2ja~2j++anja~nj

余因子の性質

【定理】
余因子の性質
Properties of Cofactor of Matrices

n 次正方行列 A=(aij) に対して
ai1a~k1+ai2a~k2++aina~kn=0ika1ja~1k+a2ja~2k++anja~nk=0jk

余因子行列

n 次正方行列 A=(aij)(i,j) 余因子 a~ij(i,j) 成分にもつ n 次方行列の転置行列 A~=(a~11a~12a~1na~21a~22a~2na~n1a~n2a~nn)T=(a~11a~21a~n1a~12a~22a~n2a~1na~2na~nn) A余因子行列 adjugate matrix という。

余因子行列には、 AA~=A~A=|A|E という性質がある。

逆転公式

【定理】
逆転公式

正方行列 A が正則ならば A1=1|A|A~

参考文献

  • 村上 正康, 佐藤 恒雄, 野澤 宗平, 稲葉 尚志 共著. 教養の線形代数. 培風館, 2016, p.51-70
  • 馬場 敬之 著. 線形代数キャンパス・ゼミ. 改訂8, マセマ出版社, 2020, p.58-85

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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