生存時間の差に関する優越性試験のサンプルサイズ設計の公式

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【2022年11月3週】 【A000】生物統計学 【A051】コホート研究 【A074】サンプルサイズの設計 【A100】生存時間分析 【A102】ログランク検定

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本稿では、生存時間の差の検定としてログランク検定を行う優越性試験のサンプルサイズ設計の公式行っています。本稿の方法は、生存時間の分布に指数分布モデルを仮定した方法であり、現実的にはこの仮定は必ずしも満たされるわけではありませんが、最も簡単に導出できる方法としてよく使用されています。

なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。

  • スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。
  • 曝露(発症)状況を表す右下の添え字は、「0」である場合($n_0,\pi_0$ など)や「2」である場合($n_2,\pi_2$ など)がありますが、どちらも「非曝露群(コントロール群)」を表しています。
  • 漸近的な性質を用いる際は、①中心極限定理が成り立つ、②漸近分散を推定する際に、母数をその一致推定量で置き換えることができるということが成り立つと仮定しています。

【公式】生存時間の差に関する優越性試験のサンプルサイズ設計の公式

【公式】
生存時間の差に関する優越性試験のサンプルサイズ設計の公式
Sample Size Determination for Log-Rank Test

生存時間に関するコホート研究について、
生存時間の分布に指数分布モデル \begin{align} \lambda \left(t\right)=\lambda \quad 0 \lt t \end{align} を仮定し、 各被験者の登録時期が一様分布 \begin{gather} R_i \sim \mathrm{U} \left[0,R\right] \end{gather} に従い、追跡調査のランダムな終了はないとする。

各群のサンプルサイズを \begin{gather} n_1=n_0=N \end{gather} 帰無仮説と対立仮説を \begin{gather} H_0:\lambda_1-\lambda_0=0 \quad H_1:\lambda_1-\lambda_0=\Delta \end{gather} とする。

介入群と非介入群のハザード \begin{gather} \lambda_1 \quad \lambda_0 \end{gather} を具体的定数として与え、 有意水準と検出力をそれぞれ、 \begin{align} \alpha \quad 1-\beta \end{align} 帰無仮説の下での共通のハザードを \begin{gather} \bar{\lambda}=\frac{\lambda_1+\lambda_0}{2} \end{gather} とするとき、 \begin{gather} N= \left[\frac{Z_\alpha \cdot \phi_0-Z_{1-\beta} \cdot \phi_1}{\lambda_1-\lambda_0}\right]^2\\ \phi_0^2=\frac{2{\bar{\lambda}}^2}{E \left(\delta\middle|\bar{\lambda}\right)} \quad \phi_1^2=\frac{\lambda_1^2}{E \left(\delta\middle|\lambda_1\right)}+\frac{\lambda_0^2}{E \left(\delta\middle|\lambda_1\right)}\\ E \left(\delta\middle|\lambda\right)=1-\frac{e^{-\lambda \left(S-R\right)}-e^{-\lambda S}}{\lambda R} \end{gather}

導出

導出

生存時間分布の指数分布モデルとイベント発生回数の二重同次ポアソンモデルの同等性から、生存時間におけるハザードを平均発生率と同じであると仮定する。

このとき、母集団の平均発生率の差と標本平均発生率の差をそれぞれ \begin{gather} \theta=\lambda_1-\lambda_0\\ \hat{\theta}={\hat{\lambda}}_1-{\hat{\lambda}}_0 \end{gather} とおくと、 標本平均発生率の差の漸近分布は、対立仮説の下で \begin{gather} \hat{\theta} \sim \mathrm{N} \left[\lambda_1-\lambda_0,\frac{\lambda_1^2}{E \left(d_1\middle|\lambda_1\right)}+\frac{\lambda_0^2}{E \left(d_0\middle|\lambda_0\right)}\right] \end{gather} 帰無仮説の下で \begin{gather} \hat{\theta} \sim \mathrm{N} \left[0,\frac{\lambda^2}{E \left(d_1\middle|\lambda\right)}+\frac{\lambda^2}{E \left(d_0\middle|\lambda\right)}\right] \end{gather} 帰無仮説の下での共通のハザードの推定値は、 \begin{align} \bar{\lambda}=\frac{\lambda_1+\lambda_0}{2} \end{align} 二重同次ポアソンモデルの下で、 \begin{align} E \left(d_j\middle|\lambda_j\right)=NE \left(\delta_i\middle|\lambda_j\right) \end{align} また、定数ハザードが与えられた下で研究期間中にイベントが発生する確率について、 \begin{align} E \left(\delta_i\middle|\lambda_j\right)=1-\frac{e^{-\lambda_j \left(S-R\right)}-e^{-\lambda_jS}}{\lambda_jR} \end{align} したがって、検定統計量の分散について、 \begin{gather} \frac{\phi_0^2}{N}=\frac{{\bar{\lambda}}^2}{NE \left(\delta_i\middle|\lambda\right)}+\frac{{\bar{\lambda}}^2}{NE \left(\delta_i\middle|\lambda\right)}\\ \phi_0^2=\frac{2{\bar{\lambda}}^2}{E \left(\delta_i\middle|\lambda\right)} \end{gather} \begin{gather} \frac{\phi_1^2}{N}=\frac{\lambda_1^2}{NE \left(\delta_i\middle|\lambda_1\right)}+\frac{\lambda_0^2}{NE \left(\delta_i\middle|\lambda_1\right)}\\ \phi_1^2=\frac{\lambda_1^2}{E \left(\delta_i\middle|\lambda_1\right)}+\frac{\lambda_0^2}{E \left(\delta_i\middle|\lambda_1\right)} \end{gather} これをサンプルサイズの設計公式に代入すると、 \begin{align} N= \left[\frac{Z_\alpha \cdot \phi_0-Z_{1-\beta} \cdot \phi_1}{\lambda_1-\lambda_0}\right]^2 \end{align} $\blacksquare$

参考文献

  • 山口 拓洋 著. サンプルサイズの設計 後悔先に立たず. 健康医療評価研究機構, 2010, p.79-82
  • ジョン・ラチン 著, 宮岡 悦良 監訳, 遠藤 輝, 黒沢 健, 下川 朝有, 寒水 孝司 訳. 医薬データのための統計解析. 共立出版, 2020, p.520-524

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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