ジョン・ラチン(2020)『医薬データのための統計解析』 問題5.1 解答例

公開日:

【2022年11月1週】 【A000】生物統計学 【A052】ケース・コントロール研究

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本稿は、ジョン・ラチン(2020)『医薬データのための統計解析』の「問題5.1」の自作解答例です。ケース・コントロール研究に関する指標の基本性質に関する問題です。

なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。

  • スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。
  • 曝露(発症)状況を表す右下の添え字は、「0」である場合(n0,π0 など)や「2」である場合(n2,π2 など)がありますが、どちらも「非曝露群(コントロール群)」を表しています。
  • 著作権の関係上、問題文は、掲載しておりません。上述の参考書をお持ちの方は、お手元にご用意してご覧ください。
  • この解答例は、筆者が自作したものであり、公式なものではありません。あくまでも参考としてご覧いただければ幸いです。

問題5.1.1:前向き発症オッズ比と後ろ向き曝露オッズ比の同等性

全体の有病割合 δ を用いて得られた分割表を書き直すと、以下のようになる。

表1 ケース・コントロール研究に関する 2×2 分割表(統計モデル)
曝露あり
(E)
曝露なし
(E¯)
合計
ケース群
(D)
δϕ1 δ(1ϕ1) δ
コントロール群
(D¯)
(1δ)ϕ2 (1δ)(1ϕ2) 1δ
合計 δϕ1
+
(1δ)ϕ2
δ(1ϕ1)
+
(1δ)(1ϕ2)
1

モデル上の数値から、曝露群の発症確率を表すと、「曝露された人のうち、ケース群(発症者)が占める割合」なので、
ベイズの定理 P(A|B)=P(A|B)P(B)P(A|B)P(B)+P(A|B¯)P(B¯) より、 π1=P(D|E)=P(DE)P(E)=P(E|D)P(D)P(E|D)P(D)+P(E|D¯)P(D¯)=δϕ1δϕ1+(1δ)ϕ21π1=(1δ)ϕ2δϕ1+(1δ)ϕ2 同様に、非曝露群の発症確率を表すと、「曝露されていない人のうち、ケース群(発症者)が占める割合」なので、 π2=P(D|E¯)=P(DE¯)P(E¯)=P(E¯|D)P(D)P(E¯|D)P(D)+P(E¯|D¯)P(D¯)=δ(1ϕ1)δ(1ϕ1)+(1δ)(1ϕ2)1π2=(1δ)(1ϕ2)δ(1ϕ1)+(1δ)(1ϕ2) 前向き発症オッズ比の定義式 OR=π11π11π2π2 より、 OR=δϕ1δϕ1+(1δ)ϕ2δϕ1+(1δ)ϕ2(1δ)ϕ2δ(1ϕ1)+(1δ)(1ϕ2)δ(1ϕ1)(1δ)(1ϕ2)δ(1ϕ1)+(1δ)(1ϕ2)=ϕ11ϕ11ϕ2ϕ2=ORRetro

問題5.1.2:前向き帰無仮説と後ろ向き帰無仮説の同等性

前向き発症確率が等しい H0:π1=π2 とき、 δϕ1δϕ1+(1δ)ϕ2=δ(1ϕ1)δ(1ϕ1)+(1δ)(1ϕ2)δϕ1δϕ1+(1δ)ϕ2δ(1ϕ1)δ(1ϕ1)+(1δ)(1ϕ2)=0δϕ1{δ(1ϕ1)+(1δ)(1ϕ2)}δ(1ϕ1){δϕ1+(1δ)ϕ2}{δϕ1+(1δ)ϕ2}{δ(1ϕ1)+(1δ)(1ϕ2)}=0δϕ1(δδϕ1+1ϕ2δ+δϕ2)(δδϕ1)(δϕ1+ϕ2δϕ2){δϕ1+(1δ)ϕ2}{δ(1ϕ1)+(1δ)(1ϕ2)}=0(δ2ϕ12+δϕ1δϕ1ϕ2+δ2ϕ1ϕ2)(δ2ϕ1+δϕ2δ2ϕ2δ2ϕ12δϕ1ϕ2+δ2ϕ1ϕ2){δϕ1+(1δ)ϕ2}{δ(1ϕ1)+(1δ)(1ϕ2)}=0δϕ1δ2ϕ1δϕ2+δ2ϕ2{δϕ1+(1δ)ϕ2}{δ(1ϕ1)+(1δ)(1ϕ2)}=0δ(1δ)(ϕ1ϕ2){δϕ1+(1δ)ϕ2}{δ(1ϕ1)+(1δ)(1ϕ2)}=0 これが恒等式となるための δ=0,δ=1 以外の条件は、 ϕ1=ϕ2 これは、後ろ向き曝露確率が等しいという帰無仮説を示している。

問題5.1.3:前向き対立仮説と後ろ向き対立仮説の同等性

問題5.1.2と同様に、前向き発症確率が等しくない H1:π1π2 とき、後ろ向き曝露確率が等しくないという H1:ϕ1ϕ2 結果が得られる。

問題5.1.4:前向き発症リスク比と後ろ向き曝露リスク比の関係―全体の有病割合が既知のとき

全体の有病割合 δ が分かっているとき、曝露群と非曝露群の発症確率は、 π1=(1δ)ϕ2δϕ1+(1δ)ϕ2π2=δ(1ϕ1)δ(1ϕ1)+(1δ)(1ϕ2) 前向き発症相対リスクの定義式 RR=π1π2 より、 RR=δϕ1δϕ1+(1δ)ϕ2δ(1ϕ1)+(1δ)(1ϕ2)δ(1ϕ1)=ϕ11ϕ1δ(1ϕ1)+(1δ)(1ϕ2)δϕ1+(1δ)ϕ2 この一致推定量は、 RR^=p11p1δ(1p1)+(1δ)(1p2)δp1+(1δ)p2

しかし、多くの場合、全体の有病割合が事前には分からず、通常ケース・コントロール研究からは直接推定することができないため、このアプローチはほとんど実用的ではない。

問題5.1.5:前向き発症リスク比と後ろ向き曝露オッズ比の関係①

疾病の発症が稀な場合 (δ0) limδ0RR=limδ0ϕ11ϕ1δ(1ϕ1)+(1δ)(1ϕ2)δϕ1+(1δ)ϕ2=ϕ11ϕ11ϕ2ϕ2=ORRetro

問題5.1.6:前向き発症リスク比と後ろ向き曝露オッズ比の関係②

また、 RR=ϕ11ϕ1δ(ϕ1ϕ2)+(1ϕ2)δ(ϕ1ϕ2)+ϕ2 よって、曝露確率に差がない (ϕ1ϕ20) とき、 limϕ1ϕ20RR=limϕ1ϕ20ϕ11ϕ1δ(ϕ1ϕ2)+(1ϕ2)δ(ϕ1ϕ2)+ϕ2=ϕ11ϕ11ϕ2ϕ2=ORRetro

問題5.1.7:人口寄与危険割合の対数オッズの別表現

人口寄与危険割合の定義式 PAR=α1(RR1)1+α1(RR1) より、 1PAR=1α1(RR1)1+α1(RR1)=1+α1(RR1)α1(RR1)1+α1(RR1)=11+α1(RR1)PAR1PAR=α1(RR1)1+α1(RR1){1+α1(RR1)}=α1(RR1) limδ0RR=ORRetro より、 PAR1PARα1(ORRetro1) 両辺の対数をとると、 logPAR1PAR=logα1(ORRetro1) この一致推定量は、 logPAR^1PAR^=logα1(OR^Retro1)

問題5.1.8:人口寄与危険割合の対数オッズの漸近分散

発症オッズ比と曝露オッズ比の同等性 OR=ORRetro より、発症オッズ比を用いて考える。
人口寄与危険割合の標本対数オッズの漸近分散は、 (1)V[logPAR^1PAR^]=π1(π1π2)2{n2π2(1π1)+n1π1(1π2)n1n2π2} また、 OR1=π1(1π2)π2(1π1)π2(1π1)=π1π1π2π2+π1π2π2(1π1)=π1π2π2(1π1) したがって、 (OROR1)2V(logOR)=π12(1π2)2(π1π2)2[1n1π1(1π1)+1n2π2(1π2)]=π1(π1π2)2[π1(1π2)2n1π1(1π1)+π1(1π2)2n2π2(1π2)](2)=π1(π1π2)2[(1π2)2n1(1π1)+π1(1π2)2n2π2(1π2)] ここで、全体の有病割合は、曝露群と非曝露群の発症割合の和 δ=P(D)=P(D|E)+P(D|E¯)=π1+π2 であり、 希少疾患 δ0 のとき、両群の発症割合も限りなく小さくなっていく、すなわち、 limδ0π10limδ0π20limδ0(1π1)1limδ0(1π2)0 と考えられる。 このとき、式 (1) は、 V[logPAR^1PAR^]=π1(π1π2)2(n2π2+n1π1n1n2π2)(2) は、 (OROR1)2V(logOR)=π1(π1π2)2(1n1+π1n2π2)=π1(π1π2)2(n2π2+n1π1n1n2π2) したがって、希少疾患のとき、漸近的に、 V[logPAR^1PAR^](OROR1)2V(logOR)

そして、発症オッズ比と曝露オッズ比の同等性 OR=ORRetro をもとに、 後ろ向き曝露オッズ比の推定値 OR^Retro=bcad 対数オッズ比の分散の公式 V(logOR^Retro)=1a+1b+1c+1d を用いて、 分散の一致推定量を計算することができる。

参考文献

  • ジョン・ラチン 著, 宮岡 悦良 監訳, 遠藤 輝, 黒沢 健, 下川 朝有, 寒水 孝司 訳. 医薬データのための統計解析. 共立出版, 2020, p.257
  • ジョン・ラチン 著, 宮岡 悦良 監訳, 遠藤 輝, 黒沢 健, 下川 朝有, 寒水 孝司 訳. 医薬データのための統計解析. 共立出版, 2020, p.216-218

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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