ジョン・ラチン(2020)『医薬データのための統計解析』 問題5.6 解答例

公開日:

【2022年11月2週】 【A000】生物統計学 【A061】マッチング研究

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本稿は、ジョン・ラチン(2020)『医薬データのための統計解析』の「問題5.6」の自作解答例です。多項分布にもとづくマクネマー検定統計量の導出に関する問題です。

なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。

  • スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。
  • 曝露(発症)状況を表す右下の添え字は、「0」である場合(n0,π0 など)や「2」である場合(n2,π2 など)がありますが、どちらも「非曝露群(コントロール群)」を表しています。
  • 漸近的な性質を用いる際は、①中心極限定理が成り立つ、②漸近分散を推定する際に、母数をその一致推定量で置き換えることができるということが成り立つと仮定しています。
  • デルタ法を用いる際、剰余項(2次の項)が漸近的に無視できる(0に確率収束する)と仮定しています。
  • 著作権の関係上、問題文は、掲載しておりません。上述の参考書をお持ちの方は、お手元にご用意してご覧ください。
  • この解答例は、筆者が自作したものであり、公式なものではありません。あくまでも参考としてご覧いただければ幸いです。

問題5.6.1:対立仮説における標本比率の差の分散

確率変数の差の分散の公式 V(XY)=V(X)+V(Y)2Cov(X,Y) より、 V(p12p21)=V(p12)+V(p21)2Cov(p12,p21)=π12(1π12)N+π21(1π21)N2(π12π11N)=π12π122+π21π212+2π12π11N=(π12+π21)(π12π21)2N

問題5.6.2:帰無仮説における標本比率の差の分散

帰無仮説 H0:π12=π21=π における標本比率の差の分散は、 V(p12p21)=(π+π)(ππ)2N=2πN

問題5.6.3, 問題5.6.4:マクネマー検定統計量

標本比率の差の分散の一致推定量は、 V^(p12p21)=p12+p21N これを標準化した値は、 N(p12p21)p12+p21=ZM(0,1) また、 ZM=NNN(p12p21)p12+p21=N(p12p21)N(p12+p21) Np12=f,Np21=g より、 ZM=fgf+g これを2乗した値は、 (fg)2f+g=χM2χ2(1)

問題5.6.5:対数条件付きオッズ比の漸近分散―四項分布にもとづく考え方

多項分布の周辺分布であることから、 eB(N,π11)fB(N,π12) 二項分布の正規近似により、標本比率は漸近的に p12N[π12,π12(1π12)N]p21N[π21,π21(1π21)N] 標本比率ベクトルを p=(p12p21) 期待値ベクトルを π=(π12π21) 分散・共分散行列を Ω=[π12(1π12)Nπ12π21Nπ12π21Nπ21(1π21)N] として、 G(π)=θ=logπ12π21G(p)=θ^=logp12p21 と変数変換する。 多変量のデルタ法を用いて G(p) を期待値 E(p)=π まわりでテイラー展開すると、偏導関数ベクトルは、 H(π)=(G(π)π1G(π)π2)=[1π121π21] 多変量のデルタ法の期待値と分散の公式より、 E[G(p)]G(π)=logπ12π21 V[G(p)]=[1π121π21][π12(1π12)Nπ12π21Nπ21π12Nπ21(1π21)N][1π121π21]=[1π121π21][1N1N]=1Nπ12+1Nπ21 母比率 πi を一致推定量である標本比率 pi で置き換えると、漸近分散の一致推定量は、 V^[θ^]=1Np12+1Np21=1f+1g

問題5.6.6:対数母集団平均相対リスクの漸近分散―四項分布にもとづく考え方

多項分布の周辺分布であることから、 eB(N,π11)fB(N,π12)gB(N,π21)e+f=n1B(N,π1)e+g=n1B(N,π1) 二項分布の正規近似により、標本比率は漸近的に p11N[π11,π11(1π11)N]p12N[π12,π12(1π12)N]p21N[π21,π21(1π21)N]p1N[π1,π1(1π1)N]p1N[π1,π1(1π1)N] ここで、和の分散の公式より、 V(p12p21)=V(p12)+V(p21)2Cov(p12,p21)=π12(1π12)N+π21(1π21)N+2π12π21N=(π12+π21)(π12π21)2N(1)V(p1p1)=V(p1)+V(p1)2Cov(p1,p1) いっぽう、 V(p1p1)=V[(p11+p12)(p11+p21)](2)=V(p12p21) よって、式 (1).(2) より、 (π12+π21)(π12π21)2N=π1(1π1)N+π1(1π1)N2Cov(p1,p1)2Cov(p1,p1)=π1(1π1)N+π1(1π1)N(π12+π21)(π12π21)2N=π1π12N+π1π12N(π12+π21)(π12π21)2N=(π11+π12)(π11+π12)2N+(π11+π21)(π11+π21)2N(π12+π21)(π12π21)2N=(π11+π12)(π112+2π11π12+π122)N+(π11+π21)(π112+2π11π21+π212)N(π12+π21)(π1222π12π21+π212)N=2π112{π11(π11+π12+π21)+π12π21}N=2[π11π11(π11+π12+π21)π12π21]N=2[π11{1(π11+π12+π21)}π12π21]N=2(π11π22π12π21)NCov(p1,p1)=π11π22π12π21N 標本比率ベクトルを p=(p1p1) 期待値ベクトルを π=(π1π1) 分散・共分散行列を Ω=[π1(1π1)Nπ11π22π12π21Nπ11π22π12π21Nπ1(1π1)N] として、 G(π)=θ=logπ1π1G(p)=θ^=logp1p1 と変数変換する。 多変量のデルタ法を用いて G(p) を期待値 E(p)=π まわりでテイラー展開すると、偏導関数ベクトルは、 H(π)=(G(π)π1G(π)π1)=[1π11π1] 多変量のデルタ法の期待値と分散の公式より、 E[G(p)]G(π)=logπ1π1 V[G(p)]=1N[1π11π1][π1(1π1)π11π22π12π21π11π22π12π21π1(1π1)][1π11π1]=1N[1π11π1][1π1π11π22π12π21π1π11π22π12π21π1(1π1)]=1N[1π1{(1π1)π11π22π12π21π1}1π1{π11π22π12π21π1(1π1)}]=1N(1π1π1π11π22π12π21π1π1π11π22π12π21π1π1+1π1π1)=π1(1π1)2(π11π22π12π21)+π1(1π1)Nπ1π1=(π1+π12π1π1)2(π11π22π12π21)Nπ1π1=π1+π12(π11π22π12π21+π1π1)Nπ1π1=π11+π12+π11+π212(π11π22π12π21+π1π1)Nπ1π1=π12+π212(π11π22π12π21+π1π1π11)Nπ1π1=π12+π212{π11π22π12π21+(π11+π12)(π11+π21)π11}Nπ1π1=π12+π212{π11π22+π112+π11(π12+π21)π11}Nπ1π1=π12+π212{π11(π11+π12+π21+π22)π11}Nπ1π1=π12+π212(π111π11)Nπ1π1=π12+π21Nπ1π1 母比率 πi を一致推定量である標本比率 pi で置き換えると、漸近分散の一致推定量は、 V^[θ^]=p12+p21Np1p1=MNn1n1

参考文献

  • ジョン・ラチン 著, 宮岡 悦良 監訳, 遠藤 輝, 黒沢 健, 下川 朝有, 寒水 孝司 訳. 医薬データのための統計解析. 共立出版, 2020, p.259
  • ジョン・ラチン 著, 宮岡 悦良 監訳, 遠藤 輝, 黒沢 健, 下川 朝有, 寒水 孝司 訳. 医薬データのための統計解析. 共立出版, 2020, p.227-232

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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