ジョン・ラチン(2020)『医薬データのための統計解析』 問題5.5 解答例

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【2022年11月2週】 【A000】生物統計学 【A061】マッチング研究

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本稿は、ジョン・ラチン(2020)『医薬データのための統計解析』の「問題5.5」の自作解答例です。マッチング・ペア研究に対する条件付き二項分布に関する問題です。

なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。

  • スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。
  • 曝露(発症)状況を表す右下の添え字は、「0」である場合($n_0,\pi_0$ など)や「2」である場合($n_2,\pi_2$ など)がありますが、どちらも「非曝露群(コントロール群)」を表しています。
  • 漸近的な性質を用いる際は、①中心極限定理が成り立つ、②漸近分散を推定する際に、母数をその一致推定量で置き換えることができるということが成り立つと仮定しています。
  • デルタ法を用いる際、剰余項(2次の項)が漸近的に無視できる($0$に確率収束する)と仮定しています。
  • 上述の参考書では、標準正規分布の上側 $100\alpha\%$ 点を $Z_{1-\alpha}$ と表記していますが、本サイトでは、$Z_\alpha$ としています。そのため、参考書に載っている式の形式と異なる部分があります。
  • 著作権の関係上、問題文は、掲載しておりません。上述の参考書をお持ちの方は、お手元にご用意してご覧ください。
  • この解答例は、筆者が自作したものであり、公式なものではありません。あくまでも参考としてご覧いただければ幸いです。

問題5.5.1:条件付き二項分布の導出

抽出したものが不一致な応答であるという条件のもとで、それが「発症あり・発症なし $ \left(D,\bar{D}\right)$」、「発症なし・発症あり $ \left(\bar{D},D\right)$」である確率は、 \begin{align} P \left(D,\bar{D}\right)=\frac{\pi_{12}}{\pi_{12}+\pi_{21}} \quad P \left(\bar{D},D\right)=\frac{\pi_{21}}{\pi_{12}+\pi_{21}} \end{align} 不一致な応答の総数 $M=f+g$ が固定されているとの仮定のもとで、「発症あり・発症なし $ \left(D,\bar{D}\right)$」となるペア数 $f$ は、 \begin{align} f \sim \mathrm{B} \left(M,\frac{\pi_{12}}{\pi_{12}+\pi_{21}}\right) \end{align} したがって、得られた観測値が観測される確率(尤度)は、 \begin{align} P \left(f\middle| M\right)&={}_{M}C_f \left(\frac{\pi_{12}}{\pi_{12}+\pi_{21}}\right)^f \left(\frac{\pi_{21}}{\pi_{12}+\pi_{21}}\right)^g\\ &=\frac{M!}{f! \left(M-f\right)!} \left(\frac{\pi_{12}}{\pi_{12}+\pi_{21}}\right)^f \left(\frac{\pi_{21}}{\pi_{12}+\pi_{21}}\right)^g\\ &=\frac{M!}{f!g!} \left(\frac{\pi_{12}}{\pi_{12}+\pi_{21}}\right)^f \left(\frac{\pi_{21}}{\pi_{12}+\pi_{21}}\right)^g \end{align} $\blacksquare$

問題5.5.2:条件付き二項分布の正規近似

二項分布の期待値と分散の公式より、 \begin{align} E \left(f\right)=\frac{M\pi_{12}}{\pi_{12}+\pi_{21}} \quad V \left(f\right)=\frac{M\pi_{12}\pi_{21}}{ \left(\pi_{12}+\pi_{21}\right)^2} \end{align} 二項分布の正規近似より、漸近的に、 \begin{align} f \sim \mathrm{N} \left[\frac{M\pi_{12}}{\pi_{12}+\pi_{21}},\frac{M\pi_{12}\pi_{21}}{ \left(\pi_{12}+\pi_{21}\right)^2}\right] \end{align} 線形変換の性質より、「発症あり・発症なし」の標本確率は漸近的に、 \begin{align} \frac{f}{M}=p_f \sim \mathrm{N} \left[\frac{\pi_{12}}{\pi_{12}+\pi_{21}},\frac{\pi_{12}\pi_{21}}{M \left(\pi_{12}+\pi_{21}\right)^2}\right] \end{align} $\blacksquare$

参考文献

  • ジョン・ラチン 著, 宮岡 悦良 監訳, 遠藤 輝, 黒沢 健, 下川 朝有, 寒水 孝司 訳. 医薬データのための統計解析. 共立出版, 2020, p.259
  • ジョン・ラチン 著, 宮岡 悦良 監訳, 遠藤 輝, 黒沢 健, 下川 朝有, 寒水 孝司 訳. 医薬データのための統計解析. 共立出版, 2020, p.225-227

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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