ジョン・ラチン(2020)『医薬データのための統計解析』 問題5.10 解答例

公開日:

【2022年11月3週】 【A000】生物統計学 【A061】マッチング研究

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本稿は、ジョン・ラチン(2020)『医薬データのための統計解析』の「問題5.10」の自作解答例です。マッチングされたコホート研究とケース・コントロール研究の同等性に関する問題です。

なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。

  • スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。
  • 曝露(発症)状況を表す右下の添え字は、「0」である場合(n0,π0 など)や「2」である場合(n2,π2 など)がありますが、どちらも「非曝露群(コントロール群)」を表しています。
  • 著作権の関係上、問題文は、掲載しておりません。上述の参考書をお持ちの方は、お手元にご用意してご覧ください。
  • この解答例は、筆者が自作したものであり、公式なものではありません。あくまでも参考としてご覧いただければ幸いです。

問題5.10.1:前向き対称性の帰無仮説と後ろ向き対称性の帰無仮説の同等性

マッチングされたケース・コントロール研究の分割表より、 (1)πED=π11+π12=ϕ11+ϕ12=ϕDE(2)πE¯D=π11+π21=ϕ21+ϕ22=ϕDE¯(3)πED¯=π21+π22=ϕ11+ϕ21=ϕD¯E(4)πE¯D¯=π12+π22=ϕ12+ϕ22=ϕD¯E¯ 〔1〕後ろ向き→前向きの同等性
後ろ向きの帰無仮説が成り立つとき、式 (1),(3) より、 ϕDE=ϕD¯Eϕ11+ϕ12=ϕ11+ϕ21ϕ12=ϕ21 同時に、式 (1),(3) より、 ϕDE=ϕD¯EπED=πED¯(5)π11+π12=π21+π22 また、 ϕDE=1ϕDE¯ϕD¯E=1ϕD¯E¯ という関係があるので、 ϕDE=ϕD¯E1ϕDE¯=1ϕD¯E¯ϕDE¯=ϕD¯E¯(2),(4) より、 ϕDE=ϕD¯EπE¯D=πE¯D¯π11+π21=π12+π22(6)π11=π22(5),(6) より、 π11+π12=π21+π22π12=π21 〔2〕前向き→後ろ向きの同等性
前向きの帰無仮説が成り立つとき、式 (1),(2) より、 πED=πE¯Dπ11+π12=π11+π21π12=π22 同時に、式 (1),(2) より、 πED=πE¯DϕDE=ϕDE¯(7)ϕ11+ϕ12=ϕ21+ϕ22 また、 πED=1πED¯πE¯D=1πE¯D¯ という関係があるので、 πED=πE¯D1πED¯=1πE¯D¯πED¯=πE¯D¯(3),(4) より、 πED=πE¯DπED¯=πE¯D¯(8)ϕ11+ϕ21=ϕ12+ϕ22(7)(8) より、 ϕ12ϕ21=ϕ21ϕ122ϕ12=2ϕ21ϕ12=ϕ21

問題5.10.2:前向き条件付き発症オッズ比と後ろ向き条件付き曝露オッズ比の同等性

(1)(4) と後ろ向き条件付き曝露オッズ比の定義式より、 ORRetro=ϕDEϕDE¯ϕD¯E¯ϕD¯E=πEDπE¯DπE¯D¯πED¯=πEDπED¯πE¯D¯πE¯D=ORProsp

問題5.10.3:前向き条件付きリスク比と後ろ向き条件付きリスク比の関係①

共変量の値が z のときのリスク比は、定義式より、 RRz=P(D|E,z)P(D|E¯,z)=P(DE|z)P(E|z)÷P(DE¯|z)P(E¯|z)=P(DE|z)P(E¯|z)P(DE¯|z)P(E|z)=P(E|D,z)[P(E¯|D,z)P(D|z)+P(E¯|D¯,z)P(D¯|z)]P(E¯|D,z)[P(E|D,z)P(D|z)+P(E|D¯,z)P(D¯|z)]=P(E|D,z)[P(E¯|D,z)P(D|z)+P(E¯|D¯,z){1P(D|z)}]P(E¯|D,z)[P(E|D,z)P(D|z)+P(E|D¯,z){1P(D|z)}]=P(E|D,z)P(E¯|D,z)P(D|z)+P(E|D,z)P(E¯|D¯,z){1P(D|z)}P(E¯|D,z)P(E|D,z)P(D|z)+P(E¯|D,z)P(E|D¯,z){1P(D|z)} 共変量の値が z のときの全体の発症確率を P(D|z)=δz とおくと、 RRz=ϕDEϕDE¯δz+ϕDEϕD¯E¯(1δz)ϕDEϕDE¯δz+ϕD¯EϕDE¯(1δz)=ϕDEϕDE¯δz+ϕ12(1δz)ϕDEϕDE¯δz+ϕ21(1δz)

問題5.10.4:前向き条件付きリスク比と後ろ向き条件付きリスク比の関係②

希少疾患 δz0 の仮定のもとで、 limδz0RRz=ϕDEϕDE¯0+ϕ12(10)ϕDEϕDE¯0+ϕ21(10)=ϕ12ϕ21=ORCRetro=ORCProsp

参考文献

  • ジョン・ラチン 著, 宮岡 悦良 監訳, 遠藤 輝, 黒沢 健, 下川 朝有, 寒水 孝司 訳. 医薬データのための統計解析. 共立出版, 2020, p.260-261

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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