発症リスク差に関する非劣性試験のサンプルサイズ設計の公式

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【2022年11月4週】 【A000】生物統計学 【A051】コホート研究 【A074】サンプルサイズの設計

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本稿では、マッチングをしない横断研究やコホート研究について、発症リスク差に関する非劣性試験のサンプルサイズ設計の公式を導出しています。帰無仮説・対立仮説の下での分布の導出や共通の母比率の推定は、優越性試験の場合と同じであると思うと躓いてしまうので、基本に立ち返って考えていくことが重要です。

なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。

  • スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。
  • 曝露(発症)状況を表す右下の添え字は、「0」である場合(n0,π0 など)や「2」である場合(n2,π2 など)がありますが、どちらも「非曝露群(コントロール群)」を表しています。
  • 漸近的な性質を用いる際は、①中心極限定理が成り立つ、②漸近分散を推定する際に、母数をその一致推定量で置き換えることができるということが成り立つと仮定しています。
  • 本稿では、検定にもとづくに考え方によるサンプルサイズ設計の公式を用いています。

【定理公式】発症リスク差に関する非劣性試験のサンプルサイズ設計の公式

【公式】
発症リスク差に関する非劣性試験のサンプルサイズ設計の公式
Sample Size Determination for for Non-inferiority Risk Difference Test

マッチングなしのコホート研究(積二項モデル)について、
各群のサンプルサイズを n1=n0=N 帰無仮説と対立仮説を H0:π1π0=ΔH1:π1π0>Δ とする。

曝露群と非曝露群の発症確率 π1π0 を具体的定数として与え、 非劣性マージンを Δ 有意水準と検出力をそれぞれ、 α1β とするとき、 N=[Zαπ¯(1π¯)+(π¯Δ)(1π¯+Δ)Z1βπ1(1π1)+π0(1π0)π1π0+Δ]2π¯=π1+π0+Δ2

導出

導出

帰無仮説をいいかえると、 H0:π1+Δ=π0=π 各群の発症確率の漸近分布は、 π^1dN[π1,π1(1π1)N]π^0dN[π0,π0(1π0)N] 正規分布の再生性より、標本発症リスク差の漸近分布は、対立仮説の下で RD^dN[π1π0,π1(1π1)+π0(1π0)N] 帰無仮説の下で RD^dN[Δ,(π0Δ)(1π0+Δ)+π0(1π0)N] 帰無仮説の下での共通の発症確率の推定値は、 π¯=π0=π1+π0+Δ2 したがって、検定統計量の分散について、 ϕ02N=(π¯Δ)(1π¯+Δ)+π¯(1π¯)Nϕ02=(π¯Δ)(1π¯+Δ)+π¯(1π¯)ϕ0=π¯(1π¯)+(π¯Δ)(1π¯+Δ) ϕ12N=π1(1π1)+π0(1π0)Nϕ12=π1(1π1)+π0(1π0)ϕ1=π1(1π1)+π0(1π0) これを非劣性試験におけるサンプルサイズの設計公式に代入すると、 N=[Zαπ¯(1π¯)+(π¯Δ)(1π¯+Δ)Z1βπ1(1π1)+π0(1π0)π1π0+Δ]2

参考文献

  • 山口 拓洋 著. サンプルサイズの設計 後悔先に立たず. 健康医療評価研究機構, 2010, p.77
  • 丹後 俊郎, 小西 貞則 編集. 医学統計学の事典 新装版. 朝倉書店, 2018, p.357

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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