本稿では、ペア・マッチングをするコホート研究における条件付きロジスティック・モデルについて解説しています。条件付き尤度についての考え方、パラメータの最尤推定量、最尤推定量の漸近分散、条件付き有効スコア検定の導出、有効スコア検定がマクネマー検定と等しいことの証明などが含まれます。
なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。
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- 曝露(発症)状況を表す右下の添え字は、「0」である場合(
など)や「2」である場合( など)がありますが、どちらも「非曝露群(コントロール群)」を表しています。 - 漸近的な性質を用いる際は、①中心極限定理が成り立つ、②漸近分散を推定する際に、母数をその一致推定量で置き換えることができるということが成り立つと仮定しています。
目次[非表示]
条件なしロジスティック・モデル
マッチングありのコホート研究において、
各ペアにおいて、各メンバーの発症状況が条件付き独立なとき、尤度は、積二項尤度として、定数項を無視すると、
これを
したがって、対数オッズ比
条件付きロジスティック・モデル
しかしながら、Cox(1958)
あるバラメータの最尤推定量はそのパラメータに関する漸近的に十分統計量の関数であるため、
大まかな意味でこれは、補助統計量
条件付き尤度
反対に、
ここで、
したがって、条件付き尤度は、
パラメータの最尤推定量
対数尤度関数
オッズ比
最尤推定量の漸近分散
観測情報量
条件付き尤度比検定
「マッチング共変量に関してマッチングを行った後の母集団内の曝露と応答の間に関連性が存在しない」という仮説
条件付き有効スコア検定
帰無仮説
なお、条件付き発症オッズ比と条件付き曝露オッズ比の同等性から、ペア・マッチングを行うケース・コントロール研究についても、同様のロジスティック・モデルを考えることができる。
参考文献
- ジョン・ラチン 著, 宮岡 悦良 監訳, 遠藤 輝, 黒沢 健, 下川 朝有, 寒水 孝司 訳. 医薬データのための統計解析. 共立出版, 2020, p.284-287
- ジョン・ラチン 著, 宮岡 悦良 監訳, 遠藤 輝, 黒沢 健, 下川 朝有, 寒水 孝司 訳. 医薬データのための統計解析. 共立出版, 2020, p.300-301
- Cox, D.R.. Two further applications of a model for binary regression. Biometrika. 1958;45(3-4):562-565, doi: https://doi.org/10.1093/biomet/45.3-4.562
引用文献
- Cox, D.R.. Two further applications of a model for binary regression. Biometrika. 1958, 45(3-4), p.562-565, doi: 10.1093/biomet/45.3-4.562
- ロナルド・フィッシャー 著, 渋谷 政昭, 竹内啓 訳. 統計的方法と科学的推論. 岩波書店, 1962, 227p.
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