本稿では、ロジスティック・モデルによる対数オッズ比の最尤推定について解説しています。回帰係数の最尤推定量の分散がWoolfによる対数オッズ比の公式と等しいことの証明、回帰係数のワルド検定、尤度比検定、有効スコア検定の検定統計量の導出、有効スコア検定がコクラン検定と同値であることの証明が含まれます。
なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。
- スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。
- 曝露(発症)状況を表す右下の添え字は、「0」である場合(
など)や「2」である場合( など)がありますが、どちらも「非曝露群(コントロール群)」を表しています。 - 漸近的な性質を用いる際は、①中心極限定理が成り立つ、②漸近分散を推定する際に、母数をその一致推定量で置き換えることができるということが成り立つと仮定しています。
- デルタ法を用いる際、剰余項(2次の項)が漸近的に無視できる(
に確率収束する)と仮定しています。
目次[非表示]
【定理】ロジスティック・モデルによる対数オッズ比の最尤推定
【定理】
ロジスティック・モデルによる対数オッズ比の最尤推定
MLE of Log Odd Ratios by Logistic Regression Models
マッチングなしのコホート研究(積二項モデル)において、ロジスティック・モデルを用いると、パラメータ
証明
積二項尤度の基本式より、
対数尤度をパラメータ
ヘッセ行列の成分の定義より、
最尤推定量
【定理】ロジスティック・モデルによる対数オッズ比の漸近分散
【定理】
ロジスティック・モデルによる対数オッズ比の漸近分散
Asymptotic Variance of Log Odd Ratios by Logistic Regression Models
ロジスティック・モデルのパラメータ
パラメータ
導出
期待情報行列の成分は、
別な表現として、
推定量の共分散行列に、ロジスティック・モデルの各値を代入すると、
【定理】ロジスティック・モデルのパラメータに対する検定統計量
【定理】
ロジスティック・モデルのパラメータに関する検定統計量
Test Statistics for the Parameter of Logistic Regression Models
ロジスティック・モデルのパラメータに関する帰無仮説と対立仮説を
この仮説を検定する検定統計量について、
〔1〕ワルド検定の検定統計量は、
導出
ロジスティック・モデルのパラメータと対数オッズ比の関係から、問題としている帰無仮説と対立仮説を評価すると、
〔1〕ワルド検定の検定統計量
ワルド検定の検定統計量の定義
〔2〕尤度比検定の検定統計量
対数尤度の式より、帰無仮説
〔3〕有効スコア検定の検定統計量
超幾何分布モデルに対するロジスティック・モデル
超幾何分布モデルに対してもロジスティック・モデルを仮定することができる。この場合もやはり、対数オッズ比が回帰係数と等しい
周辺度数が固定されているという条件のもとでは、条件付き超幾何確率となる尤度関数は、
表記の省略のため、次の
有効スコア検定
帰無仮説
スコアにもとづく推定
スコアにもとづく推定値の公式
参考文献
- ジョン・ラチン 著, 宮岡 悦良 監訳, 遠藤 輝, 黒沢 健, 下川 朝有, 寒水 孝司 訳. 医薬データのための統計解析. 共立出版, 2020, p.268-278
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