ジョン・ラチン(2020)『医薬データのための統計解析』 問題5.7 解答例

公開日:

【2022年11月2週】 【A000】生物統計学 【A061】マッチング研究

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本稿は、ジョン・ラチン(2020)『医薬データのための統計解析』の「問題5.7」の自作解答例です。条件付き二項分布にもとづくマクネマー検定統計量の導出に関する問題です。

なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。

  • スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。
  • 曝露(発症)状況を表す右下の添え字は、「0」である場合(n0,π0 など)や「2」である場合(n2,π2 など)がありますが、どちらも「非曝露群(コントロール群)」を表しています。
  • 漸近的な性質を用いる際は、①中心極限定理が成り立つ、②漸近分散を推定する際に、母数をその一致推定量で置き換えることができるということが成り立つと仮定しています。
  • デルタ法を用いる際、剰余項(2次の項)が漸近的に無視できる(0に確率収束する)と仮定しています。
  • 上述の参考書では、標準正規分布の上側 100α% 点を Z1α と表記していますが、本サイトでは、Zα としています。そのため、参考書に載っている式の形式と異なる部分があります。
  • 著作権の関係上、問題文は、掲載しておりません。上述の参考書をお持ちの方は、お手元にご用意してご覧ください。
  • この解答例は、筆者が自作したものであり、公式なものではありません。あくまでも参考としてご覧いただければ幸いです。

問題5.7.1:帰無仮説のもとでの条件付き二項分布①

問題5.5の結果より、漸近的に、 fN[Mπ12π12+π21,Mπ12π21(π12+π21)2] 対称性の帰無仮説 H0:π12=π21=π のもとでは、 π12π12+π21=ππ+π=12π12π21(π12+π21)2=ππ(π+π)2=14 したがって、 fN(M2,M4)

問題5.7.2:帰無仮説のもとでの条件付き二項分布②

線形変換の性質より、帰無仮説のもとで、 fM=pfN(12,14M)

問題5.7.3:マクネマー検定統計量

帰無仮説のもとで、「発症あり・発症なし」の標本確率を標準化した値は、 2M(fM12)=ZM(0,1) また、 ZM=2M(2fM2M)=2fMM=2f(f+g)f+g=fgf+g これを2乗した値は、 (fg)2f+g=χM2χ2(1)

問題5.7.4:対数条件付きオッズ比の漸近分散―条件付き二項分布にもとづく考え方

不一致な応答の総数 M=f+g が固定されているとの仮定のもとで、応答不一致のペア数 f,g は、 fB(M,π12π12+π21)gB(M,π21π12+π21) 二項分布の正規近似により、漸近的に fN[π12π12+π21M,π12π21(π12+π21)2M]gN[π21π12+π21M,π12π21(π12+π21)2M] 線形変換の性質より、標本比率は漸近的に p12N[π12π12+π21,π12π21M(π12+π21)2]p21N[π21π12+π21,π12π21M(π12+π21)2] ここで、和の分散の公式より、 V(p12+p21)=V(p12)+V(p21)+2Cov(p12,p21) 不一致な応答の総数が固定されているとの仮定のもとで p12+p21=fM+gM=1 したがって、 V(1)=π12π21M(π12+π21)2+π12π21M(π12+π21)2+2Cov(p12,p21)0=2π12π21M(π12+π21)2+2Cov(p12,p21)Cov(p12,p21)=π12π21M(π12+π21)2 ここで、標本比率ベクトルを p=(p12p21) 期待値ベクトルを π=(π12π21) 分散・共分散行列を Ω=[π12π21M(π12+π21)2π12π21M(π12+π21)2π12π21M(π12+π21)2π12π21M(π12+π21)2] として、 G(π)=θ=logπ12π21G(p)=θ^=logp12p21 と変数変換する。 多変量のデルタ法を用いて G(p) を期待値 E(p)=π まわりでテイラー展開すると、偏導関数ベクトルは、 H(π)=(G(π)π1G(π)π2)=[1π121π21] 多変量のデルタ法の期待値と分散の公式より、 E[G(p)]G(π)=logπ12π21 V[G(p)]=[1π121π21][π12π21M(π12+π21)2π12π21M(π12+π21)2π12π21M(π12+π21)2π12π21M(π12+π21)2][1π121π21]=[1π121π21][1M(π12+π21)1M(π12+π21)]=1Mπ12(π12+π21)+1Mπ21(π12+π21)=1M(π12+π21)(1π12+1π21) 母比率 πi を一致推定量である標本比率 pi で置き換えると、漸近分散の一致推定量は、 V^[θ^]=1M(p12+p21)(1p12+1p21)=1Mp12+1Mp21=1f+1g

参考文献

  • ジョン・ラチン 著, 宮岡 悦良 監訳, 遠藤 輝, 黒沢 健, 下川 朝有, 寒水 孝司 訳. 医薬データのための統計解析. 共立出版, 2020, p.259-260

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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