有病率・発生割合の信頼区間(ロジット変換)

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【2022年10月5週】 【A000】生物統計学 【A051】コホート研究 【A072】統計的推定

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本稿では、横断研究やコホート研究における有病率・発生割合の信頼区間の導出を行っています。本稿における方法は、母比率のロジット変換にもとづく方法で、非対称な信頼区間とはなりますが、上下信頼限界が区間 $ \left[0,1\right]$ に収まる点が評価されています。この方法は、そうした方法の中で最も基本的な方法です。

なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。

  • スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。
  • 漸近的な性質を用いる際は、①中心極限定理が成り立つ、②漸近分散を推定する際に、母数をその一致推定量で置き換えることができるということが成り立つと仮定しています。
  • デルタ法を用いる際、剰余項(2次の項)が漸近的に無視できる($0$に確率収束する)と仮定しています。

【定理】有病率・発生割合の信頼区間(ロジット変換)

【定理】
有病率・発生割合の信頼区間(ロジット変換)
Confidence Interval for Prevalence or Incidence Proportion Based on Logit-Transformation

マッチングなしのコホート研究における有病率・発生割合をロジット変換したものを \begin{gather} \theta=\log{\frac{\pi}{1-\pi}} \quad \hat{\theta}=\log{\frac{\hat{\pi}}{1-\hat{\pi}}} \end{gather} とするとき、 ロジット変換にもとづく母集団の有病率・発生割合の非対称な $100 \left(1-\alpha\right)\%$ 信頼区間は、漸近的に \begin{gather} 100 \left(1-\alpha\right)\%\ \mathrm{C.I.}= \left[\pi_L,\pi_U\right]\\ \pi_L=\frac{\mathrm{exp} \left(\theta_L\right)}{1+\mathrm{exp} \left(\theta_L\right)}\\ \pi_U=\frac{\mathrm{exp} \left(\theta_U\right)}{1+\mathrm{exp} \left(\theta_U\right)} \end{gather} で与えられる。 ただし、 \begin{gather} \theta_L=\hat{\theta}-\hat{\sigma} \cdot Z_{0.5\alpha} \quad \theta_U=\hat{\theta}+\hat{\sigma} \cdot Z_{0.5\alpha}\\ {\hat{\sigma}}^2=\frac{1}{n\hat{\pi} \left(1-\hat{\pi}\right)} \quad \hat{\sigma}=\mathrm{\widehat{S.E.}} \left(\hat{\theta}\right) \end{gather}

導出:母比率のロジット変換にもとづく方法

導出

標本対数オッズの漸近分布は、 \begin{align} \hat{\theta}\xrightarrow[]{d}\mathrm{N} \left[\log{\frac{\pi}{1-\pi}},\frac{1}{n\pi \left(1-\pi\right)}\right] \end{align} 標本対数オッズの漸近分散の一致推定量は、 \begin{align} \hat{V} \left(\hat{\theta}\right)=\frac{1}{n\hat{\pi} \left(1-\hat{\pi}\right)} \end{align} 標本対数オッズの漸近的な標準誤差 $\mathrm{\widehat{S.E.}} \left(\hat{\theta}\right)=\hat{\sigma}$ は、 \begin{gather} \hat{\sigma}=\frac{1}{\sqrt{n\hat{\pi} \left(1-\hat{\pi}\right)}} \end{gather} 母集団の対数オッズの $100 \left(1-\alpha\right)\%$ 信頼区間は、 \begin{gather} \hat{\theta}-\hat{\sigma} \cdot Z_{0.5\alpha} \le \log{\frac{\pi}{1-\pi}} \le \hat{\theta}+\hat{\sigma} \cdot Z_{0.5\alpha} \end{gather} ここで、スペースの節約のために以下のようにおいて、 \begin{gather} \theta_L=\hat{\theta}-\hat{\sigma} \cdot Z_{0.5\alpha} \quad \theta_U=\hat{\theta}+\hat{\sigma} \cdot Z_{0.5\alpha} \end{gather} 逆変換を行うと、 \begin{gather} \theta_L \le \log{\frac{\pi}{1-\pi}} \le \theta_U\\ \mathrm{exp} \left(\theta_L\right) \le \frac{\pi}{1-\pi} \le \mathrm{exp} \left(\theta_U\right)\\ \frac{\mathrm{exp} \left(\theta_L\right)}{1+\mathrm{exp} \left(\theta_L\right)} \le \pi \le \frac{\mathrm{exp} \left(\theta_U\right)}{1+\mathrm{exp} \left(\theta_U\right)} \end{gather} $\blacksquare$

参考文献

  • マーティン・ガードナー, ダグラス・アルトマン 著, 舟喜 光一, 折笠 秀樹 共訳. 信頼性の統計学:信頼区間および統計ガイドライン. サイエンティスト社, 2001, p.33-34

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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