ジョン・ラチン(2020)『医薬データのための統計解析』 問題2.6 解答例

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【2022年10月2週】 【A000】生物統計学 【A073】統計的仮説検定

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本稿は、ジョン・ラチン(2020)『医薬データのための統計解析』の「問題2.6」の自作解答例です。コクラン検定・フィッシャーの正確確率検定に関する問題です。

なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。

  • スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。
  • 曝露(発症)状況を表す右下の添え字は、「0」である場合(n0,π0 など)や「2」である場合(n2,π2 など)がありますが、どちらも「非曝露群(コントロール群)」を表しています。
  • 著作権の関係上、問題文は、掲載しておりません。上述の参考書をお持ちの方は、お手元にご用意してご覧ください。
  • この解答例は、筆者が自作したものであり、公式なものではありません。あくまでも参考としてご覧いただければ幸いです。

問題2.6.1:積二項尤度(帰無仮説)

本問の条件下で、観測値が得られる積二項尤度は、 L1(π1,π2)=P(a,b|n1,n2,π)=P(a|n1,π1)P(b|n2,π2)=n1Caπ1a(1π1)n1an2Cbπ2b(1π2)n2b 帰無仮説 H0:π1=π2=π のもとでは、 L0(π1,π2)=n1Can2Cbπa+b(1π)n1+n2ab=n1Can2Cbπm1(1π)m2

問題2.6.2:曝露群の発症人数の期待値と分散一致推定量

二項分布の期待値と分散の公式より、曝露群について、 E(a)=n1πV(a)=n1π(1π) 共通の母比率 π の一致推定量は、 π^=a+bn1+n2=m1N したがって、曝露群の発症人数の期待値と分散の一致推定量は、 E^(a)=m1n1NV^(a)=m1m2n1N2

問題2.6.3:実測値と期待値の差の分散の一致推定量

同様に、非曝露群については、 E(b)=n2πV(b)=n2π(1π)E^(b)=m1n2NV^(b)=m1m2n2N2 実測値と期待値の一致推定量の差は、 aE^(a)=am1n1N=a(n1+n2)m1n1N=n2a+n1(am1)N=n2an1bN 両辺の分散を取ると、分散の性質より、 V[aE^(a)]=V[n2an1bN]=n22V(a)+n12V(b)N2=n22n1π(1π)+n12n2π(1π)N2=n1n2(n1+n2)π(1π)N2=n1n2π(1π)N 共通の母比率 π を標本共通比率で置き換えると、差の分散の一致推定量は、 V^[aE^(a)]=n1n2Nm1Nm2N=n1n2m1m2N3 したがって、独立性の検定の考え方から、検定統計量は、 χC2=[aE^(a)]2V^[aE^(a)]

問題2.6.4:超幾何尤度の導出(対立仮説)

発症群での曝露の有無について、m1=a+b が固定されているとき、 b=m1a これを積二項尤度の式に代入すると、 P(a,m1|n1,π1,n2,π2)=n1Caπ1a(1π1)n1an2Cm1aπ2m1a(1π2)n2m1+a=n1Ca(π11π1)a(1π1)n1n2Cm1a(1π2π2)aπ2m1(1π2)n2m1=n1Ca(π11π11π2π2)a(1π1)n1n2Cm1aπ2m1(1π2)n2m1 ここで、オッズ比を φ=π11π11π2π2 とおくと、 P(a,m1|n1,π1,n2,π2)=n1Can2Cm1aφa(1π1)n1π2m1(1π2)n2m1 条件付き確率の定義式より、m1 を固定するという条件のもとでの条件付き尤度は、 L(φ)=P(a,m1|n1,π1,n2,π2)P(m1|n1,π1,n2,π2) ここで、m1 が得られる確率は、行と列の周辺度数 (n1,n2,m1,m2) が与えられたという条件のもとで、a が得られる確率の総和として求めることができる。すなわち、 P(m1|n1,π1,n2,π2)=a=alauP(a,m1|n1,π1,n2,π2) a の取り得る値の上限(最大値)は、n1,m1 のうち小さい方 au=min{n1,m1} である。
同様に、b の取り得る値の上限(最大値)は、n2,m1 のうち小さい方 bu=min{n2,m1} であり、a=m1b の関係があるので、 a の取り得る値の下限(最小値)は、al=m1max{n2,m1} となる。 したがって、a の取り得る値の範囲は、 a={max(0,n2m1),,min(n1,m1)} これらを条件付き尤度の式に代入すると、(1π1)n1π2m1(1π2)n2m1 は定数なので、 L1(φ)=(1π1)n1π2m1(1π2)n2m1n1Can2Cm1aφa(1π1)n1π2m1(1π2)n2m1i=alaun1Cin2Cm1iφi=n1Can2Cm1aφai=alaun1Cin2Cm1iφi

問題2.6.5:超幾何尤度の導出(帰無仮説)

特に、帰無仮説 H0:φ=1 のもとでは、 L0(φ)=n1Can2Cm1ai=alaun1Cin2Cm1i

問題2.6.6:超幾何分布の確率関数

N 個の中から、m1 個を抽出する選び方は、 NCm1 通りある。 性質 A を持つ個体が a 個となる選び方は、 まず、性質 A を持つ n1 個の中から、a 個を抽出し、
性質 A を持たない Nn1 個の中から、残りの m1a 個を抽出
すればよいので、 そのような選び方は、 n1CaNn1Cm1a 通りある。 したがって、このような事象が起こる確率は(数学的確率によって)、 P(a|n1,m1,N)=n1CaNn1Cm1aNCm1 これは、超幾何分布の確率関数である。

問題2.6.7:ヴァンデルモンドの恒等式

確率の公理 f(x)=1 より、 i=alauP(i|n1,m1,N)=i=alaun1CiNn1Cm1iNCm1=1 変数は aNCm1 は定数なので、両辺に NCm1 をかけると、 i=alaun1CiNn1Cm1i=NCm1

問題2.6.8:条件付きの超幾何尤度の公式

帰無仮説 H0:φ=1 のもとでの条件付きの超幾何尤度の公式より、 L0(φ)=n1CaNn1Cm1ai=alaun1Cin2Cm1i 〔2〕の結果を代入すると、 L0(φ)=n1CaNn1Cm1aNCm1=n1Can2CbNCm1=n1!a!(n1a)!n2!b!(n2b)!m1!(Nm1)!N!=n1!a!c!n2!b!d!m1!m2!N!=n1!n2!m1!m2!N!a!b!c!d!

問題2.6.9:超幾何分布の期待値

期待値の定義式 E(X)=x=xf(x) より、 E(a)=an1CaNn1Cm1aNCm1=m1n1Nn11Ca1(N1)(n11)C(m11)(a1)N1Cm11 ヒントにあるように、 n11Ca1(N1)(n11)C(m11)(a1)N1Cm11=1 したがって、 E(a)=m1n1N

問題2.6.10:超幾何分布の2次階乗モーメントと分散

2次階乗モーメントの定義式 E{X(X1)}=x=0x(x1)f(x) より、 E{a(a1)}=a(a1)n1CaNn1Cm1aNCm1=m1(m11)n1(n11)N(N1)n12Ca2(N2)(n12)C(m12)(a2)N2Cm12 これまでと同様に、 n12Ca2(N2)(n12)C(m12)(a2)N2Cm12=1 したがって、 E{a(a1)}=m1(m11)n1(n11)N(N1) 分散の公式 V(X)=E{X(X1)}+E(X){E(X)}2 より、 V(a)=m1(m11)n1(n11)N(N1)+m1n1Nm12n12N2=m1n1N{(m11)(n11)N1+1m1n1N}=m1n1N{N(m11)(n11)+N(N1)m1n1(N1)N(N1)}=m1n1N2(N1)(m1n1Nm1Nn1N+N+N2Nm1n1N+m1n1)=m1n1N2(N1){N2(n1+m1)N+m1n1}=m1n1N2(N1){(Nm1)(Nn1)}=m1m2n1n2N2(N1)

参考文献

  • ジョン・ラチン 著, 宮岡 悦良 監訳, 遠藤 輝, 黒沢 健, 下川 朝有, 寒水 孝司 訳. 医薬データのための統計解析. 共立出版, 2020, p.82-83
  • ジョン・ラチン 著, 宮岡 悦良 監訳, 遠藤 輝, 黒沢 健, 下川 朝有, 寒水 孝司 訳. 医薬データのための統計解析. 共立出版, 2020, p.28-30
  • ジョン・ラチン 著, 宮岡 悦良 監訳, 遠藤 輝, 黒沢 健, 下川 朝有, 寒水 孝司 訳. 医薬データのための統計解析. 共立出版, 2020, p.34-36
  • ジョン・ラチン 著, 宮岡 悦良 監訳, 遠藤 輝, 黒沢 健, 下川 朝有, 寒水 孝司 訳. 医薬データのための統計解析. 共立出版, 2020, p.42-43
  • Fisher, R. A.. On the interpretation of χ2 from contingency tables, and the calculation of P. Journal of the Royal Statistical Society, 1922;85 (1): 87-94. doi: https://doi.org/10.2307/2340521
  • Cochran, W.G.. Some Methods for Strengthening the Common χ2 Tests. Biometrics. 1954;10(4):417-451, doi: https://doi.org/10.2307/3001616

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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