ジョン・ラチン(2020)『医薬データのための統計解析』 問題2.9 解答例

公開日:

【2022年10月3週】 【A000】生物統計学 【A073】統計的仮説検定

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本稿は、ジョン・ラチン(2020)『医薬データのための統計解析』の「問題2.9」の自作解答例です。母比率の滑らかな関数にもとづく検定に関する問題です。

なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。

  • スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。
  • 曝露(発症)状況を表す右下の添え字は、「0」である場合(n0,π0 など)や「2」である場合(n2,π2 など)がありますが、どちらも「非曝露群(コントロール群)」を表しています。
  • 漸近的な性質を用いる際は、①中心極限定理が成り立つ、②漸近分散を推定する際に、母数をその一致推定量で置き換えることができるということが成り立つと仮定しています。
  • デルタ法を用いる際、剰余項(2次の項)が漸近的に無視できる(0に確率収束する)と仮定しています。
  • 著作権の関係上、問題文は、掲載しておりません。上述の参考書をお持ちの方は、お手元にご用意してご覧ください。
  • この解答例は、筆者が自作したものであり、公式なものではありません。あくまでも参考としてご覧いただければ幸いです。

問題2.9:標本比率の滑らかな関数の漸近分布

二項分布の正規近似により、標本比率は漸近的に p1N[π1,π1(1π1)n1]p2N[π2,π2(1π2)n2] ここで、 πig(πi)pig(pi) と変数変換する。 デルタ法における期待値と分散の公式より、 E{g(pi)}E[g(πi)] V[g(pi)]{g(πi)}2V(pi) スラツキーの定理より、 g(pi)dN[g(πi),{g(πi)}2V(pi)] したがって、正規分布の再生性より、 g(p1)g(p2)dN[g(π1)g(π2),{g(π1)}2V(p1)+{g(π2)}2V(p2)] 帰無仮説 H0:π1=π2(=π) のもとでは、 g(p1)g(p2)dN[0,{g(π)}2{V(p1)+V(p2)}] ここで、帰無仮説のもとでの漸近分散を以下のようにおくと、 σ02={g(π)}2{V(p1)+V(p2)}={g(π)}2π(1π)(1n1+1n2) 共通の母比率 π の一致推定量は、 π^=a+bn1+n2=m1N 共通の母比率 π を標本共通比率で置き換えると、差の分散の一致推定量は、 σ^02={g(π)}2π^(1π^)(1n1+1n2) よって、これを用いて標準化した値は、 g(p1)g(p2)σ^0=ZgN(0,1) したがって、母比率の滑らかな関数にもとづく検定統計量は、漸近的に通常の Z検定を行うための検定統計量として用いることができる。

上述の参考書の問題文(p.84)では、 (2.80)の通常の Z検定~ となっていますが、 (2.80)(p.37)は、フィッシャーの正確確率検定に関する表なので、おそらく 式 (2.82) などの誤植だと思われます。

参考文献

  • ジョン・ラチン 著, 宮岡 悦良 監訳, 遠藤 輝, 黒沢 健, 下川 朝有, 寒水 孝司 訳. 医薬データのための統計解析. 共立出版, 2020, p.84
  • ジョン・ラチン 著, 宮岡 悦良 監訳, 遠藤 輝, 黒沢 健, 下川 朝有, 寒水 孝司 訳. 医薬データのための統計解析. 共立出版, 2020, p.38-40

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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