ジョン・ラチン(2020)『医薬データのための統計解析』 問題2.10 解答例

公開日:

【2022年10月3週】 【A000】生物統計学 【A051】コホート研究 【A073】統計的仮説検定

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本稿は、ジョン・ラチン(2020)『医薬データのための統計解析』の「問題2.10」の自作解答例です。集団寄与危険割合オッズに関する問題です。

なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。

  • スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。
  • 曝露(発症)状況を表す右下の添え字は、「0」である場合(n0,π0 など)や「2」である場合(n2,π2 など)がありますが、どちらも「非曝露群(コントロール群)」を表しています。
  • 漸近的な性質を用いる際は、①中心極限定理が成り立つ、②漸近分散を推定する際に、母数をその一致推定量で置き換えることができるということが成り立つと仮定しています。
  • デルタ法を用いる際、剰余項(2次の項)が漸近的に無視できる(0に確率収束する)と仮定しています。
  • 著作権の関係上、問題文は、掲載しておりません。上述の参考書をお持ちの方は、お手元にご用意してご覧ください。
  • この解答例は、筆者が自作したものであり、公式なものではありません。あくまでも参考としてご覧いただければ幸いです。

問題2.10.1:母集団寄与危険割合のオッズの一致推定量

母集団寄与危険割合の定義式 PAR=α1(RR1)1+α1(RR1) より、 1PAR=1α1(RR1)1+α1(RR1)=1+α1(RR1)α1(RR1)1+α1(RR1)=11+α1(RR1) したがって、 PAR1PAR=α1(RR1)1+α1(RR1){1+α1(RR1)}=α1(RR1) 相対リスクの定義式 RR=π1π2 より、 PAR1PAR=α1(π1π21)=α1(π1π2)π2 したがって、オッズの一致推定量は、πi=pi を代入して、 PAR^1PAR^=α1(p1p2)p2

問題2.10.2:標本対数PARオッズの漸近分布

二項分布の正規近似により、標本比率は漸近的に p1N[π1,π1(1π1)n1]p2N[π2,π2(1π2)n2] 標本比率ベクトルを p=(p1p2) 期待値ベクトルを π=(π1π2) 分散・共分散行列を Ω=[π1(1π1)n100π2(1π2)n2] として、 G(π)=θ=α1(π1π2)π2G(p)=θ^=α1(p1p2)p2 と変数変換する。 多変量のデルタ法を用いて G(p) を期待値 E(p)=π まわりでテイラー展開すると、偏導関数ベクトルは、 H(π)=(G(π)π1G(π)π2)=[1π1π2π1π2(π1π2)] 多変量のデルタ法の期待値と分散の公式より、 E[G(p)]G(π)=α1(π1π2)π2 V[G(p)]=[1π1π2π1π2(π1π2)][π1(1π1)n100π2(1π2)n2][1π1π2π1π2(π1π2)]=1(π1π2)2π1(1π1)n1+π12π22(π1π2)2π2(1π2)n2=π1(1π1)n1(π1π2)2+π12(1π2)n2π2(π1π2)2=π1(π1π2)2{1π1n1+π1(1π2)n2π2}=π1(π1π2)2{n2π2(1π1)+n1π1(1π2)n1n2π2} 母比率 πi を一致推定量である標本比率 pi で置き換えると、漸近分散の一致推定量は、 V^[θ^]=p1(p1p2)2{n2p2(1p1)+n1p2(1p2)n1n2p2}

参考文献

  • ジョン・ラチン 著, 宮岡 悦良 監訳, 遠藤 輝, 黒沢 健, 下川 朝有, 寒水 孝司 訳. 医薬データのための統計解析. 共立出版, 2020, p.84
  • ジョン・ラチン 著, 宮岡 悦良 監訳, 遠藤 輝, 黒沢 健, 下川 朝有, 寒水 孝司 訳. 医薬データのための統計解析. 共立出版, 2020, p.54-56

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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