ジョン・ラチン(2020)『医薬データのための統計解析』 問題2.1 解答例

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【2022年10月1週】 【A000】生物統計学 【A072】統計的推定

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本稿は、ジョン・ラチン(2020)『医薬データのための統計解析』の「問題2.1」の自作解答例です。補対数対数変換にもとづく母比率の信頼区間に関する問題です。

なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。

  • スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。
  • 漸近的な性質を用いる際は、①中心極限定理が成り立つ、②漸近分散を推定する際に、母数をその一致推定量で置き換えることができるということが成り立つと仮定しています。
  • デルタ法を用いる際、剰余項(2次の項)が漸近的に無視できる(0に確率収束する)と仮定しています。
  • 上述の参考書では、標準正規分布の上側 100α% 点を Z1α と表記していますが、本サイトでは、Zα としています。そのため、参考書に載っている式の形式と異なる部分があります。
  • 著作権の関係上、問題文は、掲載しておりません。上述の参考書をお持ちの方は、お手元にご用意してご覧ください。
  • この解答例は、筆者が自作したものであり、公式なものではありません。あくまでも参考としてご覧いただければ幸いです。

問題2.1.1:補対数対数変換後の漸近分布

二項分布の正規近似により、標本比率は漸近的に、 pdN[π,π(1π)n] ここで、 θ=g(π)=log(logπ)θ^=g(p)=log(logp) と変数変換する。 デルタ法を用いて、g(p) を期待値 E(p)=π まわりでテイラー展開すると、g(p) の1階微分は、 g(p)=1logpddp(logp)=1plogp よって、デルタ法における期待値と分散の公式より、 E{g(p)}E[g(π)]=log(logπ) V[g(p)]{g(π)}2V(p)=1(πlogπ)2π(1π)n=1πnπ(logπ)2 したがって、スラツキーの定理より、 log(logp)dN[log(logπ),1πnπ(logπ)2]

問題2.1.2:補対数対数変換にもとづく信頼区間

母比率を一致推定量である標本比率で置き換えると、分散の一致推定量は、 V^[log(logp)]1pnp(logp)2S.E.(θ^)=1pnp|logp| これを用いて g(p) を標準化した値は、 θ^θS.E.(θ^)=ZdN(0,1) 標準正規分布の 100α% 点を Zα とすると、θ=g(π)100(1α)% 信頼区間は、 log(logp)Z0.5αS.E.(θ^)log(logπ)log(logp)+Z0.5αS.E.(θ^) ここで、スペースの節約のために以下のようにおいて、 θ^L=log(logp)Z0.5αS.E.(θ^)θ^U=log(logp)+Z0.5αS.E.(θ^) 逆変換を行うと、 θ^Llog(logπ)θ^Uexp(θ^L)logπexp(θ^U)exp(θ^U)logπexp(θ^L)exp{exp(θ^U)}πexp{exp(θ^L)}

問題2.1.3:例題

サンプルサイズとイベント数が問題文で与えられた条件のとき、 p=246=0.04 補対数対数変換した値は、 θ^=log(log0.04)=1.1428 分散と標準誤差は、 V(θ^)=10.042(log0.04)2=0.9572(3.135)2=0.04865S.E.(θ^)=0.04865=0.22056 θ に対する信頼限界は、 θ^L=1.14281.960.22056=0.7105θ^U=1.1428+1.960.22056=1.5751 π に対する信頼区間は、 π^L=exp{exp(1.575)}=0.00798π^U=exp{exp(0.711)}=0.13068

参考文献

  • ジョン・ラチン 著, 宮岡 悦良 監訳, 遠藤 輝, 黒沢 健, 下川 朝有, 寒水 孝司 訳. 医薬データのための統計解析. 共立出版, 2020, p19, p.79-80

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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