ジョン・ラチン(2020)『医薬データのための統計解析』 問題3.4 解答例

公開日:

【2022年10月4週】 【A000】生物統計学 【A074】サンプルサイズの設計

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本稿は、ジョン・ラチン(2020)『医薬データのための統計解析』の「問題3.4」の自作解答例です。大標本における母平均の差に対するサンプルサイズと検出力に関する問題です。

なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。

  • スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。
  • 曝露(発症)状況を表す右下の添え字は、「0」である場合(n0,π0 など)や「2」である場合(n2,π2 など)がありますが、どちらも「非曝露群(コントロール群)」を表しています。
  • 漸近的な性質を用いる際は、①中心極限定理が成り立つ、②漸近分散を推定する際に、母数をその一致推定量で置き換えることができるということが成り立つと仮定しています。
  • デルタ法を用いる際、剰余項(2次の項)が漸近的に無視できる(0に確率収束する)と仮定しています。
  • 上述の参考書では、標準正規分布の上側 100α% 点を Z1α と表記していますが、本サイトでは、Zα としています。そのため、参考書に載っている式の形式と異なる部分があります。
  • 著作権の関係上、問題文は、掲載しておりません。上述の参考書をお持ちの方は、お手元にご用意してご覧ください。
  • この解答例は、筆者が自作したものであり、公式なものではありません。あくまでも参考としてご覧いただければ幸いです。

問題3.4.1:対立仮説における標本平均の差の分布

総数 N のサンプルを集めるときの各群の割合が ξ1,ξ2 のとき、 n1=Nξ1n2=Nξ2 それぞれの標本平均を以下のようにおくと、 X¯1=1n1i=1n1X1iX¯2=1n2j=1n2X2j 中心極限定理により、標本平均は漸近的に X¯1N(v1,φ2n1)X¯2N(v2,φ2n2) 母平均の差と標本平均の差を以下のようにおくと、 μ1=v1v2μ^1=X¯1X¯2 正規分布の再生性より、 μ^1N(v1v2,ψ12)ψ2=φ2n1+φ2n2 標本平均の差を標準化した値は、 μ^1μ1ψ=Z1N(0,1) 帰無仮説のもとでは、 μ^1N(0,ψ2) 標本平均の差を標準化した値は、 μ^1ψ=Z0N(0,1) 対立仮説のもとでの Z0 の漸近分布は、 Z0=Z1+μ1ψN(μ1ψ,1)

問題3.4.2:サンプルサイズの公式

問題3.4.1で置いた標本平均の差の分散について、 ψ2=φ2(1n1+1n2)=φ2N(1ξ1+1ξ2)=φ2(n1+n2n1n2)=φ2N(ξ1+ξ2ξ1ξ2)=φ2(Nn1n2)=φ2N(1ξ1ξ2)ψ=φNn1n2=φNξ1ξ2 臨床的有意差・有意水準・検出力の関係式より、 v1v2=Z0.5αψZ1βψ=ψ(Z0.5αZ1β)(1)=φNξ1ξ2(Z0.5αZ1β)(2)=φNn1n2(Z0.5αZ1β)(1) を総サンプルサイズ N について解くと、 N=(Z0.5αZ1β)φ(v1v2)ξ1ξ2N=(Z0.5αZ1β)2φ2(v1v2)2ξ1ξ2

問題3.4.3:検出力の公式

(1) を検出力 Z1β について解くと、 Nξ1ξ2(v1v2)φ=Z0.5αZ1βZ1β=Z0.5αNξ1ξ2(v1v2)φ(2) を検出力 Z1β について解くと、 (v1v2)n1n2φN=Z0.5αZ1βZ1β=Z0.5α(v1v2)n1n2φN

問題3.4.4:サンプルサイズ設計の例題

サンプルサイズ設計の公式に与えられた数値 α=0.051β=0.9φ2=1μ1=0.20ξ1=ξ2=12 を代入すると、 N=1(1.960+1.282)20.20241050.7 N は、これを満たす最小の偶数として、 N=1052

問題3.4.5:検出力算出の例題

検出力の公式に与えられた数値 α=0.05N=120φ2=1μ1=0.20ξ1=ξ2=12 を代入すると、 Z1β=1.960110.20120120.865 標準正規分布表で 0.865 が上側何%点にあたるかを調べると、 1β=0.194=19.4%

参考文献

  • ジョン・ラチン 著, 宮岡 悦良 監訳, 遠藤 輝, 黒沢 健, 下川 朝有, 寒水 孝司 訳. 医薬データのための統計解析. 共立出版, 2020, p.123

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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