本稿では、対応のない連続値データに関するコホート研究・介入研究における大標本での母平均・母平均の差の信頼区間を行っています。母集団の分布が正規分布でなくとも、サンプルサイズが十分に大きければ適用できるため、非常に使い勝手が良い公式です。
なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。
- スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。
- 曝露(発症)状況を表す右下の添え字は、「0」である場合($n_0,\pi_0$ など)や「2」である場合($n_2,\pi_2$ など)がありますが、どちらも「非曝露群(コントロール群)」を表しています。
- 漸近的な性質を用いる際は、①中心極限定理が成り立つ、②漸近分散を推定する際に、母数をその一致推定量で置き換えることができるということが成り立つと仮定しています。
【定理】大標本における母平均・母平均の差の信頼区間
【定理】
大標本における母平均・母平均の差の信頼区間
Confidence Interval for Mean and Mean Difference of Any Distributions with Large-Sample
対応のない連続値データに関するコホート研究・介入研究における母平均の $100 \left(1-\alpha\right)\%$ 信頼区間は、漸近的に \begin{gather} 100 \left(1-\alpha\right)\%\ \mathrm{C.I.}= \left[\mu_{XL},\mu_{XU}\right]\\ \mu_{XL}=\bar{X}-{\hat{\sigma}}_X \cdot Z_{0.5\alpha} \quad \mu_{XU}=\bar{X}+{\hat{\sigma}}_X \cdot Z_{0.5\alpha}\\ {\hat{\sigma}}_X^2=\frac{s_X^2}{n} \quad {\hat{\sigma}}_X=\mathrm{\widehat{S.E.}} \left(\bar{X}\right) \end{gather} \begin{gather} 100 \left(1-\alpha\right)\%\ \mathrm{C.I.}= \left[\mu_{YL},\mu_{YU}\right]\\ \mu_{YL}=\bar{Y}-{\hat{\sigma}}_Y \cdot Z_{0.5\alpha} \quad \mu_{YU}=\bar{Y}+{\hat{\sigma}}_Y \cdot Z_{0.5\alpha}\\ {\hat{\sigma}}_Y^2=\frac{s_Y^2}{m} \quad {\hat{\sigma}}_Y=\mathrm{\widehat{S.E.}} \left(\bar{Y}\right) \end{gather} で与えられる。
母平均の差を \begin{gather} \delta=\mathrm{MD}=\mu_X-\mu_Y\\ \hat{\delta}=\mathrm{\widehat{MD}}=\bar{X}-\bar{Y} \end{gather} とするとき、 母平均の差の $100 \left(1-\alpha\right)\%$ 信頼区間は、漸近的に \begin{gather} 100 \left(1-\alpha\right)\%\ \mathrm{C.I.}= \left[\delta_L,\delta_U\right]\\ \delta_L=\hat{\delta}-\hat{\phi} \cdot Z_{0.5\alpha} \quad \delta_U=\hat{\delta}+\hat{\phi} \cdot Z_{0.5\alpha}\\ {\hat{\phi}}^2=\frac{s_X^2}{n}+\frac{s_Y^2}{m} \quad \hat{\phi}=\mathrm{\widehat{S.E.}} \left(\hat{\delta}\right) \end{gather} で与えられる。
導出
中心極限定理より、標本平均の漸近分布は、 \begin{align} \bar{X}\xrightarrow[]{d}\mathrm{N} \left(\mu_X,\frac{\sigma_X^2}{n}\right)\\ \bar{Y}\xrightarrow[]{d}\mathrm{N} \left(\mu_Y,\frac{\sigma_Y^2}{m}\right) \end{align} 各群の標本不偏分散がそれぞれの母分散の一致推定量とみなすことができるとき、標本平均の漸近分散の一致推定量は、 \begin{align} \hat{V} \left(\bar{X}\right)=\frac{s_X^2}{n} \quad \hat{V} \left(\bar{Y}\right)=\frac{s_Y^2}{m} \end{align} 標本平均の漸近的な標準誤差は、 \begin{gather} {\hat{\sigma}}_X=\frac{s_X}{\sqrt n} \quad {\hat{\sigma}}_Y=\frac{s_Y}{\sqrt m} \end{gather} したがって、各群の母平均の $100 \left(1-\alpha\right)\%$ 上下信頼限界は、 \begin{gather} \mu_{XL}=\bar{X}-{\hat{\sigma}}_X \cdot Z_{0.5\alpha} \quad \mu_{XU}=\bar{X}+{\hat{\sigma}}_X \cdot Z_{0.5\alpha}\\ \mu_{YL}=\bar{Y}-{\hat{\sigma}}_Y \cdot Z_{0.5\alpha} \quad \mu_{YU}=\bar{Y}+{\hat{\sigma}}_Y \cdot Z_{0.5\alpha} \end{gather}
標本平均の差の漸近分布は、 \begin{gather} \hat{\delta} \sim \mathrm{N} \left(\mu_X-\mu_Y,\frac{\sigma_X^2}{n}+\frac{\sigma_Y^2}{m}\right) \end{gather} 標本平均の差の分散の一致推定量は、 \begin{align} \hat{V} \left(\hat{\delta}\right)=\frac{s_X^2}{n}+\frac{s_Y^2}{m} \end{align} 標本平均の漸近的な標準誤差 $\mathrm{\widehat{S.E.}} \left(\hat{\delta}\right)=\hat{\phi}$ は、 \begin{gather} \hat{\phi}=\sqrt{\frac{s_X^2}{n}+\frac{s_Y^2}{m}} \end{gather} したがって、母平均の差の $100 \left(1-\alpha\right)\%$ 上下信頼限界は、 \begin{gather} \delta_L=\hat{\delta}-\hat{\phi} \cdot Z_{0.5\alpha} \quad \delta_U=\hat{\delta}+\hat{\phi} \cdot Z_{0.5\alpha} \end{gather} $\blacksquare$
参考文献
- 野田 一雄, 宮岡 悦良 著. 入門・演習数理統計. 共立出版, 1990, p.243
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