ジョン・ラチン(2020)『医薬データのための統計解析』 問題2.3 解答例

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【2022年10月1週】 【A000】生物統計学 【A072】統計的推定

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本稿は、ジョン・ラチン(2020)『医薬データのための統計解析』の「問題2.3」の自作解答例です。イベントが観測されなかったときの母比率の信頼区間に関する問題です。

なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。

  • スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。
  • 曝露(発症)状況を表す右下の添え字は、「0」である場合(n0,π0 など)や「2」である場合(n2,π2 など)がありますが、どちらも「非曝露群(コントロール群)」を表しています。
  • 漸近的な性質を用いる際は、①中心極限定理が成り立つ、②漸近分散を推定する際に、母数をその一致推定量で置き換えることができるということが成り立つと仮定しています。
  • デルタ法を用いる際、剰余項(2次の項)が漸近的に無視できる(0に確率収束する)と仮定しています。
  • 上述の参考書では、標準正規分布の上側 100α% 点を Z1α と表記していますが、本サイトでは、Zα としています。そのため、参考書に載っている式の形式と異なる部分があります。
  • 著作権の関係上、問題文は、掲載しておりません。上述の参考書をお持ちの方は、お手元にご用意してご覧ください。
  • この解答例は、筆者が自作したものであり、公式なものではありません。あくまでも参考としてご覧いただければ幸いです。

問題2.3.1:信頼区間の導出

確率変数 X が二項分布 B(n,π) に従うとき、成功のイベントが観測されない確率は、 P(X=0)=(1π)n (0,π^U) の形式の信頼係数 1α の片側信頼区間を構築するとき、上側信頼限界は XB(n,π^U) のとき、 成功のイベントが観測されない確率が α となるような値と考えることができるので、 P(X=0|π=π^U)=(1π^U)n=α1π^U=α1nπ^U=1α1n

問題2.3.2:サンプルサイズの公式の導出

上側信頼限界の算出式において、両辺の自然対数を取ると、 nlog(1πU)=logαn=logαlog(1πU)

問題2.3.3:薬剤の安全性に関する考察

仮に本問の薬剤が十万人に投与されるとすると、年間では、最大、100000×0.00507=507 人が死亡する可能性がある。これは、薬害としてはかなり大きな被害であると考えられるので、より標本サイズを大きくして安全性を検証すべきである。

問題2.3.4:上側信頼限界の定義・意味

上側80%信頼限界とは、80%信頼区間を構成する値の上限値のことである。この例のように、未知の母数 π の推定値 π^n 個の標本から算出するという行為を何度も繰り返し、その推定値の80%が区間 [πL,πU] に含まれているとき、πL,πU をそれぞれ下側80%信頼限界、上側80%信頼限界という。

問題2.3.5:サンプルサイズ設計の例題

サンプルサイズ設計の公式に、α=0.05,πU=1.0×104 を代入すると、 N=log0.05log(11.0×104)=29955.8229956

参考文献

  • ジョン・ラチン 著, 宮岡 悦良 監訳, 遠藤 輝, 黒沢 健, 下川 朝有, 寒水 孝司 訳. 医薬データのための統計解析. 共立出版, 2020, p.19-20, p.80
  • Louis, T.A.. Confidence Intervals for a Binomial Parameter after Observing No Successes. The American Statistician. 1981;35(3):154-154, doi: 10.1080/00031305.1981.10479337

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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