本稿では、横断研究やコホート研究における有病率・発生割合の信頼区間の導出を行っています。本稿における方法は、観測されたイベント数が0のときに用いる方法です。この方法は、特に有害事象の発生確率の推定など、イベントが観測されないことが期待される場面で用いられます。
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【定理】有病率・発生割合の信頼区間(イベント数が0のとき)
【定理】
有病率・発生割合の信頼区間(イベント数が0のとき)
Confidence Interval for Prevalence or Incidence Proportion When No Events Are Observed
マッチングなしのコホート研究における有病率・発生割合について、観測されたイベント数が $x=0$ のとき、非対称な $100 \left(1-\alpha\right)\%$ 信頼区間は、 \begin{gather} 100 \left(1-\alpha\right)\%\ \mathrm{C.I.}= \left[0,\pi_U\right]\\ \pi_U=1-\alpha^\frac{1}{n} \end{gather} で与えられる。
導出:二項分布の確率を直接計算する方法
確率変数 $X$ が二項分布 $\mathrm{B} \left(n,\pi\right)$ に従うとき、成功のイベントが観測されない確率は、 \begin{align} P \left(X=0\right)= \left(1-\pi\right)^n \end{align} $ \left(0,\pi_U\right)$ の形式の信頼係数 $1-\alpha$ の片側信頼区間を構築するとき、上側信頼限界は \begin{align} X \sim \mathrm{B} \left(n,\pi_U\right) \end{align} のとき、 成功のイベントが観測されない確率が $\alpha$ となるような値と考えることができるので、 \begin{gather} P \left(X=0\middle|\pi=\pi_U\right)= \left(1-\pi_U\right)^n=\alpha\\ 1-\pi_U=\alpha^\frac{1}{n}\\ \pi_U=1-\alpha^\frac{1}{n} \end{gather} $\blacksquare$
参考文献
- ジョン・ラチン 著, 宮岡 悦良 監訳, 遠藤 輝, 黒沢 健, 下川 朝有, 寒水 孝司 訳. 医薬データのための統計解析. 共立出版, 2020, p.19-20
- Louis, T.A.. Confidence Intervals for a Binomial Parameter after Observing No Successes. The American Statistician. 1981, 35(3), p.154, https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/00031305.1981.10479337
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