ジョン・ラチン(2020)『医薬データのための統計解析』 問題3.5 解答例

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【2022年10月4週】 【A000】生物統計学 【A074】サンプルサイズの設計

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本稿は、ジョン・ラチン(2020)『医薬データのための統計解析』の「問題3.5」の自作解答例です。大標本における平均発生率の差に対するサンプルサイズと検出力に関する問題です。

なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。

  • スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。
  • 曝露(発症)状況を表す右下の添え字は、「0」である場合($n_0,\pi_0$ など)や「2」である場合($n_2,\pi_2$ など)がありますが、どちらも「非曝露群(コントロール群)」を表しています。
  • 漸近的な性質を用いる際は、①中心極限定理が成り立つ、②漸近分散を推定する際に、母数をその一致推定量で置き換えることができるということが成り立つと仮定しています。
  • デルタ法を用いる際、剰余項(2次の項)が漸近的に無視できる($0$に確率収束する)と仮定しています。
  • 上述の参考書では、標準正規分布の上側 $100\alpha\%$ 点を $Z_{1-\alpha}$ と表記していますが、本サイトでは、$Z_\alpha$ としています。そのため、参考書に載っている式の形式と異なる部分があります。
  • 著作権の関係上、問題文は、掲載しておりません。上述の参考書をお持ちの方は、お手元にご用意してご覧ください。
  • この解答例は、筆者が自作したものであり、公式なものではありません。あくまでも参考としてご覧いただければ幸いです。

問題3.5.2:対立仮説における標本平均の差の分布

総数 $N$ のサンプルを集めるときの各群の割合が $\xi_1,\xi_2$ のとき、 \begin{align} n_1=N\xi_1 \quad n_2=N\xi_2 \end{align} それぞれの標本平均を以下のようにおくと、 \begin{align} {\hat{\lambda}}_1=\frac{d_1}{n_1} \quad {\hat{\lambda}}_2=\frac{d_2}{n_2} \end{align} ポアソン分布の正規近似により、漸近的に \begin{align} d_1 \sim \mathrm{N} \left(n_1\lambda_1,n_1\lambda_1\right) \quad d_2 \sim \mathrm{N} \left(n_2\lambda_2,n_2\lambda_2\right) \end{align} 線形変換の性質より、 \begin{align} {\hat{\lambda}}_1 \sim \mathrm{N} \left(\lambda_1,\frac{\lambda_1}{n_1}\right) \quad {\hat{\lambda}}_2 \sim \mathrm{N} \left(\lambda_2,\frac{\lambda_2}{n_2}\right) \end{align} 母数の差と標本平均の差を以下のようにおくと、 \begin{gather} \delta=\lambda_1-\lambda_2\\ \hat{\delta}={\hat{\lambda}}_1-{\hat{\lambda}}_2 \end{gather} 正規分布の再生性より、 \begin{gather} \hat{\delta} \sim N \left(\lambda_1-\lambda_2,\sigma_1^2\right)\\ \sigma_1^2=\frac{\lambda_1}{n_1}+\frac{\lambda_2}{n_2} \end{gather} 標本平均の差標準化した値は、 \begin{align} \frac{\hat{\delta}-\delta}{\sigma_1}=Z_1 \sim N \left(0,1\right) \end{align} $\blacksquare$

問題3.5.1:帰無仮説における標本平均の差の分布

帰無仮説における共通の母比率と標本比率は、 \begin{gather} \lambda=\xi_1\lambda_1+\xi_2\lambda_2\\ \hat{\lambda}=\frac{d_1+d_2}{n_1+n_2}=\frac{d_1+d_2}{N} \end{gather} 帰無仮説のもとでは、 \begin{gather} \hat{\delta} \sim \mathrm{N} \left(0,\sigma_0^2\right)\\ \sigma_0^2=\lambda \left(\frac{1}{n_1}+\frac{1}{n_2}\right) \end{gather} 標本平均の差を標準化した値は、 \begin{gather} \frac{\hat{\delta}}{\sigma_0}=Z_0 \sim \mathrm{N} \left(0,1\right)\\ \end{gather} $\blacksquare$

問題3.5.3:サンプルサイズの公式

対立仮説における標本平均の差の分散について、 \begin{align} \sigma_1^2&=\frac{\lambda_1}{n_1}+\frac{\lambda_2}{n_2}=\frac{\lambda_1}{N\xi_1}+\frac{\lambda_2}{N\xi_2}\\ &=\frac{\lambda_1n_2+\lambda_2n_1}{n_1n_2}=\frac{\lambda_1\xi_2+\lambda_2\xi_1}{N\xi_1\xi_2}\\ \sigma_1&=\frac{\sqrt{\lambda_1n_2+\lambda_2n_1}}{\sqrt{n_1n_2}}=\frac{\sqrt{\lambda_1\xi_2+\lambda_2\xi_1}}{\sqrt{N\xi_1\xi_2}} \end{align} 帰無仮説における標本平均の差の分散について、 \begin{align} \sigma_0^2&=\lambda \left(\frac{1}{n_1}+\frac{1}{n_2}\right)=\frac{\lambda}{N} \left(\frac{1}{\xi_1}+\frac{1}{\xi_2}\right)\\ &=\lambda \left(\frac{n_1+n_2}{n_1n_2}\right)=\frac{\lambda}{N} \left(\frac{\xi_1+\xi_2}{\xi_1\xi_2}\right)\\ &=\frac{N\lambda}{n_1n_2}=\frac{\lambda}{N\xi_1\xi_2}\\ \sigma_0&=\frac{\sqrt{N\lambda}}{\sqrt{n_1n_2}}=\frac{\sqrt\lambda}{\sqrt{N\xi_1\xi_2}} \end{align} 臨床的有意差・有意水準・検出力の関係式より、 \begin{align} \lambda_1-\lambda_2&=Z_{0.5\alpha} \cdot \sigma_0-Z_{1-\beta} \cdot \sigma_1\\ &=Z_{0.5\alpha} \cdot \frac{\sqrt\lambda}{\sqrt{N\xi_1\xi_2}}-Z_{1-\beta} \cdot \frac{\sqrt{\lambda_1\xi_2+\lambda_2\xi_1}}{\sqrt{N\xi_1\xi_2}}\tag{1} \end{align} 式 $(1)$ を総サンプルサイズ $N$ について解くと、 \begin{align} \sqrt N&=\frac{Z_{0.5\alpha}\sqrt\lambda-Z_{1-\beta}\sqrt{\lambda_1\xi_2+\lambda_2\xi_1}}{ \left(\lambda_1-\lambda_2\right)\sqrt{\xi_1\xi_2}}\\ N&=\frac{ \left(Z_{0.5\alpha}\sqrt\lambda-Z_{1-\beta}\sqrt{\lambda_1\xi_2+\lambda_2\xi_1}\right)^2}{ \left(\lambda_1-\lambda_2\right)^2 \cdot \xi_1\xi_2} \end{align} $\blacksquare$

問題3.5.4:検出力の公式

式 $(1)$ を検出力 $Z_{1-\beta}$ について解くと、 \begin{gather} Z_{1-\beta} \cdot \frac{\sqrt{\lambda_1\xi_2+\lambda_2\xi_1}}{\sqrt{N\xi_1\xi_2}}=Z_{0.5\alpha} \cdot \frac{\sqrt\lambda}{\sqrt{N\xi_1\xi_2}}- \left(\lambda_1-\lambda_2\right)\\ Z_{1-\beta}=\frac{Z_{0.5\alpha}\sqrt\lambda- \left(\lambda_1-\lambda_2\right)\sqrt{N\xi_1\xi_2}}{\sqrt{\lambda_1\xi_2+\lambda_2\xi_1}} \end{gather} $\blacksquare$

問題3.5.5:サンプルサイズ設計の例題

サンプルサイズ設計の公式に与えられた数値 \begin{gather} \alpha=0.05 \quad 1-\beta=0.9\\ \lambda_1=0.20 \quad \lambda_2=0.35\\ \xi_1=\xi_2=\frac{1}{2}\\\lambda=\frac{0.20+0.35}{2}=0.275 \end{gather} を代入すると、 \begin{align} N&=\frac{ \left(1.960 \cdot \sqrt{0.275}+1.282 \cdot \sqrt{0.20 \cdot 0.5+0.35 \cdot 0.5}\right)^2}{ \left(0.35-0.20\right)^2 \cdot 0.5 \cdot 0.5}\\ &\cong513.7 \end{align} $N$ は、これを満たす最小の偶数として、 \begin{align} N=514 \end{align} $\blacksquare$

問題3.5.6:検出力算出の例題

検出力の公式に与えられた数値 \begin{gather} \alpha=0.05 \quad N=200\\ \lambda_1=0.20 \quad \lambda_2=0.35\\ \xi_1=\xi_2=\frac{1}{2}\\\lambda=\frac{0.20+0.35}{2}=0.275 \end{gather} を代入すると、 \begin{align} Z_{1-\beta}&=\frac{1.960 \cdot \sqrt{0.275}- \left(0.35-0.20\right) \cdot \sqrt{200 \cdot 0.5 \cdot 0.5}}{\sqrt{0.20 \cdot 0.5+0.35 \cdot 0.5}}\\ &\cong-0.063 \end{align} 標準正規分布表で $-0.063$ が上側何%点にあたるかを調べると、 \begin{align} 1-\beta=0.525\ =52.5\% \end{align} $\blacksquare$

参考文献

  • ジョン・ラチン 著, 宮岡 悦良 監訳, 遠藤 輝, 黒沢 健, 下川 朝有, 寒水 孝司 訳. 医薬データのための統計解析. 共立出版, 2020, p.123-124

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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