本稿では、横断研究やコホート研究における有病率・発生割合の信頼区間の導出を行っています。本稿における方法は、二項分布の正規近似にもとづく方法で、最も基本的な方法です。
なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。
- スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。
- 曝露(発症)状況を表す右下の添え字は、「0」である場合($n_0,\pi_0$ など)や「2」である場合($n_2,\pi_2$ など)がありますが、どちらも「非曝露群(コントロール群)」を表しています。
- 漸近的な性質を用いる際は、①中心極限定理が成り立つ、②漸近分散を推定する際に、母数をその一致推定量で置き換えることができるということが成り立つと仮定しています。
【定理】有病率・発生割合の信頼区間(二項分布の正規近似)
【定理】
有病率・発生割合の信頼区間(二項分布の正規近似)
Confidence Intervals of Prevalence and Incidence Proportion Based on Normal Approximation to the Binomial Distribution
マッチングなしのコホート研究における有病率・発生割合の $100 \left(1-\alpha\right)\%$ 信頼区間は、漸近的に \begin{gather} 100 \left(1-\alpha\right)\%\ \mathrm{C.I.}= \left[\pi_L,\pi_U\right] \end{gather} で与えられる。 ただし、 \begin{gather} \pi_L=\hat{\pi}-\hat{\sigma} \cdot Z_{0.5\alpha} \quad \pi_U=\hat{\pi}+\hat{\sigma} \cdot Z_{0.5\alpha}\\ {\hat{\sigma}}^2=\frac{\hat{\pi} \left(1-\hat{\pi}\right)}{n} \quad \hat{\sigma}=\mathrm{\widehat{S.E.}} \left(\hat{\pi}\right) \end{gather}
導出:二項分布の正規近似にもとづく方法
二項分布の正規近似により、標本比率は漸近的に \begin{gather} \hat{\pi} \sim \mathrm{N} \left[\pi,\frac{\pi \left(1-\pi\right)}{n}\right] \end{gather} 標本比率の分散の一致推定量は、 \begin{gather} \hat{V} \left(\hat{\pi}\right)=\frac{\hat{\pi} \left(1-\hat{\pi}\right)}{n} \end{gather} 標本比率の漸近的な標準誤差 $\mathrm{\widehat{S.E.}} \left(\hat{\pi}\right)=\hat{\sigma}$ は、 \begin{gather} \hat{\sigma}=\frac{\sqrt{\hat{\pi} \left(1-\hat{\pi}\right)}}{\sqrt n} \end{gather} したがって、母比率の $100 \left(1-\alpha\right)\%$ 上下信頼限界は、 \begin{gather} \pi_L=\hat{\pi}-\hat{\sigma} \cdot Z_{0.5\alpha}\\ \pi_U=\hat{\pi}+\hat{\sigma} \cdot Z_{0.5\alpha} \end{gather} $\blacksquare$
参考文献
- マーティン・ガードナー, ダグラス・アルトマン 著, 舟喜 光一, 折笠 秀樹 共訳. 信頼性の統計学:信頼区間および統計ガイドライン. サイエンティスト社, 2001, p.33-34
- ケネス・ロスマン 著, 矢野 栄二, 橋本 英樹, 大脇 和浩 監訳. ロスマンの疫学. 篠原出版新社, 2013, p.230-231
0 件のコメント:
コメントを投稿