本稿では、コホート研究の研究デザインのうち、①平均発生率を曝露効果の指標とする、②層化なしのデザイン・パターンについて、その分割表の形式、統計モデル、曝露効果の指標の定義をまとめています。
なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。
- スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。
- 曝露(発症)状況を表す右下の添え字は、「0」である場合($n_0,\pi_0$ など)や「2」である場合($n_2,\pi_2$ など)がありますが、どちらも「非曝露群(コントロール群)」を表しています。
分割表の形式
研究期間を \begin{gather} S \left[\mathrm{Time}\right] \end{gather} 曝露群と非曝露群の観察対象人数をそれぞれ、 \begin{gather} n_1 \quad n_0\\ N=n_1+n_0 \end{gather} 研究期間内にそれぞれの集団内で発生したイベント数を \begin{gather} a \left(=d_1\right) \quad b \left(=d_0\right) \end{gather} 曝露群の $i$ 番目の対象者がリスクに曝露されていた時間(リスク人・時)を \begin{gather} t_i \quad i=1,2, \cdots ,n_1 \end{gather} 非曝露群の $j$ 番目の対象者がリスクに曝露されていた時間(リスク人・時)を \begin{gather} t_j \quad j=1,2, \cdots ,n_0 \end{gather} 曝露群と非曝露群の総リスク人・時をそれぞれ、 \begin{gather} T_1=\sum_{i=1}^{n_1}t_i \quad T_0=\sum_{j=1}^{n_0}t_j\\ \end{gather} 両群を合わせた全体としての総リスク人・時を \begin{gather} T=T_1+T_0 \end{gather} 両群を合わせた全体としての総イベント発生数を \begin{gather} M=a+b \end{gather} とする。
発生数 $ \left(D\right)$ | リスク人・時 | |
---|---|---|
曝露群 $ \left(E\right)$ | $a$ | $T_1$ |
非曝露群 $(\bar{E})$ | $b$ | $T_0$ |
合計 | $M$ | $T$ |
統計モデル
曝露群と非曝露群の観察人・時 \begin{gather} T_1 \quad T_0 \end{gather} が固定されているという条件の下で 各群のイベント発生数 $a,b$ が互いに独立に、パラメータ(単位時間あたりの平均発生回数)がそれぞれ \begin{align} \lambda_1 \quad \lambda_0 \end{align} である ポアソン分布 \begin{align} a \left(=d_1\right) \sim \mathrm{Po} \left(\lambda_1\right) \quad b \left(=d_0\right) \sim \mathrm{Po} \left(\lambda_0\right) \end{align} に従うとする。 ただし、各群のイベント発生率は研究期間を通じて一定であるとする。
曝露効果の指標
発生率
\begin{gather} {\mathrm{IR}}_1=\lambda_1 \quad {\mathrm{IR}}_0=\lambda_0\\ {\mathrm{\widehat{IR}}}_1={\hat{\lambda}}_1=\frac{a}{T_1} \quad {\mathrm{\widehat{IR}}}_0={\hat{\lambda}}_0=\frac{b}{T_0} \end{gather}
発生率差
\begin{gather} \mathrm{IRD}=\lambda_1-\lambda_0\\ \mathrm{\widehat{IRD}}={\hat{\lambda}}_1-{\hat{\lambda}}_0=\frac{a}{T_1}-\frac{b}{T_0} \end{gather}
発生率比
\begin{gather} \mathrm{IRR}=\frac{\lambda_1}{\lambda_0}\\ \mathrm{\widehat{IRR}}=\frac{{\hat{\lambda}}_1}{{\hat{\lambda}}_0}=\frac{aT_0}{bT_1} \end{gather}
寄与危険割合
\begin{gather} \mathrm{ARP}=\frac{\lambda_1-\lambda_0}{\lambda_1}\\ \mathrm{\widehat{ARP}}=\frac{{\hat{\lambda}}_1-{\hat{\lambda}}_0}{{\hat{\lambda}}_1}=\frac{\frac{a}{T_1}-\frac{b}{T_0}}{\frac{a}{T_1}} \end{gather}
検定仮説
帰無仮説
\begin{gather} H_0:\lambda_1=\lambda_0 \end{gather}
対立仮説
①両側仮説 \begin{gather} H_1:\lambda_1 \neq \lambda_0 \end{gather} ②右側仮説 \begin{align} H_1:\lambda_1 \gt \lambda_0 \end{align} ③左側仮説 \begin{align} H_1:\lambda_1 \lt \lambda_0 \end{align}
参考文献
- ケネス・ロスマン 著, 矢野 栄二, 橋本 英樹, 大脇 和浩 監訳. ロスマンの疫学. 篠原出版新社, 2013, p.236
- 丹後 俊郎, 松井 茂之 編集. 医学統計学ハンドブック. 朝倉書店, 2018, p.508-510
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