正規分布の母標準偏差の不偏推定量の導出

公開日:

【2023年4月3週】 【B000】数理統計学 【B070】統計的推定

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本稿では、正規分布の母標準偏差の不偏推定量を導出しています。実用上は標本不偏分散の正の平方根を母集団の標準偏差の推定値として採用することがほとんどですが、本稿で示すように、その値は厳密には不偏推定量にはなりません。

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【命題】正規分布の母標準偏差の不偏推定量

【命題】
正規分布の母標準偏差の不偏推定量
Unbiased Estimator of Standard Deviation of Normal Distribution

母平均が既知の正規分布 N(μ,σ2) からの大きさ n の無作為標本を X={X1,X2,,Xn} とし、 標本平均と標本分散を X¯=1ni=1nXiS2=1ni=1n(XiX¯)2 とするとき、 母標準偏差の不偏推定量は、 σ^=n2Γ(n2)Γ(n+12)S で与えられる。

証明

証明

標本分散を Y=nσ2S2 と変数変換すると、正規分布の標本分散の性質より、 Yχ2(n1) 期待値の定義式 E(Y)=yf(y)dy より、 E(Y)=0y12n2Γ(n2)yn21ey2dy=12n2Γ(n2)0yn+121ey2dy ガンマ関数の公式 Γ(α)βα=0xα1eβxdx より、α=n+12,β=12 とすると、 E(Y)=12n2Γ(n2)Γ(n+12)2n+12=Γ(n+12)Γ(n2)212=Γ(n+12)Γ(n2)2 ここで、Y=nσSS=σnY より、 E(S)=E(σnY)=σnE(Y)=2nΓ(n+12)Γ(n2)σ 不偏推定量の定義 E(θ^)=θ より、調整のための定数を c とすると、 E(cS)=2nΓ(n+12)Γ(n2)cσ=σc=n2Γ(n2)Γ(n+12)

参考文献

  • 小寺 平治 著. 数理統計:明解演習. 共立出版, 1986, p.119

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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