正規分布の標本分布の導出

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【2023年4月2週】 【B000】数理統計学 【B060】標本分布

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本稿では、正規分布の標本平均の分布と正規分布の標本平均・標本値を標準化した値の分布がそれぞれ正規分布とカイ2乗分布であることを証明しています。これらの事実は、信頼区間の導出や仮説検定の手法を考えるうえでの基礎となります。

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【定理】正規分布の標本平均の分布

【定理】
正規分布の標本平均の分布
Sampling Distribution of the Sample Mean of Normal Distribution

正規分布 $\mathrm{N} \left(\mu,\sigma^2\right)$ からの大きさ $n$ の無作為標本を \begin{align} \boldsymbol{X}= \left\{X_1,X_2, \cdots ,X_n\right\} \end{align} とし、 標本平均を \begin{align} \bar{X}=\frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}X_i \end{align} とするとき、 標本平均は、正規分布 \begin{align} \bar{X} \sim \mathrm{N} \left(\mu,\frac{\sigma^2}{n}\right) \end{align} に従う。

証明

証明

正規分布のモーメント母関数の公式より、$X_i$ のモーメント母関数は、 \begin{align} M_{X_i} \left(\theta\right)=\mathrm{exp} \left(\mu\theta+\frac{1}{2}\sigma^2\theta^2\right) \end{align} モーメント母関数の定義式 $M_X \left(\theta\right)=E \left(e^{\theta X}\right)$ より、標本平均 $\bar{X}$ のモーメント母関数は、 \begin{align} M_{\bar{X}} \left(\theta\right)&=E \left(e^{\theta\bar{X}}\right)\\ &=E \left(e^{\theta \cdot \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}X_i}\right)\\ \end{align} モーメント母関数の性質 $M_Y \left(\theta\right)=\prod_{i=1}^{n}{M_{X_i} \left(\theta\right)}$ より、 \begin{align} M_{\bar{X}} \left(\theta\right)&=\prod_{i=1}^{n}E \left(e^{\frac{\theta}{n}X_i}\right)\\ &=\prod_{i=1}^{n}{M_X \left(\frac{\theta}{n}\right)}\\ &=\prod_{i=1}^{n}{\mathrm{exp} \left(\mu \cdot \frac{\theta}{n}+\frac{1}{2n^2}\sigma^2\theta^2\right)}\\ &=\mathrm{exp} \left\{n \left(\mu \cdot \frac{\theta}{n}+\frac{1}{2n^2}\sigma^2\theta^2\right)\right\}\\ &=\mathrm{exp} \left(\mu\theta+\frac{1}{2n}\sigma^2\theta^2\right) \end{align} これは、正規分布のモーメント母関数において、 \begin{align} \mu\rightarrow\mu \quad \sigma^2\rightarrow\frac{\sigma^2}{n} \quad X\rightarrow\bar{X} \end{align} と置き換えたものとみなすことができる。 したがって、モーメント母関数の一意性により、標本平均は、正規分布 \begin{align} \bar{X} \sim \mathrm{N} \left(\mu,\frac{\sigma^2}{n}\right) \end{align} に従う。 $\blacksquare$

【定理】標本平均・標本値を標準化した値の分布

【定理】
標本平均・標本値を標準化した値の分布
Chi-squared Distribution and Distribution of Standardized Values and Sample Mean

正規分布 $\mathrm{N} \left(\mu,\sigma^2\right)$ からの大きさ $n$ の無作為標本を \begin{align} \boldsymbol{X}= \left\{X_1,X_2, \cdots ,X_n\right\} \end{align} とし、 標本平均を \begin{align} \bar{X}=\frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}X_i \end{align} とするとき、 (I)標本平均を標準化した値の2乗値 \begin{align} \chi^2=\frac{n \left(\bar{X}-\mu\right)}{\sigma^2} \end{align} は自由度1の $\chi^2$分布 $\chi^2 \left(1\right)$ に従う。 (II)標本値を標準化した値の2乗和 \begin{align} \chi^2=\sum_{i=1}^{n}\frac{ \left(X_i-\mu\right)^2}{\sigma^2} \end{align} は自由度 $n$ の $\chi^2$分布 $\chi^2 \left(n\right)$ に従う。

証明

証明

(I)正規分布の標本平均は、 \begin{align} \bar{X} \sim \mathrm{N} \left(\mu,\frac{\sigma^2}{n}\right) \end{align} $Z=\frac{\sqrt n \left(\bar{X}-\mu\right)}{\sigma}$ とすると、正規分布の標準化の性質より、 \begin{align} Z \sim \mathrm{N} \left(0,1\right) \end{align} $\chi^2$分布の定義より、 \begin{align} Z^2=\frac{n \left(\bar{X}-\mu\right)}{\sigma^2} \sim \chi^2 \left(1\right) \end{align} $\blacksquare$

(II)$Z_i=\frac{X_i-\mu}{\sigma}$ とすると、正規分布の標準化の性質より、 \begin{align} Z_i \sim \mathrm{N} \left(0,1\right) \end{align} $\chi^2$分布の定義より、 \begin{align} Z_i^2=\frac{ \left(X_i-\mu\right)^2}{\sigma^2} \sim \chi^2 \left(1\right) \end{align} $\chi^2$分布の再生性より、 \begin{align} \chi^2=\sum_{i=1}^{n}\frac{ \left(X_i-\mu\right)^2}{\sigma^2} \sim \chi^2 \left(n\right) \end{align} $\blacksquare$

参考文献

  • 野田 一雄, 宮岡 悦良 著. 入門・演習数理統計. 共立出版, 1990, p.175-177

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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