大標本における母比率に関する検定の導出

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【2023年4月4週】 【B000】数理統計学 【B080】統計的仮説検定

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本稿では、大標本における母比率に関する検定を導出しています。

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  • Zα は標準正規分布の上側 100α% 点を表しています。

データの形式

確率変数 X が二項分布 B(n,p) に従い、 標本比率を p^=Xn とし、 サンプルサイズが十分に大きく、中心極限定理が成り立つとする。

【定理】大標本における母比率に関する検定

【定理】
大標本における母比率に関する検定
Population Proportion with Large-Sample

この二項分布の母比率 p に関する検定問題
(I)両側検定 H0:p=p0H1:pp0 (II-A)片側検定A H0:pp0H1:p>p0 (II-B)片側検定B H0:pp0H1:p<p0 を考える場合、 検定統計量を Z0=n(p^p0)p0(1p0) として、 (I)両側検定
以下の棄却域と検定関数 φ(θ;x) をもつ検定は有意水準を α とする一様最強力不偏検定となる。 φ(θ;x)={Z0.5αZ0Z0.5α0:Hold H0Z0Z0.5αorZ0.5αZ01:Reject H0 (II)片側検定
以下の棄却域と検定関数 φ(θ;x) をもつ検定は有意水準を α とする一様最強力検定となる。
(II-A)片側検定A φ(θ;x)={Z0<Zα0:Hold H0ZαZ01:Reject H0 (II-B)片側検定B φ(θ;x)={Zα<Z00:Hold H0Z0Zα1:Reject H0

Step.1 尤度比の算出

二項分布の母比率の最尤推定量は、 p^=Xn 両仮説の尤度比 λ を計算すると(算出過程は省略)、 λ=L(p=p0;x)L(p=p^;x)=f(x;p=p0)f(x;p=p^)==h(p^) したがって、検定統計量 T(X)=Xn が考えられる。

Step.2 検定統計量の対立仮説・帰無仮説における分布

(i)対立仮説における分布
二項分布の標本比率の漸近分布は、 p^N[p,p(1p)n] (ii)帰無仮説における分布
帰無仮説 H0:p=p0 における標本比率の漸近分布は、 p^N[p0,p0(1p0)n] 帰無仮説において、標本比率 p^ を標準化した値を Z0=n(p^p0)p0(1p0) とすると、 標準化変換の性質より、 Z0N(0,1)

Step.3 検定関数と棄却域の型

(I)両側検定
ネイマン・ピアソンの基本定理により、次の棄却域と検定関数 φ(θ;x) をもつ検定が漸近的に有意水準を α とする一様最強力不偏検定となる。
(1)φ(θ;x)={aT(X)b0:Hold H0T(X)<aorb<T(X)1:Reject H0 (II)片側検定
ネイマン・ピアソンの基本定理と単調尤度比の原理により、次の棄却域と検定関数 φ(θ;x) をもつ検定が漸近的に有意水準を α とする一様最強力検定となる。
検定A (2)φ(θ;x)={T(X)<a0:Hold H0aT(X)1:Reject H0 検定B (3)φ(θ;x)={b<T(X)0:Hold H0T(X)b1:Reject H0

Step.4 棄却域の設定

(I)両側検定
パーセント点の定義と標準正規分布の対称性から、 P(Z0.5αZ0Z0.5α)=1α したがって、式 (1) において、a=Z0.5α,b=Z0.5α とすると、 φ(θ;x)={Z0.5αZ0Z0.5α0:Hold H0Z0Z0.5αorZ0.5αZ01:Reject H0 (II-A)片側検定A
パーセント点の定義より、 P(Z0Zα)=1α したがって、式 (2) において、a=Zα とすると、 φ(θ;x)={Z0<Zα0:Hold H0ZαZ01:Reject H0 (II-B)片側検定B
パーセント点の定義より、 P(ZαZ0)=1α したがって、式 (3) において、b=Zα とすると、 φ(θ;x)={Zα<Z00:Hold H0Z0Zα1:Reject H0

参考文献

  • 小寺 平治 著. 数理統計:明解演習. 共立出版, 1986, p.129-130
  • 野田 一雄, 宮岡 悦良 著. 入門・演習数理統計. 共立出版, 1990, p.278-279

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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