多変量正規分布の定義と概要

公開日:

【2023年4月1週】 【B000】数理統計学 【B050】多次元確率分布

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本稿では、多変量正規分布と二変量正規分布の定義と概要についてまとめています。同時確率密度関数であることの証明、二変量が無相関ならば独立であることの証明、期待値ベクトルと分散・共分散行列、モーメント母関数の紹介が含まれます。

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多変量正規分布

同時確率密度関数

k 次元ベクトル μ={μ1μ2μk} k 次正値対称行列 Σ={σ12σ12σ1kσ21σ22σ2kσk1σk2σk2}σij=σjii,j={1,2,,k}ij を用いて、 k 次元確率変数ベクトル X={X1,X2,X3,,Xk} の同時確率密度関数が f(x)=1(2π)k2|Σ|12exp{12(xu)TΣ1(xu)} AT転置行列A1逆行列|Σ|行列式を表す。 で与えられるとき、 X は、 期待値ベクトル μ、分散・共分散行列 Σk 次元正規分布 または、単に多変量正規分布 multivariate normal distribution に従うという。

略記法

また、k 次元正規分布は、 N(μ,Σ) または、次元を明示して、 Nk(μ,Σ) と略記されることがある。

二変量正規分布

同時確率密度関数

多変量正規分布において、k=2 の場合を二変量正規分布 bivariate normal distribution と呼び、確率変数ベクトル X,Y に対し、期待値ベクトルと分散・共分散行列を μ=(μXμY)Σ=(σX2σXYσYXσY2) X,Y の共分散と相関係数を Cov(X,Y)=σXY=σYXρ とすると、 同時確率密度関数は、 f(x,y)=12πσXσY1ρ2exp{12(1ρ2)Q(x,y)}<x<<y<Q(x,y)=(xμXσx)22ρ(xμX)(yμY)σXσY+(yμYσY)2 で与えられる。

同時確率密度関数であることの証明

証明

(i)すべての x に関して、f(x)0 0<σX,0<σY1σXσY0<ρ2<10<11ρ20<ea0exp{12(1ρ2)Q(x,y)} したがって、 f(x,y)=12πσXσY1ρ2exp{12(1ρ2)Q(x,y)}0

(ii)すべての確率の和が 1
以下のように変数変換すると、 {u=xμXσXv=yμYσY{x=uσX+μXy=vσY+μYx:y:u:v: 変数変換のヤコビアンは、 |J|=|xuyuxvyv|=|σX00σY|=σXσY また、 Q(x,y)=u22ρuv+v2=(uρv)2+(1ρ2)v2 したがって、置換積分法により、 f(x,y)dxdy=12πσXσY1ρ2exp{(uρv)22(1ρ2)v22}σXσYdudv=12π1ρ2exp{(uρv)22(1ρ2)v22}dudv ここで、以下のように変数変換すると、 w=uρv1ρ2u=w1ρ2+ρvu:w:dudw=1ρ2du=1ρ2dw となるので、 置換積分法により、 f(x,y)dxdy=12π1ρ2exp{w22v22}1ρ2dwdv=12πexp{w22}12πexp{v22}dwdv=12πexp{w22}dw12πexp{v22}dv=1 よって、確率密度関数の定義を満たしているため、確率密度関数である。

【定理】二変量正規分布の性質

【定理】
二変量正規分布の性質
A Propaty of Bivariate Normal Distribution

確率変数 X={X,Y} が二変量正規分布 N(μ,Σ) に従うとき、 2変数が無相関であれば、2変数は互いに独立である。

証明:無相関ならば独立であることの証明

証明

無相関の定義 ρ=0 より、同時確率密度関数の定義式に ρ=0 を代入すると、 f(x,y)=12πσXσYexp{12(xμXσx)212(yμYσY)2}=12πσX2exp{(xμX)22σX2}12πσY2exp{(yμY)22σY2} 右辺第1項と右辺第2項の式は、それぞれ、正規分布 N(μX,σX2)N(μY,σY2) の確率密度関数であるとみなすことができる。 これは、確率変数の独立性の定義式 f(x,y)=g(x)h(y) を満たすので、X,Y は互いに独立である。

重要事項のまとめ

略記法

N(μ,Σ)

パラメータ

<μi<0<σi2

同時密度確率関数

f(x)=1(2π)k2|Σ|12exp{12(xu)TΣ1(xu)}

期待値ベクトルと分散・共分散行列

E(X)=μ={μ1μ2μk}Σ={σ12σ12σ1kσ21σ22σ2kσk1σk2σk2}

モーメント母関数

MX(θ)=exp(μTθ+12θTΣθ)

参考文献

  • 野田 一雄, 宮岡 悦良 著. 入門・演習数理統計. 共立出版, 1990, p.156-157
  • 黒木 学 著. 数理統計学:統計的推論の基礎. 共立出版, 2020, p.103-107

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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