本稿では、独立な二項分布に対し、成功数の総数が与えられた下での片方の確率変数の条件付き分布が超幾何分布になることを証明しています。証明自体は、条件付き確率の定義式や確率関数の独立性の定義を用いると簡単に証明することができます。
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【命題】二項分布の和に関する条件付き分布
【命題】
二項分布の和に関する条件付き分布
A Conditional Distribution of Binomial Distribution
確率変数 $X,Y$ がそれぞれ独立に二項分布 \begin{align} X \sim B \left(n_1,p\right) \quad Y \sim B \left(n_2,p\right) \end{align} に従うとき、 確率変数 $X$ と $Y$ の和を \begin{align} Z=X+Y \end{align} とすると、 $Z=z$ が与えられているときの確率変数 $X$ の条件付き分布は、超幾何分布 \begin{align} \left.X\right|Z \sim \mathrm{HG} \left(n_1+n_2,n_1,z\right) \end{align} となる。
証明
二項分布の再生性より、 \begin{align} Z \sim B \left(n_1+n_2,p\right) \end{align} 条件付き確率の定義式 $P \left(x\middle| z\right)=\frac{P \left(Z=x,Z=z\right)}{P \left(Z=z\right)}$ より、 \begin{gather} P \left(x\middle| z\right)=\frac{P \left(Z=x,Y=z-x\right)}{P \left(Z=z\right)}\\ g \left(x\middle| z\right)=\frac{f \left(x,z-x\right)}{k \left(z\right)} \end{gather} 確率関数の独立性の定義 $f \left(x,y\right)=g \left(x\right) \cdot h \left(y\right)$ より、 \begin{align} f \left(x\middle| z\right)&=\frac{g \left(x\right) \cdot h \left(z-x\right)}{k \left(z\right)}\\ &=\frac{{}_{n_1}C_xp^x \left(1-p\right)^{n_1-x} \cdot {}_{n_2}C_{z-x}p^{z-x} \left(1-p\right)^{n_2- \left(z-x\right)}}{{}_{n_1+n_2}C_z \cdot p^z \left(1-p\right)^{n_1+n_2-z}}\\ &=\frac{{}_{n_1}C_x \cdot {}_{n_2}C_{z-x}}{{}_{n_1+n_2}C_z} \end{align} これは、超幾何分布の確率関数 \begin{align} f \left(x\right)=\frac{{}_{k}C_x\times{}_{N-k}C_{n-x}}{{}_{N}C_n} \end{align} において、 \begin{align} N=n_1+n_2 \quad n=z \end{align} と置き換えたものとみなすことができる。 したがって、確率関数の一意性により、確率変数 $X$ の条件付き分布は、超幾何分布 \begin{align} \left.X\right|Z \sim \mathrm{HG} \left(n_1+n_2,n_1,z\right) \end{align} となる。 $\blacksquare$
参考文献
- 野田 一雄, 宮岡 悦良 著. 入門・演習数理統計. 共立出版, 1990, p.111 練習問題 ex.3.2.3
- 黒木 学 著. 数理統計学:統計的推論の基礎. 共立出版, 2020, p.96 演習問題5.2
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