本稿では、離散型一様分布の定義と概要についてまとめています。確率関数であることの証明、累積分布関数の導出、確率関数、期待値・分散、確率母関数、モーメント母関数の紹介が含まれます。
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離散一様分布
定義・意味
標本空間 $\Omega$ が $n$ 個の数 \begin{align} k_1,k_2, \cdots ,k_n \end{align} から成り、 それぞれが同様の確からしさで選ばれるとき、 無作為に選ばれた数 $X$ が従う 離散型確率分布を離散一様分布 discrete uniform distribution と呼ぶ。 通常、$X$ が取り得る値は整数であることが多い。
確率関数
$X$ が整数値のみを取り、その下限値を $a$、上限値を $b$ とし、 \begin{align} \Omega= \left\{a,a+1, \cdots b-1,b\right\} \end{align} であるとすると、 確率関数 $f \left(x\right)$ は、 \begin{align} f \left(x\right)= \left\{\begin{matrix}\displaystyle\frac{1}{b-a+1}&a \le x \le b\\0&\mathrm{other}\\\end{matrix}\right. \end{align} ただし、$n=b-a+1$ で与えられる。 特に、$a=1,b=n$ のときは、 \begin{align} f \left(x\right)= \left\{\begin{matrix}\displaystyle\frac{1}{n}&1 \le x \le n\\0&\mathrm{other}\\\end{matrix}\right. \end{align}
略記法
また、離散一様分布は、 \begin{align} \begin{matrix}\mathrm{DU} \left(a,b\right)& \left(a \le x \le b\right)\\\mathrm{DU} \left(n\right)& \left(1 \le x \le n\right)\\\end{matrix} \end{align} などと略記されることがある。
確率関数であることの証明
(i)すべての $x$ に関して、$f \left(x\right) \geq 0$ \begin{align} f \left(x\right)=\frac{1}{n} \geq 0 \end{align} (ii)すべての確率の和が1 \begin{align} \sum_{x=a}^{b}f \left(x\right)=\sum_{x=a}^{b}\frac{1}{n}=n \cdot \frac{1}{n}=1 \end{align} よって、確率関数の定義を満たしているため、確率関数である。 $\blacksquare$
【公式】離散一様分布の累積分布関数
【公式】
離散一様分布の累積分布関数
Cumulative Distribution Function of Discrete Uniform Distribution
離散一様分布 $\mathrm{DU} \left(a,b\right)$ の累積分布関数は、 \begin{align} F \left(x\right)= \left\{\begin{matrix}0&x \lt a\\\displaystyle\frac{ \left\lfloor x\right\rfloor-a+1}{n}&a \le x \le b\\1&b \lt x\\\end{matrix}\right. \end{align} で与えられる。 ただし、$ \left\lfloor \cdot \right\rfloor$ は、床関数(ガウス記号)であり、$ \left\lfloor x\right\rfloor$ は「$x$ を超えない最大の整数」を表す。
導出
累積分布関数の定義式 $F \left(x\right)=P \left(X \le x\right)$ より、
(i)$x \lt a$ のとき、$f \left(x\right)=0$ より、
\begin{align}
F \left(x\right)=\sum_{k=-\infty}^{x}0=0
\end{align}
(ii)$a \le x \le b$ のとき
$x$ は定義上、整数値以外を取り得ない $f \left(x\right)=0$ ので、累積確率は、$x=a,a+1, \cdots b-1,b$ のときのみ加算される階段関数となり、区間 $ \left[a,x\right]$ において、実質的に意味を持つ上限値は $ \left\lfloor x\right\rfloor$ となる。
したがって、 \begin{align} F \left(x\right)=\sum_{k=a}^{ \left\lfloor x\right\rfloor}\frac{1}{n}=\frac{ \left\lfloor x\right\rfloor-a+1}{n} \end{align} (iii)$b \lt x$ のとき、$f \left(x\right)=0$ より、 \begin{align} F \left(x\right)=\sum_{k=a}^{b}\frac{1}{n}=\frac{b-a+1}{n}=\frac{n}{n}=1 \end{align} したがって、 \begin{align} F \left(x\right)= \left\{\begin{matrix}0&x \lt a\\\displaystyle\frac{ \left\lfloor x\right\rfloor-a+1}{n}&a \le x \le b\\1&b \lt x\\\end{matrix}\right. \end{align} $\blacksquare$
重要事項のまとめ
略記法
\begin{align} \begin{matrix}\mathrm{DU} \left(a,b\right)& \left(a \le x \le b\right)\\\mathrm{DU} \left(n\right)& \left(1 \le x \le n\right)\\\end{matrix} \end{align}
パラメータ
\begin{gather} a= \left\{ \cdots ,-1,0,1, \cdots \right\}\\ b= \left\{ \cdots ,-1,0,1, \cdots \right\} \end{gather} ただし、$n=b-a+1$
確率関数
\begin{align} f \left(x\right)= \left\{\begin{matrix}\displaystyle\frac{1}{n}&a \le x \le b\\0&\mathrm{other}\\\end{matrix}\right. \end{align}
累積分布関数
\begin{align} F \left(x\right)= \left\{\begin{matrix}0&x \lt a\\\displaystyle\frac{ \left\lfloor x\right\rfloor-a+1}{n}&a \le x \le b\\1&b \lt x\\\end{matrix}\right. \end{align}
期待値
\begin{align} E \left(X\right)=\frac{a+b}{2} \end{align}
分散
\begin{align} V \left(X\right)=\frac{n^2-1}{12} \end{align}
確率母関数
\begin{align} G_X \left(\theta\right)=\frac{1}{n} \cdot \frac{1-\theta^n}{1-\theta} \end{align}
モーメント母関数
\begin{align} M_X \left(\theta\right)=\frac{e^\theta}{n} \cdot \frac{1-e^{n\theta}}{1-e^\theta} \end{align}
参考文献
- 稲垣 宣生 著. 数理統計学. 裳華房, 2003, p.26
- 久保川 達也 著, 新井 仁之, 小林 俊行, 斎藤 毅, 吉田 朋広 編. 現代数理統計学の基礎. 共立出版, 2017, p.29-30
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