離散型一様分布の期待値と分散の導出

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【2023年3月3週】 【B000】数理統計学 【B030】離散型の確率分布

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本稿では、①定義に沿った方法、②確率母関数を用いる方法、③モーメント母関数を用いる方法の3通りの方法で、離散型一様分布の期待値と分散を導出しています。実用上は①の方法が最も簡単ですが、②・③の方法の場合、他の確率分布とは少し変わった考え方をする必要があります。

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【公式】離散型一様分布の期待値と分散

【公式】
離散型一様分布の期待値と分散
Expected Value and Variance of Discrete Uniform Distribution

離散一様分布 DU(n) の期待値 E(X) と分散 V(X) は、 E(X)=n+12V(X)=n2112 で与えられる。

導出法①:定義に沿った方法

導出

(i)期待値
期待値の定義式 E(X)=x=xf(x) より、 E(X)=x=1nx1n=1nx=1nx 自然数の和の公式 x=1nx=n(n+1)2 より、 E(X)=1nn(n+1)2=n+12

(ii)分散
2乗の期待値の定義式 E(X2)=x=x2f(x) より、 E(X2)=x=1nx21n=1nx=1nx2 自然数の2乗和の公式 x=1nx2=n(n+1)(2n+1)6 より、 E(X2)=1nn(n+1)(2n+1)6=(n+1)(2n+1)6 分散の公式 V(X)=E(X2){E(X)}2 より、 V(X)=(n+1)(2n+1)6(n+12)2=2n2+3n+16n2+2n+14=2(2n2+3n+1)3(n2+2n+1)12=4n2+6n+23n26n312=n2112

導出法②:確率母関数を用いる方法

導出

(i)期待値
確率母関数の定義式 GX(θ)=x=0θxf(x) より、 GX(θ)=x=1nθx1n=1n(θ+θ2++θn) 確率母関数の1階微分を求めると、 GX(1)(θ)=1nx=1nxθx1=1n(1+2θ++nθn1) 1次モーメントと確率母関数の関係 GX(1)(1)=E(X) より、 E(X)=1nx=1nx=1n(1+2++n) 自然数の和の公式 x=1nx=n(n+1)2 より、 E(X)=1nn(n+1)2=n+12

(ii)分散
確率母関数の2階微分を求めると、 GX(2)(θ)=1nx=1nx(x1)θx2=1n{2+6θ++n(n1)θn2} 2次階乗モーメントと確率母関数の関係 GX(2)(1)=E{X(X1)} より、 E{X(X1)}=1nx=1nx(x1)=1n(x=1nx2x=1nx) 自然数の和の公式自然数の2乗和の公式より、 x=1nx=n(n+1)2x=1nx2=n(n+1)(2n+1)6 したがって、 E{X(X1)}=1n{n(n+1)(2n+1)6n(n+1)2}=(n+1)(2n+1)6n+12 分散の公式 V(X)=E{X(X1)}+E(X){E(X)}2 より、 V(X)=(n+1)(2n+1)6n+12+n+12(n+12)2=n2112

導出法③:モーメント母関数を用いる方法

導出

(i)期待値
モーメント母関数の定義式 MX(θ)=x=eθxf(x) より、 MX(θ)=x=1neθx1n=1n(eθ+e2θ++enθ) モーメント母関数の1階微分を求めると、 MX(1)(θ)=1nx=1nxeθ=1n(eθ+2e2θ++nenθ) 1次モーメントとモーメント母関数の関係 MX(1)(0)=E(X) より、 E(X)=1nx=1nx=1n(1+2++n) 自然数の和の公式 x=1nx=n(n+1)2 より、 E(X)=1nn(n+1)2=n+12

(ii)分散
モーメント母関数の2階微分を求めると、 MX(2)(θ)=1nx=1nx2eθ=eθn(1+4++n2) 2次モーメントとモーメント母関数の関係 MX(2)(0)=E(X2) より、 E(X2)=1nx=1nx2 自然数の2乗和の公式 x=1nx2=n(n+1)(2n+1)6 より、 E(X2)=1nn(n+1)(2n+1)6=(n+1)(2n+1)6 分散の公式 V(X)=E(X2){E(X)}2 より、 V(X)=(n+1)(2n+1)6(n+12)2=n2112

参考文献

  • 稲垣 宣生 著. 数理統計学. 裳華房, 2003, p.26
  • 久保川 達也 著, 新井 仁之, 小林 俊行, 斎藤 毅, 吉田 朋広 編. 現代数理統計学の基礎. 共立出版, 2017, p.29-30, p.50 演習問題 問1

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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