本稿では、指数分布の定義と概要についてまとめています。確率密度関数であることの証明、累積分布関数の導出、期待値・分散、モーメント母関数、再生性の紹介が含まれます。
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指数分布
定義・意味
単位時間あたり平均 $\lambda$ 回発生する事象があるとき、 その事象が起こってから、次にその事象が起こるまでの間隔 $X$ が従う連続型確率分布を指数分布 exponential distribution という。
確率密度関数
確率密度関数 $f(x)$ は、 \begin{align} f \left(x\right)= \left\{\begin{matrix}\lambda e^{-\lambda x}&0 \le x\\0&\mathrm{other}\\\end{matrix}\right. \end{align} で与えられる。
略記法
また、指数分布は、 \begin{align} \mathrm{Ex} \left(\lambda\right) \end{align} と略記されることがある。
確率密度関数であることの証明
(i)すべての $x$ に関して、$f \left(x\right) \geq 0$
\begin{align}
0 \lt \lambda \quad 0 \lt e^a
\end{align}
したがって、
\begin{align}
f \left(x\right)=\lambda e^{-\lambda x} \gt 0
\end{align}
(ii)すべての確率の和が1
\begin{align}
\int_{-\infty}^{\infty}f \left(x\right)dx&=\int_{0}^{\infty}{\lambda e^{-\lambda x}dx}\\
&= \left[-\frac{1}{\lambda} \cdot \lambda e^{-\lambda x}\right]_0^\infty\\
&= \left[-e^{-\lambda x}\right]_0^\infty\\
&=- \left(\lim_{x\rightarrow\infty}{\frac{1}{e^x}}-\frac{1}{e^0}\right)\\
&=1
\end{align}
よって、確率密度関数の定義を満たしているため、確率密度関数である。
$\blacksquare$
【公式】指数分布の累積分布関数
【公式】
指数分布の累積分布関数
Cumulative Distribution Function of Exponential Distribution
指数分布 $\mathrm{Ex} \left(\lambda\right)$ の累積分布関数は、 \begin{align} F \left(x\right)= \left\{\begin{matrix}0&x \lt 0\\1-e^{-\lambda x}&0 \le x\\\end{matrix}\right. \end{align} で与えられる。
導出
累積分布関数の定義式 $F \left(x\right)=\int_{-\infty}^{x}f \left(t\right)dt$ より、
(i)$x \lt 0$ のとき
\begin{align}
F \left(x\right)=\int_{-\infty}^{x}f \left(t\right)dt=\int_{-\infty}^{x}{0 \cdot d t}=0
\end{align}
(ii)$0 \le x$ のとき
\begin{align}
F \left(x\right)&=\int_{-\infty}^{0}f \left(t\right)dt+\int_{0}^{x}f \left(t\right)dt\\
&=\int_{-\infty}^{0}{0 \cdot d t}+\int_{0}^{x}{\lambda e^{-\lambda t}dt}\\
&= \left[-\frac{1}{\lambda} \cdot \lambda e^{-\lambda t}\right]_0^x\\
&=- \left(e^{-\lambda x}-e^{-0}\right)\\
&=1-e^{-\lambda x}
\end{align}
したがって、
\begin{align}
F \left(x\right)= \left\{\begin{matrix}0&x \lt 0\\1-e^{-\lambda x}&0 \le x\\\end{matrix}\right.
\end{align}
$\blacksquare$
【定理】指数分布の導出:指数分布とポアソン分布の関係
【定理】
指数分布の導出:指数分布とポアソン分布の関係
Derivation of Exponential Distribution: Relationship between Exponential Distribution and Poisson Distribution
確率変数 $X$ がポアソン分布 \begin{align} X \sim \mathrm{Po} \left(\lambda\right) \end{align} に従うとき、 その事象が $x$ 回生起するまでの時間を $T$ とすると、$T$ は指数分布 \begin{align} T \sim \mathrm{Ex} \left(\lambda\right) \end{align} に従う。
導出
単位時間あたり平均 $\lambda$ 回起こる事象が $t$ 時間で起こる平均回数は、 \begin{align} \lambda t \end{align} ここで、ある固定された時間間隔 \begin{align} \left(0\right., \left.t\right] \end{align} を新たな単位時間とすると、 新たな単位時間の中で事象が $x$ 回生起する確率は、ポアソン分布の定義より、 \begin{align} f \left(x\right)=\frac{ \left(\lambda t\right)^xe^{-\lambda t}}{x!} \end{align} ここで、変数 $T$ をある事象が起こるまでの時間と考えると、単位時間 $t$ の中で事象が起こらない=起こる回数が $x=0$ 回である確率は、 \begin{align} P \left(T \gt t\right)=e^{-\lambda t} \end{align} 逆に、単位時間 $t$ の中で事象が起こる確率は、余事象の確率より、 \begin{align} P \left(T \le t\right)=1-P \left(T \gt t\right)=1-e^{-\lambda t} \end{align} 累積分布関数の定義式 $F \left(t\right)=P \left(T \le t\right)$ より、 \begin{align} F \left(t\right)=1-e^{-\lambda t} \end{align} 累積分布関数と確率密度関数の関係 $f \left(x\right)=\frac{d}{dx}F \left(x\right)$ より、 \begin{align} f \left(t\right)=\lambda e^{-\lambda t} \end{align} これらは、指数分布の累積分布関数と確率密度関数の定義式である。 $\blacksquare$
重要事項のまとめ
略記法
\begin{align} \mathrm{Ex} \left(\lambda\right) \end{align}
パラメータ
\begin{gather} 0 \lt \lambda \end{gather}
確率密度関数
\begin{align} f \left(x\right)= \left\{\begin{matrix}\lambda e^{-\lambda x}&0 \le x\\0&\mathrm{other}\\\end{matrix}\right. \end{align}
累積分布関数
\begin{align} F \left(x\right)= \left\{\begin{matrix}0&x \lt 0\\1-e^{-\lambda x}&0 \le x\\\end{matrix}\right. \end{align}
期待値
\begin{align} E \left(X\right)=\frac{1}{\lambda} \end{align}
分散
\begin{align} V \left(X\right)=\frac{1}{\lambda^2} \end{align}
モーメント母関数
\begin{align} M_X \left(\theta\right)=\frac{\lambda}{\lambda-\theta} \end{align}
無記憶性
指数分布には、無記憶性がある。
参考文献
- 小寺 平治 著. 数理統計:明解演習. 共立出版, 1986, p.58
- 野田 一雄, 宮岡 悦良 著. 入門・演習数理統計. 共立出版, 1990, p.138-140
- 稲垣 宣生 著. 数理統計学. 裳華房, 2003, p.41-43
- 久保川 達也 著, 新井 仁之, 小林 俊行, 斎藤 毅, 吉田 朋広 編. 現代数理統計学の基礎. 共立出版, 2017, p.45-47
- 黒木 学 著. 数理統計学:統計的推論の基礎. 共立出版, 2020, p.112-113
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