本稿では、ブールの不等式を証明しています。
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【定理】ブールの不等式
【定理】
ブールの不等式
Boole’s Inequality
事象 $A_1,A_2, \cdots ,A_n$ について、事象 $A_1,A_2, \cdots ,A_n$ のうちどれか1つでも起きる確率 \begin{align} P \left(A_1 \cup A_2 \cup \cdots \cup A_n\right) \end{align} は、 それぞれが起きる確率の和 \begin{align} P \left(A_1\right)+P \left(A_2\right)+ \cdots +P \left(A_n\right) \end{align} よりも小さい、 すなわち、 \begin{align} P \left(\bigcup_{i=1}^{n}A_i\right) \le \sum_{i=1}^{n}P \left(A_i\right) \end{align} が成り立つ。
証明
任意の自然数 $n$ に関する数学的帰納法によって示す。
(i)$n=1$ のとき、 \begin{align} P \left(A_1\right)=P \left(A_1\right) \end{align} なので、与式は成立する。
(ii)$n=k$ のときに題意が成り立つ、すなわち、 \begin{align} P \left(A_1 \cup A_2 \cup \cdots \cup A_k\right) \le P \left(A_1\right)+P \left(A_2\right)+ \cdots +P \left(A_k\right) \end{align} と仮定する。 確率の加法定理 $P \left(A \cup B\right)=P \left(A\right)+P \left(B\right)-P \left(A \cap B\right)$ より、 \begin{align} P \left(A_1 \cup A_2 \cup \cdots \cup A_k \cup A_{k+1}\right)=P \left(A_1 \cup A_2 \cup \cdots \cup A_k\right)+P \left(A_{k+1}\right)-P \left\{ \left(A_1 \cup A_2 \cup \cdots \cup A_k\right) \cap A_{k+1}\right\} \end{align} 帰納法の仮定と確率の公理 $0 \le P \left(A \cap B\right)$ より、 \begin{gather} P \left(A_1 \cup A_2 \cup \cdots \cup A_n \cup A_{k+1}\right) \le P \left(A_1\right)+P \left(A_2\right)+ \cdots +P \left(A_k\right)+P \left(A_{k+1}\right)\\ P \left(\bigcup_{i=1}^{k+1}A_i\right) \le \sum_{i=1}^{k+1}P \left(A_i\right) \end{gather} したがって、$n=k+1$ のときも題意は成り立つので、数学的帰納法により、任意の自然数において、題意は成り立つ。
等号は、各事象が互いに排反なときに成り立つ。 $\blacksquare$
参考文献
- ブールの不等式の証明と応用例. 高校数学の美しい物語. 2021-03-07. https://manabitimes.jp/math/1252.
- 野田 一雄, 宮岡 悦良 著. 入門・演習数理統計. 共立出版, 1990, p.29 章末問題 1.B.3
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