本稿では、正規分布の定義と概要についてまとめています。確率密度関数であることの証明、期待値・分散、モーメント母関数、再生性の紹介が含まれます。
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正規分布
確率密度関数
確率変数 $X$ の確率密度関数が \begin{gather} \begin{matrix}f \left(x\right)=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma}e^{-\frac{ \left(x-\mu\right)^2}{2\sigma^2}}&-\infty \lt x \lt \infty\\\end{matrix}\\ -\infty \lt \mu \lt \infty \quad 0 \lt \sigma \end{gather} で与えられるとき、 $X$ はパラメータ \begin{align} \mu \quad \sigma^2 \end{align} の正規分布 normal distribution に従うという。
略記法
また、正規分布は、 \begin{align} \mathrm{N} \left(\mu,\sigma^2\right) \end{align} と略記されることがある。
標準正規分布
特に、$\mu=0,\sigma^2=1$ の正規分布を 標準正規分布 standard normal distribution という。 確率変数 $Z$ の確率密度関数は、 \begin{align} \begin{matrix}\phi \left(z\right)=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^{-\frac{z^2}{2}}&-\infty \lt z \lt \infty\\\end{matrix} \end{align} で与えられる。
確率密度関数であることの証明
(i)すべての $x$ に関して、$f \left(x\right) \geq 0$
$0 \lt \sigma\Rightarrow0 \lt \frac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma},0 \lt e^a$ より、
\begin{align}
f \left(x\right)=\frac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma}e^{-\frac{ \left(x-\mu\right)^2}{2\sigma^2}} \geq 0
\end{align}
(ii)すべての確率の和が1
\begin{align}
\int_{-\infty}^{\infty}f \left(x\right)dx&=\int_{-\infty}^{\infty}{\frac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma}\exp \left\{-\frac{ \left(x-\mu\right)^2}{2\sigma^2}\right\}dx}\\
&=\frac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma}\int_{-\infty}^{\infty}\exp \left\{-\frac{ \left(x-\mu\right)^2}{2\sigma^2}\right\}dx
\end{align}
ガウス積分の公式 $\int_{-\infty}^{\infty}{e^{-at^2}dt}=\sqrt{\frac{\pi}{a}}$ より、$a=\frac{1}{2\sigma^2},t=x-\mu$ とすると、
\begin{align}
\int_{-\infty}^{\infty}f \left(x\right)dx=\frac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma} \cdot \sqrt{2\pi}\sigma=1
\end{align}
よって、確率密度関数の定義を満たしているため、確率密度関数である。
$\blacksquare$
重要事項のまとめ
略記法
\begin{align} \mathrm{N} \left(\mu,\sigma^2\right) \end{align}
パラメータ
\begin{gather} -\infty \lt \mu \lt \infty\\ 0 \lt \sigma \end{gather}
確率密度関数
\begin{align} \begin{matrix}f \left(x\right)=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma}e^{-\frac{ \left(x-\mu\right)^2}{2\sigma^2}}&-\infty \lt x \lt \infty\\\end{matrix} \end{align}
期待値
\begin{align} E \left(X\right)=\mu \end{align}
分散
\begin{align} V \left(X\right)=\sigma^2 \end{align}
モーメント母関数
\begin{align} M_X \left(\theta\right)=e^{\mu\theta+\frac{1}{2}\sigma^2\theta^2} \end{align}
再生性
正規分布には、再生性がある。
参考文献
- 小寺 平治 著. 数理統計:明解演習. 共立出版, 1986, p.57
- 野田 一雄, 宮岡 悦良 著. 入門・演習数理統計. 共立出版, 1990, p.126-134
- 竹村 彰通 著. 現代数理統計学. 創文社, 1991, p.30-32
- 稲垣 宣生 著. 数理統計学. 裳華房, 2003, p.36-41
- 久保川 達也 著, 新井 仁之, 小林 俊行, 斎藤 毅, 吉田 朋広 編. 現代数理統計学の基礎. 共立出版, 2017, p.40-42
- 黒木 学 著. 数理統計学:統計的推論の基礎. 共立出版, 2020, p.100-103
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