本稿では、確率論の基本事項である事象の独立性についてまとめています。余事象の独立性、事象の独立性と排反性の関係、条件付き独立、シンプソンのパラドックスなどの定義や意味の紹介が含まれます。
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事象の独立性
ここでは、新しく得た情報が確率に影響を与えない場合を考える。たとえば、サイコロとコインを同時に投げたとき、サイコロの出た目が6である確率は
例題
サイコロ投げで、出た目を観察する。
同様に、
事象の独立性の定義
事象AとBが独立であるということは、条件付き確率をもとにすると、次のようにいえる。
事象
3つの事象
【定義】
事象の独立性
Independence of Events
一般に、事象
例題
2つのサイコロを投げてそれぞれの出た目をみる。
事象A=最初のサイコロの出た目が偶数
事象B=2番目のサイコロの出た目が奇数
事象C=出た目の合計が偶数
事象D=最初のサイコロの出た目が6
とする。
このとき、
このほか、事象の独立性について、次のようなことが成り立つ。
余事象の独立性
【定理】
余事象の独立性
Independence and Complementary Event
事象
(i)事象
事象の独立性と排反性
【命題】
事象の独立性と排反性
Independence and Exclusion of Events
事象
(i)事象
条件付き独立
一般的な独立性と同様、3つの事象
ただ、一般に
シンプソンのパラドックス
1973年の秋に実施されたカルフォルニア大学バークレー校における大学院入学試験において、女性志願者よりも男性志願者の合格率が高いため、女性に対して不利な入学試験が実施されたのではないかとの疑惑が持ち上がったという
志願者 | 合格率 | |
---|---|---|
男性 | ||
女性 |
志願者 | 合格率 | |
---|---|---|
男性 | ||
女性 |
志願者 | 合格率 | |
---|---|---|
男性 | ||
女性 |
表1を見ると、明らかに女性志願者よりも男性志願者の合格率のほうが高くなっており、志願者の性別と合格率は従属していることがわかる。しかし、専攻ごとに合格率を見てみると。表2-1や表2-2より、性別による差異はほとんど見られず、志願者の性別と合格率はほぼ独立であることが確認できる。
このように、1つの集団をいくつかのグループにわけたとき、それらのグループに共通に成り立つ統計的独立関係が、もとの集団のそれと異なる現象をシンプソンのパラドックス Simpson's paradox という。
参考文献
- 野田 一雄, 宮岡 悦良 著. 入門・演習数理統計. 共立出版, 1990, p.17-20
- 東京大学教養学部統計学教室 編. 基礎統計学 1 統計学入門. 東京大学出版会, 1991, p.82-83
- 黒木 学 著. 数理統計学:統計的推論の基礎. 共立出版, 2020, p.32-35
引用文献
- Bickel, P.J., Hammel, E.A. & O'connell, J.W.. Sex bias in graduate admissions: data from berkeley. Science. 1975, 187(4175), p.398-404, doi: 10.1126/science.187.4175.398
- Freedman, D. & Pisani, R.. Statistics. 4th Edition, W.W.Norton & Company, 2007, 701p.
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