本稿では、確率論の基本事項である事象と集合についてまとめています。事象や標本空間、和事象・積事象・余事象、排反、事象の演算規則などの定義や意味の紹介が含まれます。
なお、閲覧にあたっては、以下の点にご注意ください。
- スマートフォンやタブレット端末でご覧の際、数式が見切れている場合は、横にスクロールすることができます。
試行と事象
統計学では、母集団からデータを採取するために、同じ条件の下で繰り返し行うことのできる実験や観測を総称して試行 trial という。例えば、コインを投げて表と裏のどちらが出るかを観察することやサイコロを振ってどの目が出るかを観察することなどが試行にあたる。このとき、コインの場合は「表か裏」、サイコロの場合は「1~6の目」が出ることは知っているが、次の試行の結果がどうなるのかは予め知ることはできない。このような場合の試行のことを確率試行 stochastic trial という。
また、確率試行を行ったときに起こり得る全ての結果の集まりを全事象 total event、または標本空間 sample space といい、
標本空間の部分集合を事象 event といい、
標本空間に含まれる要素は観測値 observed value、根元事象 elementary event、実現値 realized value、単一事象 simple event、標本点 sample point などと呼ばれ、
ただし、実現値や観測値といった言葉は確率試行によって起こった(あるいは、起こるであろう)結果に対して用いられることがある。いっぽう、根元事象という言葉は、ただひとつの標本点から成り、それ以上分割できない事象、すなわち、確率試行によって起こりうる結果の最小単位を強調するために用いられることが多い。根元事象に対して、複数の標本点を含み、いくつかの根元事象に分解できる事象を複合事象 compound event と呼ぶ。サイコロを1回投げたとき、
観測された試行の結果に対応する標本点
和事象・積事象・余事象
「標本空間」の定義からわかるように。標本空問は何を目的として確率試行を実施するのかによって異なる事象を標本空間 \Omega の部分集合であると定義したので、事象Aと事象Bに対して
和事象 union of events とは、事象Aに含まれる要素と事象Bに含まれる要素をすべてあわせたものを指し、
積事象 intersection of events、または、共通事象とは、事象Aと事象Bの両方に共通に含まれる要素をすべてあわせたものを指し、
差事象 difference of events とは、事象Aから事象Bに含まれる要素すべてを取り除いた後に残った事象Aの要素すべてからなるものを指し、
余事象 complement of events t とは、 Aが起こらない事象を指し、
標本空間
また、
排反
さらに、積事象
事象の演算規則
事象の演算として、次の定理が成り立つ。
【定理】
事象の演算規則
A,B,C を事象とするとき、次が成り立つ。
(1)交換法則 commutative property
参考文献
- 野田 一雄, 宮岡 悦良 著. 入門・演習数理統計. 共立出版, 1990, p.1-4
- 東京大学教養学部統計学教室 編. 基礎統計学 1 統計学入門. 東京大学出版会, 1991, p.67-75
- 黒木 学 著. 数理統計学:統計的推論の基礎. 共立出版, 2020, p.21-23
0 件のコメント:
コメントを投稿